電子取引の保存が義務であるのに対して、スキャナ保存は任意の制度ですが、経理業務の効率化を考えた場合これらは一体として検討すべきでは、というお話です。

電子取引の保存だけで実務が回るかどうか

今年1月から電子帳簿保存法が改正されて、2年間の猶予はあるものの、データで受取った請求書などはデータのまま保存する必要があります。

このタイミングに合わせて、自分の経理についてはデータで受取ったものはデータのまま保存するように切替えました。

結果どうだったかといいますと

「紙に印刷しなくていいって楽だな」

と感じています。

昨年までは、メール添付などで受取った請求書などもすべて印刷して保存していましたが、もともとデータで受け取る請求書等が多かったこともあり、保存する紙の量が半分以下に減りました。

こうなると次のステップとして、スキャナ保存制度を使って請求書や領収書の完全ペーパーレス化の実現を目指そうかと考えています。

ちみみに、小規模事業者の方で自分で経理をしているのであれば、私のように電子取引の保存に対応してからスキャナ保存を検討する、という順番で進めても特に問題はありません。

ところが会社の規模が大きくなってくると

  1. 請求書の受け取り(電子データ・紙)
  2. 経理処理
  3. 請求書等の保存

といった請求書受取~経理処理~保存にかかわる手順をすべて同じ人が行うとは限りません。

特に「3. 受取った請求書の保存」について、例えば経理処理の前に営業部門の方が担当するケースも考えられます。

この場合に、もしスキャナ保存を採用していないと

「紙で受取ったものはそのまま経理に回付、データで受取ったものは自社サーバーの所定のフォルダに保存」

といった処理をしてもらうことになるかもしれません。

処理が2つに分かれてしまうと、誤ってデータで受取ったものを印刷して経理に回付したり、データの保存を忘れるといったミスが起きる可能性も。

また経理担当者にしても、紙で回付された請求書とデータ保存された請求書をそれぞれチェックする必要があり、チェックする書類の種類が増えることにより、見落とし等によるミスが起きるかもしれません。

そう考えると

請求書受取~経理処理~保存

の手順をひとりで行っていない会社の場合は、電子取引データの保存方法を検討する際に、同時にスキャナ保存まで含めて検討した方が、全体の経理処理として楽になる可能性が高くなります。

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電子取引とスキャナ保存を一体運用する際の業務フロー

では仮に、電子取引データの保存とスキャナ保存を一体として運用する場合、どのような業務フローが考えられるか。

範囲を広げすぎると煩雑になりますので、今回は「請求書」「領収書」のみをスキャナ保存するという前提で検討します。

今回スキャナ保存に関する要件をすべて確認することはしませんが、業務フローを検討する上で気をつけたいのが

  1. 検索要件の確保
  2. 帳簿との相互関連性の確保

の2点。

aの検索要件は電子取引の保存と同じものと考えてもらえれば大丈夫です。

bは電子取引の保存の際にはなかったものですが、要するに

「帳簿の仕訳とどのスキャナ保存データが紐ついているか」

を説明できるようにしておく必要がある、ということです。

これらの条件を満たそうとしたときに一番スッキリする方法は、仕訳処理時に仕訳と紐つけてデータ保存できる会計ソフトを使う、ということになります。

仕訳をクリックして請求書等のデータが表示されれば、仕訳との紐付けはカンペキですし、仕訳帳の中で検索要件を満たせます。

(実際にはスキャナ保存のために他にも満たすべき要件があり、会計ソフトに直接保存する方法では、スキャナ保存の要件を満たさないケースがありますので、その点はご注意ください)

自分ひとりで請求書の受取から経理処理までやっていて、量も多くなければ、例えば電子取引データもスキャンしたデータもすべて「未処理フォルダ」に入れておいて、経理処理時に仕訳にひとつずつ紐つけていけばうまく機能します。

ところが、データを保存する担当者と経理処理する担当者が別々の場合はどうでしょうか。

恐らく保存する担当者は、後工程の経理処理まで配慮することはあまりないでしょうから、電子取引データは受取った時のファイル名のまま、スキャナ保存データはスキャナの標準設定のファイル名のまま保存してしまうかもしれません。

こうなると、経理担当者は仕訳処理時に仕訳と紐つけるファイルを見つけるだけで一苦労です。

こうした状況を避けるためには、スキャナ保存に対応した帳票保存サービスを利用することも検討が必要だと考えます。

つまり

  1. 営業担当者が請求書(データ・紙)を受け取る
  2. 電子帳簿保存法に対応したサービスに保存する(このときに取引日・取引先・金額を入れる=検索要件の確保)
  3. 経理担当者は仕訳に紐つけるデータを保存サービス内で検索で探す
  4. 経理処理が終わったら仕訳番号を保存サービス内のデータに付与する(=帳簿との相互関連性の確保)

といった流れが現実的ではないかと。

ⅱの取引日・取引先・金額の入力については、利用するサービスによってはOCR等で自動的に読み込んでくれるものもありますので、このあたりは自社の経理処理に合ったサービスを見極めることが重要です。

この方法であれば、経理担当者は対象となるデータを検索で探すことができますし、仕訳番号が入力されていなければデータが未処理ということがわかります。

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どうせ対応するなら経理業務が少しでも楽になるように見直すべき

電子帳簿保存法への対応として、電子取引データの保存に対応するだけでなく、同時にスキャナ保存にも対応した方がいいのではないか、ということで汎用的に使えそうな業務フローについて検討してみました。

あくまでひとつの考え方・アイデアですので、自社に合わせて検討いただければと思います。

電子帳簿保存法といった法律への対応は、どうしても負担感があるものですが、最初にお伝えしたように、紙保存が減るとかなりスッキリしますし、請求書等もあとから探しやすくなるといったメリットがあります。

どうせ対応しなければならないのであれば、後ろ向きにならずに自社の経理業務が少しでも効率化される方向で検討してみてはいかがでしょうか。

投稿者

加藤 博己
加藤 博己加藤博己税理士事務所 所長
大学卒業後、大手上場企業に入社し約19年間経理業務および経営管理業務を幅広く担当。
31歳のとき英国子会社に出向。その後チェコ・日本国内での勤務を経て、38歳のときスロバキア子会社に取締役として出向。30代のうち7年間を欧州で勤務。

40歳のときに会社を退職。その後3年で税理士資格を取得。

中小企業の経営者と数多く接する中で、業務効率化の支援だけではなく、経営者を総合的にサポートするコンサルティング能力の必要性を痛感し、「コンサル型税理士」(経営支援責任者)のスキルを習得。

現在はこのスキルを活かして、売上アップ支援から個人的な悩みの相談まで、幅広く経営者のお困りごとの解決に尽力中。

さらに、商工会議所での講師やWeb媒体を中心とした執筆活動など、税理士業務以外でも幅広く活動を行っている。
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