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夏の参議院選も日曜日に終わりましたが、その中で争点の一つとなっていた消費税について少し考えてみたいと思います。
とはいいましても、すべての政党が税率アップ延期もしくは中止といっているなかで税率アップについて書いても仕方ありませんので、税率アップの是非はさておき軽減税率導入の際にその理由として挙げられた「痛税感」について考えてみます。

1.そもそも消費税の表示方法はどうなっている?

「痛税感」について私の意見を述べる前に、まず現状の消費税の表示方法について整理したいと思います。

現在の消費税法では原則として、消費税を納める義務のある事業者が消費者にモノを販売したりサービスを提供する際には税込価格を表示しなければならないことになっています。
(ただし、事業者間の取引については税抜価格でも構わないことになっています。)

ところが、消費税率が8%に引き上げられる際に、その後の10%への引き上げも予定されていたため特に小売事業者等における値札の張り替えやレジ対応の負担を考慮して税込価格を表示しなくてもよいとする特例が設けられました。
(但し、表示価格が税込価格であると誤認されないための措置を講じていることが前提条件です。)

この特例は平成25年10月1日から平成30年9月30日までの時限措置ですが、今回消費税率10%への引き上げが(再)延期されたことにより、この措置も延長されるかもしれませんがまだ明確にはなっていません。

要するに、現時点では事業者は原則は税込価格を表示しなければならないのですが、特例として税抜価格表示が認められているという状況です。
(一応、できるだけ速やかに税込価格を表示するよう努力義務は法律上記載されていますが、罰則もありませんので・・・)

2.どんなときに「痛税感」を感じるか?

皆さんの身の回りのお店を見回したとき、現在は税抜価格で表示しているお店が結構多いのではないでしょうか?
逆に税込価格で表示しているとそれを「売り」にしているところもあります。

これはあくまで個人的な意見ですが、私が「痛税感」を感じるのは税抜価格の商品をレジに持って行ってレジで支払金額が税込価格に変わったときです。
特に「税抜価格」という表示を見落としてレジで支払い金額が想定していた金額より増えたときは結構ショックですね(笑)
(980円のモノを買おうとして千円札1枚で足りると思っていたら足りなかったとか・・・)

最初から税込価格で表示されていれば、その金額で高いか安いか判断しますからあまり「痛税感」という感覚は無いのではないでしょうか?
もちろん内税で表示されている消費税額を見て、「これがなければもっと安いのに」というのはあるかもしれませんが。

皆さんのご意見は分かりませんが、個人的には税抜表示好きではありません。
支払金額をちゃんと表示して欲しい、といつも思います。

3.軽減税率の話に戻りますと・・・

軽減税率の導入の際に「痛税感」の緩和のためという説明が良くされていましたが、「痛税感」を緩和したいのであれば税込価格を表示するという原則に戻ればよいのではと言うのが個人的な意見です。

もちろん税理士事務所のお客様には税込表示が義務づけられれば多大な影響を受ける事業者の方もいらっしゃいますので、事業者の負担とのバランスは考えていかないといけないのですが、「痛税感」を理由に軽減税率を導入するというのであれば別のやり方があるのではないかということです。
(食品を取り扱う小売業の方にとっては税込価格の変更表示の手間は数年で終わりますが、軽減税率の管理は将来に亘って続いていくことになります。)

結局のところ税抜表示を認めつづけていることが痛税感をより大きくしているのではないかと、個人的には考えています。
税金に関することは利害関係者が多くなりますので、最適点を見つけるのが難しいですが、やはり丁寧な議論・検討が不可欠となります。

なお、上記内容はあくまで私の個人的な見解であることを申し添えておきます。

 

投稿者

加藤 博己
加藤 博己加藤博己税理士事務所 所長
大学卒業後、大手上場企業に入社し約19年間経理業務および経営管理業務を幅広く担当。
31歳のとき英国子会社に出向。その後チェコ・日本国内での勤務を経て、38歳のときスロバキア子会社に取締役として出向。30代のうち7年間を欧州で勤務。

40歳のときに会社を退職。その後3年で税理士資格を取得。

中小企業の経営者と数多く接する中で、業務効率化の支援だけではなく、経営者を総合的にサポートするコンサルティング能力の必要性を痛感し、「コンサル型税理士」(経営支援責任者)のスキルを習得。

現在はこのスキルを活かして、売上アップ支援から個人的な悩みの相談まで、幅広く経営者のお困りごとの解決に尽力中。

さらに、商工会議所での講師やWeb媒体を中心とした執筆活動など、税理士業務以外でも幅広く活動を行っている。
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