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前々回のブログで無料で使える電子取引データ保存サービスを取り上げましたが、今回は実際の使い勝手などについてまとめておきます。

電子取引データの保存に使えそうなサービス

前々回の記事にて、小規模事業者が無料で使えそうな電子取引データ保存サービスを取り上げました。

簡単に内容をおさらいすると

  • 今年1月から、電子取引に関するデータは紙ではなくデータのまま保存が必要
  • ただし今年と来年については税務署はあまり厳しいことは言わない
  • 2024年(令和6年)からはデータでの保存が必要なので、保存方法を検討しておく必要がある
  • 保存には検索要件など面倒な条件があるので、低コストで使えそうなサービスを探してみてはどうか

といった内容でした。

このときは、記事が長くなりすぎるため取り上げた各サービスに対する使い勝手などにはふれませんでした。

今回は自分で試してみた上で気になった点やよかった点などまとめておこうと思います。

各サービスごとの特色と個人的感想

前回取り上げたのが

  1. BillOneスモールビジネスプラン
  2. バクラク電子帳簿保存(旧:LayerX電子帳簿保存)
  3. マネーフォワードクラウドBox

の3つ。

各サービスを1ヶ月ほど試してみた上での、個人的な感想をまとめていきます。

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BillOneスモールビジネスプラン

このサービスの特色と感想をまとめると

  • 複数の請求書をまとめてアップロードすることはできないので、登録量が多いときは面倒
  • 請求書などのデータをアップロードすれば、取引先・取引金額についてはデータ化してくれる点は便利(100件/月の上限まではデータ化の制限はなさそうです)
  • ただし書類のタイトルが「料金明細」「支払明細」などの場合、「対象外」と判断されてデータ化されないケースあり
  • 取引日付の項目がそもそも存在しないため、登録欄・登録方法については検討が必要
  • タイムスタンプを使わない点をどう判断するか

といったところです。

このサービスはもともと

「紙の請求書の送付先を指定した住所に変更すれば、請求書をデータ化してくれる」

というものです。

自分でアップロードするというのは例外的な方法と位置づけられていると思われますので、メールの送付先を変更してアップロードの手間を無くすという使い方が最も真価を発揮するはず。

請求書発行日または取引日の欄がデフォルトで設定されて、これも自動でデータ化してくれるとかなり使い勝手がよくなるかと。

あとタイムスタンプを使わない点ですが、国税庁として

「タイムスタンプ使わずに訂正削除履歴で対応するシステム使う場合、メールやウェブ等から人手を介さずに連携する必要がある」

との見解を持っている、という情報を何度か耳にする機会がありました。

「本当にそんなことまで実際に指摘するのか?」という疑問は大いに残りますが、タイムスタンプを付与する方式と比べたときに、訂正削除の履歴を残す方式に対して厳しい見方をされる可能性がある、という点はご注意いただければと。

全体的な印象としては、電子取引データをメールなどで受取ることが多い場合に力を発揮するサービスといえるでしょう。

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バクラク電子帳簿保存(旧:LayerX電子帳簿保存)

こちらのサービスの特色と感想は

  • 複数の請求書をまとめてアップロードすることができる点は便利(ただし複数のデータを1グループとしてまとめて登録することはできない)
  • AI-OCRによる読み取りは精度が高く、日付・金額・相手先・書類の種別・電子取引区分など自動判別してくれる(ただし無料プランでは最初の5件/月にのみ適用)
  • アップロード後に内容を確認し「入力済みにする」という処理をしないとタイムスタンプが付与されない
  • 登録項目として「書類種別」(請求書・見積書・領収書など)と「区分」(電子取引・スキャナ保存)があるのは、あとで検索する際に便利
  • 取引先検索時に、入力した文字に応じて取引先が絞られていくのは便利

といったところです。

最初使ってみたときの感想は「AI-OCRってこんなに精度高いんだ!」でした。

また保存の際に、請求書や見積書などの書類に関する情報があれば便利と考えていましたので、「書類種別」情報があるのは個人的には好感が持てます。

バクラク電子帳簿保存 データ登録画面より抜粋

※書類種別を考慮してフォルダ構造を検討するという点については、以前以下の記事にてふれました。

もしスキャナ保存も同時に行う場合、あとで

「この書類、電子取引かスキャナ保存どっちだったか知りたい」

というケースも考えられますので、「区分」欄が設けられていることも便利ではないかと。

  • あとでデータを探すのが楽そう
  • 有料ではあるものの、AI-OCRを活用すれば入力の手間はかなり減りそう

ということで小規模事業者にとっては使いやすそうです。

マネーフォワードクラウドBox

このサービスに関しては、

  • 他の2つのサービスと異なりスキャナ保存は未対応
  • Boxからアップロードすると、取引日・取引先・取引金額を自分で入力する必要があり不便
  • マネーフォワードクラウド請求書でメール送信した請求書などは自動的に保存される
  • マネーフォワード会計の仕訳登録画面からデータを登録することが可能(この場合、仕訳情報を元に、取引日・取引先・取引金額が自動的に登録される)

といったところです。

正直なところ、やはり有料サービスと一緒に使ってこそ効果を発揮しますので、マネーフォワード会計などを使っていない場合は、あまりオススメしません。

逆に言えば、マネーフォワードのサービスを既に利用されているのであれば、最初に検討すべきサービスとなります。

会計に関連するデータは自身で仕訳登録する際に仕訳と紐つけて保存し、仕訳と直接紐つかないデータのみマネーフォワードクラウドBoxに直接アップロードするという運用が現実的ではないかと。

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調査対応を考えると会計ソフトと連携している方が便利

小規模事業者が無料で使える電子取引データ保存サービスについて、使ってみた上での感想をまとめてみました。

実際にどれを選ぶべきかという点については、税務調査の場面を考えると

調査官が元帳をチェック → 気になる取引について請求書等の提示を依頼

という流れになります。

電子取引データの保存については「検索要件」が求められていますが、こうした場面で実際に電子取引データを探す場合には

仕訳データを検索して、そこに添付されている電子取引データを提示する

という方法が一番ラクではないでしょうか。

このように考えると、既に電子帳簿保存法のデータ保存に対応した会計ソフトを利用されているのであれば、そのサービスを利用することをまずは検討すべきでしょう。

現在利用中の会計ソフトに電子取引データ保存の機能がない場合には、今回ご紹介したBillOneやバクラク電子帳簿保存といったサービスを検討すればよいわけです。

(もちろん今回の対応を機に、会計ソフトを見直すという選択肢もあります)

今回ご紹介したようなクラウドサービスは日々進化していきます。

私が試してみた時点では「できない」となっていることも、いつの間にかできるようになっているということがよくあります。

採用を検討される際には、是非ご自身で試した上でご判断いただければと。

今回の記事、2024年に向けた電子取引データ保存を検討される際の参考となれば幸いです。

投稿者

加藤 博己
加藤 博己加藤博己税理士事務所 所長
大学卒業後、大手上場企業に入社し約19年間経理業務および経営管理業務を幅広く担当。
31歳のとき英国子会社に出向。その後チェコ・日本国内での勤務を経て、38歳のときスロバキア子会社に取締役として出向。30代のうち、7年間を欧州で勤務。

40歳のときに会社を退職。その後3年で税理士資格を取得。

中小企業の経営者と数多く接する中で、業務効率化の支援だけではなく、経営者を総合的にサポートするコンサルティング能力の必要性を痛感し、「コンサル型税理士」(経営支援責任者)のスキルを習得。

現在はこのスキルを活かして、売上アップ支援から個人的な悩みの相談まで、幅広く経営者のお困りごとの解決に尽力中。
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