2023年6月に電子帳簿保存法一問一答の改訂がありました。電子取引に関する内容について確認をしておきましょう。
目次
電子帳簿保存法の令和5年度改正で気になる点は?
令和5年度の改正では電子帳簿保存法についても変更がありました。
電子取引に関しては
- 宥恕措置が猶予措置に変わる
- 検索要件が不要となる対象事業者が拡大
が主な変更点です。
これに関連して
- 猶予措置が認められる「相当の理由」とは具体的にどんな内容なのか
- 事業規模にかかわらず電子取引データを印刷して保存しておけば検索要件が不要となる際の「取引年月日その他の日付及び取引先ごとに整理された状態で提示・提出することができるようにしている」とは具体的にどのような状態か
という点が疑問点として挙げられています。
で、ここまで書いておいてなんですが、今回は敢えてこの2点以外の内容について確認をします(この2点については別途取り上げたいと思います)。
実際のところ2023年6月に改訂された一問一答を読んでみて、これら以外にも注意しておきたい点がありましたので、今回はそちらに焦点を当てます。
一問一答の改訂内容を確認
改正の適用は2024年1月から(問12)
今回の改正内容は2024年1月1日から適用されます。
個人事業者や12月決算以外の会社の場合は、期の途中であっても2024年1月1日から新ルールが適用されることが念押しされています。
要するに期の途中でルールが変わるので気をつけてね、ということです。
事務処理規程の取扱い(問15)
電子取引を保存する際の要件が一覧表にまとめられていますが、事務処理規程に関する箇所が
四 訂正削除の防止に関する事務処理規程を策定、運用、備付け
と変更されています(赤字部分が変更箇所)。
法律自体は
四 当該電磁的記録の記録事項について正当な理由がない訂正及び削除の防止に関する事務処理の規程を定め、当該規程に沿った運用を行い、当該電磁的記録の保存に併せて当該規程の備付けを行うこと。(規4①)
となっていますので変更はありません(太字は筆者)。
恐らく
「事務処理規程を備付け」
とだけ書いてあると、国税庁のホームページからダウンロードしたサンプルをそのまま保存するだけのケースが出てくることを心配したのではないかと推測しています。
サンプルはあくまでサンプルなので、自社にあった形に書き換えて決めたルール通りに運用することが条件だよ、ということですね。
保存システム変更時の検索機能確保(問21)
電子取引データの保存については、どこかで保存するシステムを変更せざるを得ないこともあるでしょう。
その際の対応について問21において
変更前のシステムを用いること等により検索機能が確保されているのであれば、現在使用しているシステムにより検索ができなくても差し支えありません。
と赤字部分が追記されています。
取扱いが変わったわけではありませんが、旧システムに保存したデータは旧システムで検索できることが必要と明記されました。
保存システムを変更した際に、旧データを新システムに移行できるかどうかはケースごとに異なると考えています。
タイプスタンプや訂正削除の履歴まで移行することは難しいと思われますので、移行できないケースが多いのではないでしょうか。
そうなると保存するシステムを変更した際には、新旧2つのシステムを並行して運用する必要が出てきますので、保存システムの選定は慎重に行うべきでしょう。
検索要件の一部をフォルダ名で肩代わり(問44)
検索要件を満たす方法として、ファイル名に「取引日・取引金額・取引先」を記載する方法があります。
これに関連して
また、ファイル名の入力により検索要件を満たそうとする場合については、「取引先」ごとにフォルダを区分して保存しており、その区分したフォルダに保存している取引データのファイル名を「取引年月日その他の日付」及び「取引金額」を入力して管理しておくことでも、取引年月日その他の日付、取引金額及び取引先を検索の条件として設定することができるときは、検索機能の要件を満たすこととなります。
という内容が追記されています(太字は筆者)。
具体的には
20240101_A株式会社_100000.pdf
というファイル名で保存するケースについて、このファイルを「A社」というフォルダを作って保存するのであれば、ファイル名は
20240101_100000.pdf
でいいよ、ということです。
ただ、ファイル名の変更はどう考えても手間がかかる作業なので、個人的にはオススメしません。
またWindows内にフォルダを作って保存した場合、範囲指定検索ができないためダウンロードの要請に応じる必要がある点には注意が必要です(詳細は以下の記事を参照ください)。
複数の取引日付のあるデータを受領した場合の検索要件(問49)
1ヶ月分の納品書データをまとめて受け取るようなケースだと、個々の取引日や取引金額を検索できるようにしておくべきかという悩みがあります。
これについては問49で
- 個々の取引ごとの取引年月日及び取引金額として記録されているものをそれぞれ用いる方法
- その電子取引データを授受した時点でその発行又は受領の年月日として記録されている年月日及びその電子取引データに記録された取引金額の合計額を用いる方法
のどちらでもよいとされています。
ただし、年度においてどちらの方法で検索できるようにするかきちんとルール化しておく必要があります。
一般的にはまとめてデータを受け取るのであれば、発行(受領)日と取引金額の合計額で検索できるようにすることになるのではないでしょうか。
ポイントは「データの保存」をどうするか
2023年6月に改訂された電子帳簿保存法一問一答(電子取引関係)の中から気になる点をピックアップして確認しました。
融通が利くようになった部分と書き方が厳しくなった部分の両方ありますが、全般的に実務に配慮するような内容で意外と感じる点は特にありませんでした。
2024年1月以降の電子取引への対応ポイントは
「まずはデータをきちんと残しておく」
という点です。
この点の対応ができているかきちんと確認しておきましょう。
投稿者
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大学卒業後、大手上場企業に入社し約19年間経理業務および経営管理業務を幅広く担当。
31歳のとき英国子会社に出向。その後チェコ・日本国内での勤務を経て、38歳のときスロバキア子会社に取締役として出向。30代のうち7年間を欧州で勤務。
40歳のときに会社を退職。その後3年で税理士資格を取得。
中小企業の経営者と数多く接する中で、業務効率化の支援だけではなく、経営者を総合的にサポートするコンサルティング能力の必要性を痛感し、「コンサル型税理士」(経営支援責任者)のスキルを習得。
現在はこのスキルを活かして、売上アップ支援から個人的な悩みの相談まで、幅広く経営者のお困りごとの解決に尽力中。
さらに、商工会議所での講師やWeb媒体を中心とした執筆活動など、税理士業務以外でも幅広く活動を行っている。
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