税金の電子申告と比べると、電子納税は進んでいないと言われています。電子納税が進んでいない理由について考えてみたいと思います。

税金の電子納税が進まない理由とは?

先日税務雑誌を読んでいると、キャッシュレス納付について日本銀行の担当者の方へのインタビューが掲載されていました。

税金や国民年金保険料などの「国庫金」の支払方法については、

  1. 現金納付
    • 窓口納付(金融機関や税務署の窓口で納付)
    • コンビニ納付(30万円まで)
  2. キャッシュレス納付
    • 口座振替
    • クレジットカード納付
    • 電子納付(ダイレクト納付・インターネットバンキング・ATM)

に分類されるとのことですが、国税(国に納める税金)については、いまだに現金納付が非常に多いと。

国税申告のうち電子申告は約7割に対して、キャッシュレス納付は約3割にとどまるということで、

“申告は税理士、納付は企業”という、申告と納付で事務の担い手が異なるという税務実務の構造が背景にある

週刊税務通信No.3663 「日本銀行のキャッシュレス納付の普及に向けた取組」より引用

と分析されています。

納付書への転記が不要で転記ミスもなくなる、金融機関の窓口に行かなくていい、コロナ禍で非対面手続きへの関心が高まっている等、キャッシュレス決済のメリットを挙げつつ、金融機関・国税庁・税理士会等々と協力しながら、今後も取組を推進していく、といった趣旨の記事となっています。

国税の電子納付がすすまない理由としては、申告と納付作業が分断されていて、納付作業を行う企業側がe-Taxの操作に慣れていない、という点は確かにあると思います。

ただ「そもそも電子納付の手続きをe-Taxの中でやろうとすることに問題があるんじゃないの?」と読みながら感じたのも事実です。

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税理士が勧めないから電子納税は普及しない?

こうした流れを受けて、税務署の方から「ぜひ電子納税を推進してください」といったお願いが今まで以上にされるんだろうな、と思いつつも、税理士が勧めれば電子納税導入できるというほど単純な問題なんだろうかと。

電子納付をするのにe-Taxの仕組みを使わないといけない点が、ネックになっているのではないでしょうか。

源泉所得税の納付を毎月行っているなど、e-Taxを使うことに慣れているケースであればe-Taxを使うことに特に問題はないと思います。

その一方で、電子納税の割合を上げようとすれば、対象となる中小企業では、国税でいえば、法人税・消費税の確定申告と中間納税と年4回程度の納付しかないケースが多いのでないでしょうか。

年4回(しかも2回ずつほぼタイミング同じ)程度の作業だと、企業側でそのために使い方を覚えようとするメリットが見当たりません。

ムリに推進すると、納付作業時に「IDとパスワードがわからん」という質問が税理士に飛んで来るところから始めないといけないのではないかと。

頻繁に行わない作業というのは、想像以上にストレスを感じるものです。

とはいえ、個人的には電子納税は推進すべきだと考えています。

考えてはいますが、現状のままe-Taxの仕組みを使うというやり方では、ムリがあるのではないかと。

申告書を送信した後の電子納付の手続きとしては、ダイレクト納付のケースであれば、

  1. e-TaxにID(利用者識別番号)とパスワードでログインする
  2. メッセージボックスを確認して納付情報に関するものを探す
  3. 該当するメッセージを開く
  4. ダイレクト納付の指示を行う

という手順が必要です。

仕組みを提供する側からすれば「たったこれだけの作業dで納付できるんですよ」という感覚だと思いますが、納付する側からすれば、「ログインしたり、メッセージ選んだりするの面倒くさい」という感覚でしょう。

例えばですが、ダイレクト納付申請済みの場合、こんな風にすればラクになるのではないでしょうか。

  1. 税理士が申告書を電子申告で送信
  2. 申告書受付後、企業の登録済みメールアドレスに支払用リンクが記載されたメールが自動的に送信される
  3. リンクをクリック(ID・パスワード入力不要)したら、会社名・税目・納税額等が表示
  4. 納付日を入力して承認して納税完了

このやり方の場合、「ID・パスワードなしだとメールが漏えいしたときに問題になる」という意見もあるかもしれませんが、この場合の問題は

  1. 誤って他社の税金を納付してしまう
  2. 納税に関する情報が漏れてしまう

の2点でしょう。

ただ、aの可能性は限りなく低いはず。わざわざ他社の税金を払おうとするケースはまず考えられません。

bが問題だとするのであれば、リンクをクリックしたときにパスワードの入力だけ求めるという方法にすればよいわけです(利用者識別番号は入力不要とする)。

こうした仕組みであれば、企業の担当者もわざわざe-Taxの使い方を覚える必要もなく、年に数回の処理であってもストレスなく対応できるのではないでしょうか。

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普及する仕組みは概して「使いやすい」もの

ここまでご説明した方法は、あくまでひとつの考え方に過ぎませんが、使う際にストレスを感じるような仕組みは、容易には普及しません。

別の例になりますが、電子マネーなどにしても、カードをかざすだけ、スマホのアプリでバーコードを表示させるだけ、といったカンタンな操作で使うことができなければ、ここまで普及することはなかったでしょう。

世の中に普及する仕組みは、多くの場合「使いやすい」というメリットがあります。

税金の電子納付については、「金融機関にわざわざ行くことを考えれば」という条件付きで、今よりもラクになりますよ、という考え方になっています。

そのため、いざ使ってみたときに「こんなにカンタンに処理できるんだ」という感動がありません。

電子納税については、国税と地方税で仕組みが違うなど、他にもいろいろと課題はありますが、「使いやすさ」という視点をもっと取り入れていかないと、急速に普及することは無いのではないかということで、記事を読んで感じたことをまとめてみました。

投稿者

加藤 博己
加藤 博己加藤博己税理士事務所 所長
大学卒業後、大手上場企業に入社し約19年間経理業務および経営管理業務を幅広く担当。
31歳のとき英国子会社に出向。その後チェコ・日本国内での勤務を経て、38歳のときスロバキア子会社に取締役として出向。30代のうち7年間を欧州で勤務。

40歳のときに会社を退職。その後3年で税理士資格を取得。

中小企業の経営者と数多く接する中で、業務効率化の支援だけではなく、経営者を総合的にサポートするコンサルティング能力の必要性を痛感し、「コンサル型税理士」(経営支援責任者)のスキルを習得。

現在はこのスキルを活かして、売上アップ支援から個人的な悩みの相談まで、幅広く経営者のお困りごとの解決に尽力中。

さらに、商工会議所での講師やWeb媒体を中心とした執筆活動など、税理士業務以外でも幅広く活動を行っている。
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