ここ2~3年で為替レートは大きく円安方向に振れています。そうなると外貨預金を持っていた方の中には為替差益が生じている方も多いのではないでしょうか。今回は為替差益の扱いについて確認をします。
目次
外貨預金から生じる利益
2011年頃までは米ドル円の為替レートは110円前後で推移していましたが、いまや155から160円くらいになっています。
外貨預金の方が日本円の預金よりも利息が付くということで、利用されている方もそれなりにいるのではないでしょうか。
仮に為替レートが110円のときに110万円(1万米ドル)を米ドル預金にして、昨年為替レートが150円の時に米ドル預金を円に換えたとしたら
1万米ドル×150円(=150万円)-110万円=40万円
の為替差益が生じることになります。
実際にこれくらいの利益であれば、生じている方もいるかもしれません。
110万円の預金が150万円に増えたわけですから、為替レートの影響は思った以上に大きいものです。
為替差益の確定申告における取り扱い
個人としてこうした「為替差益」を得た場合には、所得税の「雑所得」になるとされています。
残念ながらといいますか、こうした利益については所得税がかかるわけです。
ただし
- 給与を1か所から受けている
- その給与の全部が源泉徴収の対象(月々源泉徴収されている)
- 給料や退職金以外の所得金額(要するに利益)の合計額が20万円以下
の場合には、所得税の確定申告をしなくてもよいというルールがあります。
そのためサラリーマンの方で給料以外の利益が「為替差益」のみ、さらに為替差益が20万円以下であれば、所得税の確定申告をしなくてもいいということになります。
ただし、所得税の確定申告は不要でも、住民税では申告しなくていいというルールはないので、住民税の申告は行う必要がある点には注意が必要です。
とはいえ、仮に110円で預けて150円で円に戻したとなると、元本55万円で為替差益20万円となりギリギリセーフというライン。
確定申告が必要な為替差益がでていう人も意外と多いのではという気がします。
「どうせバレないから大丈夫でしょ」と思う方がいるかもしれませんが、これだけ為替が大きく動きましたので、税務署側も「為替差益が出てる人は多いだろう」と考えて対応する可能性は十分あります。
高を括っていたら
「為替差益でていませんか?」
なんてお手紙が来て、慌てて対応するといったことはないようにしましょう。
なお給与をもらっている方については、条件を満たせば申告しなくてもいいというルールがありますが、個人事業者にはこうしたルールはありません。
そのため、為替差益が少額であっても確定申告に含める必要がありますのでご注意ください。
為替差益にまつわるその他の注意点
ここまでは、外貨預金に預入をして、その預金を円に戻すケースを取り上げました。
こうしたシンプルなケースであれば悩むことはないのですが、為替差益を認識すべきかどうか悩ましいケースというのは意外に多いものです。
この点について、国税庁のホームページに掲載されている質疑応答事例をいくつか確認しておきましょう。
外貨のまま他の銀行に外貨預金をした場合
A銀行に預けていた米ドル預金を米ドルのままB銀行に預け入れた場合に、為替差益を認識する必要があるかどうか。
この点については
という質疑応答事例の中で、為替差益を認識しなくていい(=所得税の確定申告に含めなくていい)とされています。
米ドル預金から米ドル預金に変わっただけなので、この点は特に悩む必要はないかと思います。
米ドルを引き出してユーロに換えた
米ドルで預けていた預金をユーロに換えた場合はどうでしょうか?
保有する外国通貨を他の外国通貨に交換した場合の為替差損益の取扱い
において、為替差益を認識する必要があるとされています。
「同じ外貨なのに・・・」と思うかもしれませんが、異なる通貨なのでこれはやむを得ないかなという気はします。
米ドル預金から外貨建MMF(米ドル建)を購入した場合
米ドル預金内のドルを使って、同じ通貨の外貨建てMMFを購入した場合については
預け入れていた外貨建預貯金を払い出して外貨建MMFに投資した場合の為替差損益の取扱い
において、為替差益を認識する必要があるとされています。
一般的な感覚からすると「同じ通貨なのになんで?!」となりそうですが、ザックリ言ってしまうと、資産の種類が違うので為替レートを一旦確定させてね、という感じでしょうか。
米ドル預金から米ドルを引き出して米ドル建ての建物を購入
米ドル預金内のお金を使って、米ドルで売りに出されている建物を購入した場合はどうでしょうか。
預け入れていた外貨建預貯金を払い出して貸付用の建物を購入した場合の為替差損益の取扱い
において為替差益を認識する必要があるとされています。
先ほどの外貨MMFを購入した際の結論からすると、まあそうなるかなという感じですね。
外貨ではありませんが、暗号資産を支払手段として使用してモノを買ったときには、暗号資産の利益を認識する必要があります。
一旦暗号資産を売却して現金に換えて、その現金でモノを買ったという考え方ですが、同じようにイメージすると、上記の事例も理解しやすいかもしれません。
このように預金だけならシンプルですが、他の資産に投資などすると結構煩雑になります。
該当する方は、確定申告に含めるのを漏らさないようご注意ください。
投稿者
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大学卒業後、大手上場企業に入社し約19年間経理業務および経営管理業務を幅広く担当。
31歳のとき英国子会社に出向。その後チェコ・日本国内での勤務を経て、38歳のときスロバキア子会社に取締役として出向。30代のうち7年間を欧州で勤務。
40歳のときに会社を退職。その後3年で税理士資格を取得。
中小企業の経営者と数多く接する中で、業務効率化の支援だけではなく、経営者を総合的にサポートするコンサルティング能力の必要性を痛感し、「コンサル型税理士」(経営支援責任者)のスキルを習得。
現在はこのスキルを活かして、売上アップ支援から個人的な悩みの相談まで、幅広く経営者のお困りごとの解決に尽力中。
さらに、商工会議所での講師やWeb媒体を中心とした執筆活動など、税理士業務以外でも幅広く活動を行っている。
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