広告

国税庁が「多く寄せられるご質問 (令和6年2月29日更新)」において銀行の振込手数料などに関するインボイスの新たな取扱いを公表しましたので、内容を確認しておきましょう。

振込手数料の原則的な取扱い

インボイス制度が始まって約5ヶ月が経過しました。

あまり気にしている人は多くないかもしれませんが、銀行の振込手数料についても仕入税額控除を受けるためにはインボイスが必要となります。

ただこれもそれほど単純な話ではなくて

  • 原則:インボイスの保存が必要
  • 金融機関のATMで振込み:自動販売機特例により帳簿だけでOK(インボイス不要)
  • ネットバンキングでの振込み:自動販売機特例の対象外のためインボイスが必要

となります。

ネットバンキングでの振込手数料については、

「画面にインボイスが表示されるので、データで保存」

みたいな話も当初ありましたが、私の知る限りでは銀行側が1ヶ月分の取引をまとめたハガキ(インボイス)を、希望する事業者に郵送で送るケースが多い気がします。

また2期前の売上が1億円以下などの要件を満たす事業者については、期間限定で「少額特例」といわれる制度を使えますので、この場合は税込1万円未満の取引についてはインボイス不要です。

少額特例を使える事業者であれば、振込手数料については当面インボイスはなくても消費税の計算上は困ることはありません。

振込手数料のインボイスは1回だけ保存すればいい?

「たかが振込手数料」なのですが、インボイスの取扱いに関しては、このように意外といろんな要素が絡んできます。

1回あたり数百円の処理に頭を悩ませたくはないのですが、残念ながらこれが現状です。

これに加えて国税庁は今も毎月のようにQ&Aを公表して、新しい情報を出してきます。

そのひとつが

多く寄せられるご質問(令和6年2月29日更新)

で追加された問23です。

これは振込手数料などについてのQ&Aですが、原則として簡易インボイスと帳簿の保存が必要としつつ、振込回数が多いなどの事情があってすべてのインボイスの保存が難しい場合には、金融機関ごとに

  • 通帳や入出金明細等
  • その金融機関における任意の一取引に係る簡易インボイス

併せて保存すればいいというのが主な内容です。

要するに、通帳の他に1回だけインボイスを保存しておけば文句は言わないという内容になっています。

似たような話として、ETCに関しては1回だけインボイスを保存すればいいという取扱いが公表されていますが、ほぼ同じような対応を振込手数料等についても認めるようです。

税務調査の場面において振込手数料に関してインボイスをまったく保存していない事業者が出てきた場合に、銀行から1件だけインボイスを取れれば不問にするという事業者への「配慮」なのでしょうか?

ただ、きちんと対応している事業者は、すでに銀行に申し出て毎月インボイスを受け取って保存しているのに、あとからQ&Aを出すだけでルールを変えるのってどうなのだろうかと思います。

最近特に感じることですが「正直者がバカを見る」ような対応が非常に多い気がします。

税金の世界では「公平性」が大事とされていますが、こうした対応が公平といえるのかどうか。

このようなことを続けていたら

「どうせあとでルールを変えるんでしょ」

と誰もが考えるようになり、制度が機能しなくなりかねません。

広告

現場の効率化では対処できないこともある

そもそもインボイス制度に登録しない金融機関があるとは思えませんし、振込手数料のような少額の取引が税金の計算において悪用される可能性は低いのではないでしょうか。

こうした取引についてまで、書類の入手や保存を厳密に求める必要が本当にあるのかどうか。

例えば少額特例については、現状では

  • 使える事業者を限定
  • 適用できる期間を限定

となっていますが、これを恒久的にすべての事業者が使えるようにするだけでも、現場の事務負担は大きく軽減される可能性があります。

インボイス制度に対応するために優れたサービスなども提供されていますが、どれだけ現場で効率化を進めても制度そのものを見直さないと対処しきれないことはあります。

特に最近は現場の負担を増やすような制度が多い印象です。

「制度」は一度できてしまうと中々変えるのは難しいのは事実ですが

「こんなの対応できるわけないでしょ!」

という声を上げ続けるのも大事なんじゃないかと最近感じます。

投稿者

加藤 博己
加藤 博己加藤博己税理士事務所 所長
大学卒業後、大手上場企業に入社し約19年間経理業務および経営管理業務を幅広く担当。
31歳のとき英国子会社に出向。その後チェコ・日本国内での勤務を経て、38歳のときスロバキア子会社に取締役として出向。30代のうち、7年間を欧州で勤務。

40歳のときに会社を退職。その後3年で税理士資格を取得。

中小企業の経営者と数多く接する中で、業務効率化の支援だけではなく、経営者を総合的にサポートするコンサルティング能力の必要性を痛感し、「コンサル型税理士」(経営支援責任者)のスキルを習得。

現在はこのスキルを活かして、売上アップ支援から個人的な悩みの相談まで、幅広く経営者のお困りごとの解決に尽力中。
広告