弥生が来年から提供を予定しているクラウド会計ソフトである弥生会計NEXTを試してみました。気になる点などについて確認しておきます。
目次
弥生NEXTとは
弥生会計といえば、オンラインで使うサービスもありますが、メインはデスクトップで使うインストール型という印象が強いものです。
そうした中で、クラウドでの利用を前提としたサービスを「弥生NEXT」というブランド名で推進しようとしています。
実際には単なるクラウド化ではなく、インストール型の製品よりも機能を拡充しようという部分もあるようですが、ユーザーにとって最も大きな変更点はやはりデスクトップの弥生会計に近い機能をクラウドで使えるという点でしょう。
現在、正式なサービスとして提供されているのは、給与計算のための「弥生給与NEXT」のみですが、会計用の「弥生会計NEXT」についても2025年春以降にリリースが予定されています。
弥生会計NEXTについては、現在先行体験ユーザーが募集されていて、登録すれば試用することができます。
というわけで、現状でどの程度使えるのか試してみましたので、その感想などをまとめておきます。
弥生会計NEXTで気になった点
サービス利用の流れとしては、ログインすると、いきなり口座を連携するよう求められます。
連携しないとメリットがないので理解はできるのですが、連携なしでは設定画面などが使えない仕様になっていた(気がする)点は、不慣れな人にとっては逆に不親切かもしれません。
「画面を開いたけれど何をしたらいいのかわからない」というユーザーも多いかもしれませんが、開いた途端に口座連携しないと次に進まないって、面食らわないかなと。
初期セットアップ(明細連携→明細の処理→消費税の設定→期首残高の設定 という流れ)が表示されているのは親切だと思います。
連携した銀行口座などは、「明細ボックス」というメニューにまとめられます。
使っていて気になったのは、主なものとして次のような点です。
- 自動仕訳ルールが登録できない
- 取り込んだ銀行明細などを登録する際に、日付の古い順に並べられない
- 仕訳をインポートする機能がない(銀行明細等のCSVファイルはアップロード可能)
- 仕訳帳や試算表のCSVエクスポートができない(試算表はPDF出力のみ可能)
- 消費税集計表が科目別しか集計できない(税区分ごとの集計ができない)
自動仕訳ルールを登録できない
1については、弥生会計はデスクトップ版のスマート取引取り込みの時もそうなのですが、仕訳ルールを登録してまとめて処理するという機能に力を入れていません。
処理した内容を自動的に学習して、学習内容から科目等を推測するというスタンスです。
もちろんこうした考え方を否定するつもりはないのですが、期中でデータを大量に連携した場合などは、仕訳ルールを登録してまとめて処理したいケースが多いものです。
こうしたケースであっても、ひとつずつ仕訳の登録ボタンを押す必要があるため、大量のデータをまとめて処理したい場合、とても手間がかかります。
明細の並べ替えができない
2については好みがあるかもわかりませんが、私は登録する際には古いものから順に登録したいんです。
ところが、銀行明細などの仕訳への登録画面で取引日での並べ替えができません。そのため新しいものからしか登録できないようになっています。
仕訳のインポート機能がない
3については、仕訳データを会計ソフトの外でつくって、まとめてインポートする機能がありません。
そのため、他の会計ソフトから移行したい場合にも、データを移行させることができません。
会計ソフトの移行でなくても、処理によっては仕訳データをインポートした方が早いケースもありますので、この機能がないのは会計ソフトとしてはかなり厳しいのではないでしょうか。
CSVファイルのエクスポート機能がない
4については、試算表をPDFファイルに出力することはできますが、仕訳帳や総勘定元帳についてはPDFへの出力機能すらありません。
電子帳簿保存を前提としているのかもしれませんが、仕訳データや試算表を加工して報告資料をつくっている税理士事務所も多いのではないでしょうか。
データを何も出力できないというのはかなり厳しいです。
消費税集計表の税率ごとの集計ができない
5については、弥生会計には税金計算の機能は(消費税を除いて)ないため、達人というソフトとの連携を前提にしています。
弥生会計NEXTにも「達人連携」というメニューがあり、会計データを達人と連携できるようです(達人使ってないので、詳細は確認できてません・・・)。
それ故かどうかはわかりませんが、消費税の集計表について勘定科目別に集計されたものしか出力できません。
達人以外の税務ソフトで申告書を作成しようとすると、どうしても税区分ごとの集計表は必要です。
仮にないとしても、CSVファイルでの出力ができれば加工して作成するなどの対応は考えられますが、当然エクスポート機能は現時点ではありません。
他にも試算表の画面で前期比較ができないなど、いろいろ気になる点はありますが、主にこうした点が気になりました。
まあいろいろ書きましたが、どんなサービスであれリリース当初は不平・不満がたくさん出てくるものです。
弥生会計NEXTについてもご多分に漏れず・・・という感じではありますが、よかった点として
「クラウドなのに思っていたよりも動作が軽快」
があります。
これはまだデータを大量に登録していない、機能の実装が少ない、といったことが影響している可能性もありますが、クラウドサービス特有の待たされる感覚はほぼありません。
この点はひとつの強みかと思いますので、このまま進めてくれるとうれしいのですが、機能が増えるにつれて厳しくなるかもしれません・・・。
サービス提供開始までの改善に期待
現状の機能だけだと、会社を設立して期首から使い始めるといったケースでないとなかなか使いづらいと感じます。
まだサービスとして正式に提供されているものではありませんので、これから改善が進むとは思います。
デスクトップ版の弥生会計にもスマート取引取り込みという銀行データなどを連携する機能はありますが、インストールソフトとネットをムリヤリ連携しているため、どうしても使いにくい部分があります。
こうした使いにくさを解消するにはクラウド化していくしかないと思いますので、今後弥生会計NEXTに順調に機能が追加・改善されることを期待します。
なお、先行体験プログラムのため、今回の記事では画面のスクショなどの貼り付けは控えています。
ご興味のある方は先行体験プログラムに登録して、ぜひご自身で試していただければと思います。
投稿者
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大学卒業後、大手上場企業に入社し約19年間経理業務および経営管理業務を幅広く担当。
31歳のとき英国子会社に出向。その後チェコ・日本国内での勤務を経て、38歳のときスロバキア子会社に取締役として出向。30代のうち7年間を欧州で勤務。
40歳のときに会社を退職。その後3年で税理士資格を取得。
中小企業の経営者と数多く接する中で、業務効率化の支援だけではなく、経営者を総合的にサポートするコンサルティング能力の必要性を痛感し、「コンサル型税理士」(経営支援責任者)のスキルを習得。
現在はこのスキルを活かして、売上アップ支援から個人的な悩みの相談まで、幅広く経営者のお困りごとの解決に尽力中。
さらに、商工会議所での講師やWeb媒体を中心とした執筆活動など、税理士業務以外でも幅広く活動を行っている。
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