2024年1月以降、電子取引データを保存するにあたって猶予措置が設けられます。この条件の一つである「相当の理由」について確認をしておきましょう。

2024年1月以降は宥恕措置から猶予措置へ

2023年6月に更新された電子帳簿保存法一問一答【電子取引関係】について取り上げた記事

『猶予措置が認められる「相当の理由」とは具体的にどんな内容なのか』

について別途取り上げたいと書きましたが、気付けば1ヶ月ほど放置してました・・・。

ということで今回はこの話題について取り上げます。

※宥恕措置を含めた令和5年度改正の詳細については以下の記事を参照ください。

電子取引データの保存についてはデータのまま保存することが原則ですが、2023年12月までは「宥恕措置」というものがあり、紙に印刷して保存しておけばよいことになっています。

これが2024年1月以降は「猶予措置」といわれるものに変わり、この「猶予措置」を認めてもらうための条件の一つがその事業者に「相当の理由」があるかどうかです。

なお「宥恕措置」と「猶予措置」にはいくつかちがいがありますが、最も大きなちがいは「宥恕措置」ではデータの保存をしなくても問題ありませんでしたが、「猶予措置」ではデータの保存が前提となっている点です(なおどちらも税務署への事前の届出などは不要です)。

この点については一問一答問60-2においても

令和5年12月末までに行う電子取引を対象とした宥恕措置では、出力書面の
みを保存する方法で対応することが認められていましたが、令和6年1月以降に行う電子取引を対象とした猶予措置では、出力書面のみを保存することで対応することは認められておらず、出力書面の提示等に加え、電子データそのものも保存しておき、提示等ができるようにしておく必要があります

と明記されていますのでご注意ください(太字は筆者)。

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「相当の理由」の範囲を検討する

では「相当の理由」とは具体的にどのようなケースを指すのかについて一問一答をベースに確認しておきましょう。

基本となる考え方(問61)

ベースとなる考え方は問61において示されています(太字は筆者)。

その電磁的記録そのものの保存は可能であるものの、保存時に満たすべき要件に従って保存するためのシステム等や社内のワークフローの整備が間に合わない等といった、自己の責めに帰さないとは言い難いような事情も含め、要件に従って電磁的記録の保存を行うための環境が整っていない事情がある場合については、この猶予措置における「相当の理由」があると認められ

まずここを読むと会社としてシステムを導入したりするのが難しい状況であれば「相当の理由」があると認めてもらえそうです。

ただし

システム等や社内のワークフローの整備が整っており、電子取引の取引情報に係る電磁的記録を保存時に満たすべき要件に従って保存できるにもかかわらず、資金繰りや人手不足等の理由がなく、そうした要件に従って電磁的記録を保存していない場合には、この猶予措置の適用は受けられないことになります

とも書かれています。

つまり、会社の従業員が問題なくパソコンを使えていて普通に仕事しているようなケースだと、「相当の理由」を認めてもらうことは厳しい気がします。

その一方で「資金繰りや人手不足等」といった法律対応のリソースが厳しい状況にあることを説明できれば認めてもらえる可能性があります。

こうした書き方を見てると、実際の判断って言い方は悪いですが「雰囲気」で判断されるんじゃないかという気がしないでもないです。

「相当の理由」については幅広く認めるスタンスのようですので、こうした書き方になっているのでしょう。

信条等の理由で対応しないのはダメ

一問一答の元となる通達があり、その趣旨を説明した資料が公表されています。

その中の7-12(猶予措置における「相当の理由」の意義」)においてこのような文章があります(太字は筆者)。

単に経営者の信条のみに基づく理由である場合等、何ら理由なく保存要件に従って電磁的記録を保存していない場合には、この猶予措置の適用はないことに留意する。

要するに、対応できるだけのお金や人員がいるにもかかわらず

「データなんかいつ消えるかわからないから信用できない。請求書などは必ず紙で保存すべきだ。」

という考え方で法律上必要な対応をせずに、紙の書類を保存している場合には「相当の理由」は認めてもらえないということです。

この場合には、「猶予措置」以外の保存方法での対応が求められることになります。

あまりこんなケースはないと思いますが・・・。

レベルを下げるような保管方法の変更は認められるか?(問64)

令和5年度改正により、印刷した請求書等を取引日や取引先ごとに整理しておけば検索要件なしにデータ保存できるようになりました。

一旦この方法で保存していたけれど、紙の保管場所が足りなくなったので印刷した書類を廃棄してデータだけの保存に変更したいが、「相当の理由」があると認めてもらえるか?というのが問64です。

この点について

令和5年度の税制改正後の保存時に満たすべき要件に従って適切に電子取引のデータ保存が可能である事業者が、特段の事情なく検索要件を満たすことができなくなった場合については、この猶予措置の対象とはなりません。

とされていて、他の方法で対応していたのに難しくなったので「猶予措置」を認めてほしいという点については認められません。

当初「猶予措置」以外の方法で保存していた会社が「猶予措置」を適用した保存に変更するには「特段の事情」といった税務署側をナットクさせられる理由が必要です。

この回答を踏まえると、特別な事情なくレベルが下がるような保存方法の変更は認められません。

「猶予措置」を適用できるのは、今まで他の保存方法での保存をしていない会社が対象と考えておいた方がよいでしょう。

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インセンティブを与えた方がうまくいくのでは?

2024年1月以降の電子取引の保存に関して、「猶予措置」を認めてもらう条件である「相当の理由」について確認しました。

「相当の理由」自体は恐らく幅広く認めてくれる運用がされるとは思いますが、あくまでデータ保存をしていることが前提となるため、現在「宥恕措置」にて対応している会社にとっては厳しくなる面もあります。

個人的な意見ですが、データ保存って法律でムリヤリ強要してもあまり浸透する気がしないんですよね。

もちろんペーパーレスやデータの共有など、活用できる会社にとってはメリットがありますが、そうしたものを現時点で必要としない会社も当然あります。

どちらかといえば、法律で強制するんじゃなくて対応した会社に何らかの税金のメリットを与える方が、自然とそうした方向に進むんじゃないかと思います。

今から税務署の方向転換はないと思いますが、現状では「やらされてる感」満載で「対応したい」と考える事業者は皆無なんじゃないかと。

投稿者

加藤 博己
加藤 博己加藤博己税理士事務所 所長
大学卒業後、大手上場企業に入社し約19年間経理業務および経営管理業務を幅広く担当。
31歳のとき英国子会社に出向。その後チェコ・日本国内での勤務を経て、38歳のときスロバキア子会社に取締役として出向。30代のうち7年間を欧州で勤務。

40歳のときに会社を退職。その後3年で税理士資格を取得。

中小企業の経営者と数多く接する中で、業務効率化の支援だけではなく、経営者を総合的にサポートするコンサルティング能力の必要性を痛感し、「コンサル型税理士」(経営支援責任者)のスキルを習得。

現在はこのスキルを活かして、売上アップ支援から個人的な悩みの相談まで、幅広く経営者のお困りごとの解決に尽力中。

さらに、商工会議所での講師やWeb媒体を中心とした執筆活動など、税理士業務以外でも幅広く活動を行っている。
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