前回の記事で、国税庁の確定申告書等作成コーナーでのマイナポータル連携の方法について確認しました。今回は、マイナポータルからデータを取り込んだ後の操作について確認してみましょう。
混雑・密を避けるためにも作成コーナーを活用する
いきなり本題から少し外れますが、2月2日に国税庁より、
「令和2年分の所得税等の確定申告期限を4月15日まで延長する」
という発表がありました。
030202kigenencho新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐためにも、確定申告会場や税務署での混雑を避けることをひとつの目的として決定されたようです。
申告期間を延長することで混雑・密を避けるというのもひとつの方法ですが、そもそも申告会場や税務署に行かずに済めば、混雑に巻き込まれることもありません。
そのための方法として、確定申告書等作成コーナーという形で、申告書を自分で作成して電子申告又は郵送で提出するための手段が提供されています。
そうした趣旨も踏まえて、自分できる方は積極的にこうしたツールを活用していきましょう。
自力で確定申告書を完成させようという方が参照できるよう、今回はマイナポータル連携後の操作画面について確認します。
マイナポータル連携すると、従来の画面とどこが違うか?
前回の記事で、確定申告書等作成コーナーでマイナポータル連携をする手順について確認しましたが、今回は連携後の画面で従来と異なる部分を確認しておきましょう。
前回は、マイナポータル連携を使って、データを取り込んだところまでを確認しました(下記画面)。
この画面で、「申告書等を作成する」をクリックして、次の画面で「作成開始」を押すと、以下の画面が表示されます。
今回、特定口座年間取引報告書のデータを取り込みましたので、「配当所得」「株式等の譲渡所得等」「上場株式等に係る配当所得等」の欄が赤く表示されています。
取り込んだデータに関連する欄は、このように赤く表示されるようです。
ここで少し注意が必要なのですが、
「マイナポータル連携で取り込んだデータについては、確認等の処理を行わないと、後でエラーとなって進めない」
という仕様になっているようです。
内容確認をせずに、先に進んだところ、後で次のようなエラーメッセージが出てしまい、戻って確認しなければなりませんでした。
つまり、マイナポータル連携をすると、画面に「連携内容を確認」と表示されている場合は、必ずそのボタンをクリックして内容確認および必要な情報の入力が必要となります。
配当所得や株式譲渡所得については、画面を開いて
- 配当所得について「総合課税」「申告分離課税」「配当等がない」のいずれかを選択
- 前年からの株式譲渡損の繰越の有無の選択
などを行い、配当について「総合課税」を選択した場合は、配当控除についての情報を入力する必要があります。
この辺りの入力方法については、昨年から大きく変わったところはなかったと思います(昨年の画面のスクショがないので、詳細まで確認できていません・・・)。
なお、今回連携した証券口座は配当しかなかったのですが、あとで「申告対象から外しますか?」というメッセージが表示されて譲渡所得を対象から外すことができました。
この後、所得控除の入力画面に進むと、生命保険料控除証明書のデータを取り込みましたので、「生命保険料控除」欄が赤くなっていることが確認できます。
これについても、「連携内容を確認」をクリックして、画面の指示に従って進んでいくと、最終的に計算結果が表示されます。
さらに画面を進めると、「連携内容を確認」する前の画面には表示されていなかった、生命保険料控除の金額が、所得控除として表示されます(金額欄は隠してますが、数字は表示されています)。
私が確認した範囲では、マイナポータル連携により変更となった入力方法は、
「マイナポータル連携で取り込んだデータ内容を、必ず確認する必要がある」
という点でした。
データ連携が主流になれば、画面や入力の仕方も変わるはず
マイナポータル連携により、確定申告書等作成コーナーの入力方法が、どのように変わったのか確認しましたが、いかがでしたでしょうか?
個人的な感想としては、「全然ラクになってないじゃん」。
現時点での仕組みとしては、昨年までのものに、単にマイナポータル連携という機能を付け加えただけであり、「おまけ」のような印象を受けます。
個人的な願望ではありますが、最終的には、
- マイナポータル連携でのデータ取込
- 計算結果(申告書)表示
- 追加入力や修正が必要な人だけ、そこから入力して修正する
くらいの仕組みになってくれないかな、と。
今の仕組みは、データ入力が前提となっていて、マイナポータル連携はあくまでその入力を補助するための仕組みという位置づけです。
これが将来的に、データ連携が主な方法となり、データ入力は必要な方だけするもの、という状況になれば、入力・操作画面も大きく変わってくるのではないかと思います。
データがあるのであれば、わざわざ入力するのはムダな作業でしかありません。
マイナポータル連携の初年度ということもあり、まだまだ不十分な点は多いですが、今まで手入力が必要だったデータを取り込めるようになったのは、大きな前進かと思います。
近い将来に、先日書いた記事で引用した文章の中にあった
「先進諸外国が導入している記入済み申告制度」
が実現してくれることを期待しておきましょう。
投稿者
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大学卒業後、大手上場企業に入社し約19年間経理業務および経営管理業務を幅広く担当。
31歳のとき英国子会社に出向。その後チェコ・日本国内での勤務を経て、38歳のときスロバキア子会社に取締役として出向。30代のうち7年間を欧州で勤務。
40歳のときに会社を退職。その後3年で税理士資格を取得。
中小企業の経営者と数多く接する中で、業務効率化の支援だけではなく、経営者を総合的にサポートするコンサルティング能力の必要性を痛感し、「コンサル型税理士」(経営支援責任者)のスキルを習得。
現在はこのスキルを活かして、売上アップ支援から個人的な悩みの相談まで、幅広く経営者のお困りごとの解決に尽力中。
さらに、商工会議所での講師やWeb媒体を中心とした執筆活動など、税理士業務以外でも幅広く活動を行っている。
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