広告

事故物件の告知について、国が指針を出しパブリックコメントを募集しているという記事を見かけました。税務とは直接関係ありませんが、少し内容を確認しておきたいと思います。

事故物件の告知には指針やルールがなかった

最初にお断りしておきますが、私自身、税理士とFPの資格は持っているものの、宅地建物取引士などの不動産取引に関する資格は持っておりません。

今回の記事は、あくまで素人に毛が生えた程度の知見を元に書いていますので、詳細について相談したい場合は、是非お近くの専門家にご相談ください。

…と前置きをした上で、なぜ税金に直接関係しない今回の内容を取り上げたか?

普段接するお客様の中には、いわゆる「不動産オーナー」と言われる方もいらっしゃいます。

そうした方が、同様のケースに遭遇した場合に、最低限の基礎知識として知っておきたい、ということで取り上げてみました。

たまたまネットで見かけた記事がキッカケなのですが、その記事を読んで驚いたのは、

「事故物件については告知の必要はあるものの、明確なルールはない」

と書かれていた点です。

現状では明確なルールがないので、指針となるようなガイドライン案を国土交通省が作成し、パブリックコメントを募集している、という内容でした。

※ちなみにパブリックコメント募集は令和3年6月18日(金)までのため、本記事執筆時点でも募集中です。

この内容に関する報道発表資料が、以下のもので、ガイドライン案の正式名称は

「宅地建物取引業者による人の死に関する心理的瑕疵の取扱いに関するガイドライン」
(案)

とされています。

001405224

ガイドライン案の主な内容

では、このガイドライン案の主なポイントについて確認しておきましょう。

どういった内容を、どの程度の期間告知する必要があるか、という観点でまとめております。

実際の取引時の告知内容や調査方法については省略しておりますので、そうした点にご興味のある方は、ガイドライン案をご参照ください。

広告

ガイドライン策定の背景・位置づけ

最初に課題として、不動産取引において人の死に関する事案をどこまで告知すべきかについては、買主・借主の内心にかかわる事項のため、取り扱う宅地建物取引業者によって対応が異なることが挙げられています。

こうした告知対応の負担を過大と感じるケースもあるとのことで、特に単身高齢者の入居が敬遠されるケースもあると指摘。

こうした状況を踏まえて、今回のガイドライン案が策定されたとのことですが、取引当事者が参考としてトラブル防止に役立つことを期待しつつも、あくまでガイドラインであり、ガイドライン通りの対応を行ったとしても、民事上の責任を回避できるものではない、とされています。

広告

ガイドラインの適用範囲

不動産において生じた人の死に関して取り扱うこととしていますが、不動産の範囲としては「住宅として用いられる不動産(居住用不動産)」を対象として、オフィス用などは対象から除外しています。

買主・借主に告知すべき事案

  • 原則として告知するケース
    1. 過去に他殺・自死・事故死(日常生活上の不慮の事故死を除く)があった場合
    2. 過去に原因が明らかでない死が生じた場合
    3. 自然死や日常生活上の不慮の事故死であっても、長期間放置されたことにより特殊な清掃等が行われた場合
  • 原則として告知が必要ないケース
    1. 老衰・持病による病死などの自然死、日常生活上の不慮の事故死(食事中の誤嚥など)が生じた場合

告知の範囲

  • 賃貸借契約の場合
    • 告知が必要な事案が発生している場合、発生から概ね3年間は借主に告知
  • 売買契約の場合
    • 調査等を通じて判明している範囲で、過去の事案すべてを買主に告知
広告

周辺知識としていろんなものに興味を持っておく

パブリックコメント募集中のガイドライン案について、ざっと確認してみましたが、こうした内容をみていると、「知らない世界がたくさんある」といつも感じます。

目を通してみて意外に感じる内容は特にありませんでしたが、こうした内容については、「まったく気にしない、平気」という方もいれば、「何年前であろうと、そうした物件は嫌だ」という方、どちらもいらっしゃると思いますので、なかなか判断が難しい問題かと。

だからこそ、一定の判断基準として今回のようなガイドラインを作成しようということになったのでしょう。

税理士という仕事をしていると、まったく想定していなかったことや、知識が全くない分野についても質問を受けることが多々あります。

そのすべてについて、完璧に答えることはできませんが、周辺知識としていろんなことに興味を持っておく、という姿勢は無くさないようにしたいと思っています。

もし今回の内容に関するような質問を受けたとして、何も知らなければ

「わかりません。よく知りません。」

で終わってしまいますが、ガイドライン案のことを知っていれば、

「国からこの件についてのガイドライン案が出ていましたので、そのことについて不動産管理会社の方と話してみてはいかがでしょうか」

とお伝えすることができます。

その回答だけで、質問する方の疑問や不安が完全に解消するかはわかりませんが、少なくとも行動するためのキッカケ・知識があれば、気持ちもだいぶ変ってくるのではないでしょうか。

いろんなことに首を突っ込むというのは、時間もかかりますのでラクではありませんが、そういうスタンスは維持しておきたいものです。

投稿者

加藤 博己
加藤 博己加藤博己税理士事務所 所長
大学卒業後、大手上場企業に入社し約19年間経理業務および経営管理業務を幅広く担当。
31歳のとき英国子会社に出向。その後チェコ・日本国内での勤務を経て、38歳のときスロバキア子会社に取締役として出向。30代のうち7年間を欧州で勤務。

40歳のときに会社を退職。その後3年で税理士資格を取得。

中小企業の経営者と数多く接する中で、業務効率化の支援だけではなく、経営者を総合的にサポートするコンサルティング能力の必要性を痛感し、「コンサル型税理士」(経営支援責任者)のスキルを習得。

現在はこのスキルを活かして、売上アップ支援から個人的な悩みの相談まで、幅広く経営者のお困りごとの解決に尽力中。

さらに、商工会議所での講師やWeb媒体を中心とした執筆活動など、税理士業務以外でも幅広く活動を行っている。
広告