「税理士は辞めるまで勉強が必要」とよく言われますが、そう思って過ごしていても、知らないことはたくさんあります。自分が気づいていない「知らないこと」を知るにはどうすればよいか考えてみましょう。
まったく想定もしてなかったことに気づいたときの居心地の悪さ
税金というのは、毎年のように制度が変わりますので、変更点についてキャッチアップする必要がありますが、それだけで十分というわけではありません。
一般の方からは想像しにくいかもしれませんが、「税理士」といっても税金のことすべてを知っているわけではないんです。
お医者さんだと、内科や外科が分かれていたり、町のお医者さんと大きな病院の専門医がいらっしゃたりと、それぞれ専門としている分野がありますが、そうしたイメージに近いかもしれません。
とはいえ、何も知らなければ「こうした案件は誰に頼めばいいか?」といった判断もできませんので、やはりある程度は広く浅く知っておくべきだと考えています。
そうした目的もあり、専門書や専門誌に普段から目を通すわけですが、こういったものを読んでいると、時々自分が知らなかった(又は気づいていなかった)知識や解釈に遭遇します。
そんなときは大体、過去に自分が処理した内容を思い出して、冷や汗をかくことも多く、非常に居心地の悪い感情に襲われます。
できればそうした機会はないほうがありがたいのですが、そうした機会がないというのは、逆に言えば自分にとって「未知の知識」に遭遇する機会がないということ。
専門家として仕事をしていく以上は、
- 自分のスキルを上げる
- ミスに気づく
- 知識を広げる
といった観点から、こうした遭遇する機会が増えるような環境を作っておく必要があります。
意識的な情報収集だけでは不十分な理由
では、どうやってそうした環境を作り上げるか。
まず始めに、「自分の知らないこと」を知るための方法としては、次の2つがあります。
- 意識的にテーマを設定して調べる
- 雑多な情報にアクセスして、想定外の気づきを得る
具体的にいいますと、1であれば
- 知りたい分野の専門書を読む
- 知りたい内容と関連するセミナーを受講する
- 知りたい内容について解説してそうな動画教材を購入する
といった方法が考えられます。
本・セミナー・動画など手段は色々とありますが、共通しているのは「自分が知りたい」と思っているテーマに関連するものを「意識的に」探して調べる、という点です。
これに対して、2の場合には、
- 業界の専門誌を購読する
- 同業の方などと話をする機会を持つ(勉強会など)
- 自分に近い業種の方がいるSNSに参加する
といった方法が挙げられます。
1と違うのは、「自分が知りたい」というテーマが細かく設定されていない点です。
自分が意識している「知りたいこと」というのは、思っている以上に範囲が狭くなっている可能性があります。
つまり、そうしたテーマに絞った情報収集だけをしていると、まったく想定もしていなかった「自分が知らないこと」に遭遇する可能性が低くなってしまいます。
この「想定外」を生み出すというのは、「自分の知らないこと」を新たに知るためには非常に大事なポイントです。
「自分の知らないこと」に遭遇できるかどうかは、いってしまえば確率の問題。
意識的に専門書等を読むだけでは、この「想定外」の確率が上がりませんので、そのためにテーマを絞らない情報へのアクセスが重要です。
もちろん専門書を読むことが不要、というつもりはまったくありません。
なにごともバランスが大事ですが、もし1の方法に偏っているようであれば、2の割合を増やす必要がある、ということです。
「ムダ」と思えるところにも、あえて首を突っ込んでおく
結論としては、情報収集に多少の「ムダ」「遊び」を持っておきましょう、ということになります。
「業界の専門誌なんて、自分が知りたいこと以外にも色々書いてあるのでムダ」
「勉強会は、自分とレベルの合う人があまりいないので時間のムダ」
「SNS眺めてると、すぐに時間が経ってしまうので、あまり使いたくない」
などなどいろんな考え方はあると思います。
ただ、どこまでやるかは人それぞれです。
専門誌といっても複数ある業界もあるでしょうから、どれに目を通すのか?
勉強会といってもどれに参加するのか?
SNSといっても、どれを見るのか、どこまで時間をかけるのか?
こうしたことは自分でルールを決めてやっていくしかありません。
大事なのは、「ムダ」とすべて切り捨ててしまうのではなく、「自分の知らないこと」に遭遇するための必要なコストとして、可能な範囲で残しておくことです。
もしこの記事を読んで、「最近、意外性のある知識に遭遇する機会が少ない」と感じるようであれば、この機会に今まで使っていなかった情報媒体を使ってみてはいかがでしょうか。
投稿者
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大学卒業後、大手上場企業に入社し約19年間経理業務および経営管理業務を幅広く担当。
31歳のとき英国子会社に出向。その後チェコ・日本国内での勤務を経て、38歳のときスロバキア子会社に取締役として出向。30代のうち7年間を欧州で勤務。
40歳のときに会社を退職。その後3年で税理士資格を取得。
中小企業の経営者と数多く接する中で、業務効率化の支援だけではなく、経営者を総合的にサポートするコンサルティング能力の必要性を痛感し、「コンサル型税理士」(経営支援責任者)のスキルを習得。
現在はこのスキルを活かして、売上アップ支援から個人的な悩みの相談まで、幅広く経営者のお困りごとの解決に尽力中。
さらに、商工会議所での講師やWeb媒体を中心とした執筆活動など、税理士業務以外でも幅広く活動を行っている。
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