今年の税理士試験は8月9日~11日の日程で行われます。
昨年まで受験する側にいた者として受験生の皆様には、体調に気をつけて頑張ってもらいたいと思います。

今回は税理士試験受験時代の勉強法についてのお話です。

1.税法科目の勉強法(計算編)

必須科目である簿記論・財務諸表論と税法科目は少し性格が異なるため勉強方法も変わってくるのですが、今回は税法科目について触れてみたいと思います。

税法科目の勉強については、計算問題と理論問題の勉強があります。
個人的にはこれら二つは密接につながっているため、最終的には一体として勉強していく必要があると考えていますが、これはあくまで計算と理論の基礎をある程度積み上げた上で一体として理解していくべきであって、最初の段階ではやはり基本的な勉強を積み重ねていく必要があります。

計算問題についてはとにかく問題を解くこと。これにつきます。
予備校で言われることそのままですが、計算問題は3回は解く必要があります。

1回目はテキストの内容を理解しているか確認するため、2回目はテキストの内容の定着のため、そして3回目は忘れかけた頃に再度理解を定着させるため、という位置づけで3回解くことにしていました。

もちろん解いてみて解答・解説が理解できなければテキストに戻っての内容確認は必須です。

2.税法科目の勉強法(理論編)

理論については、内容を理解した上で暗記するという勉強法を取っていました。

予備校の理論テキストの暗記なんか意味があるのか、という意見もあるかもしれません。
私も税法を勉強し始めた頃は、内容さえきちんと理解していれば暗記なんかしなくても合格できるのでは?と考えていた時期もありました。

しかしながら、勉強が進むにつれて暗記は解答スピードを上げるために必要なモノと考えるようになりました。
結局、理論問題を解く際に大量の文章を書かなければならないわけですが、自分の頭の中で文章を組み立てながら書くよりも、暗記した文章を基に書いた方が遙かに早く書けるということに気づき、それ以降暗記をきちんとするようになりました。

理論問題に掛ける時間を短くすることができれば、その分計算問題に時間を割くことができますので、慌てて解いたがためのケアレスミスといった失敗を避けることができます。

とはいえ、受験生にとって暗記というのは非常につらく苦しい作業です。
そこで私が使っていた暗記方法は、ICレコーダーを使うという方法でした。

3.ICレコーダー活用による理論暗記

暗記にICレコーダーを活用するには、まず機種選びが重要です。
機種選びの最も重要なポイントは再生速度の調整が容易であること

メニューの中で再生速度を調整できるモデルもありますが、ボタン等で速度を変えることができる(かつ少なくとも2倍速まで調整が可能な)モデルがおすすめです。
私が使用していたのは、SONYのICD-UX533Fというモデルでした(すでに生産完了しています)。
側面にDPC(速度調節)のレバーがあり、この機能を「入」にすると再生中でも速度を変更することができます。

理論の暗記をする際には、まずテキストにざっと目を通して書いてある内容を頭に入れます。
例えば、消費税法の納税義務者の理論であれば、「まずどんな人が納税義務者になって、その次に基準期間における課税売上高が1千万円以下であれば納税義務が免除される。最後に用語の意義が書いてある。」といった感じです。

テキストを見終わったら早速ICレコーダーのスイッチを入れて今見た理論を暗唱します。
そうはいっても、1回目から暗唱できるはずもありませんので、先ほど頭に入れた概要を思い出しながら自分で文章を組み立てて吹き込んでいきます。

テキストを開いた状態で吹き込んだ音声を再生するのですが、このとき再生速度は2倍にしていました。最初は2倍では聞き取れなかったため1.7倍程度から始めて少しずつ再生スピードを上げていきました。再生スピードを上げることにより確認に掛ける時間を短縮することができます

再生した音声を聞きながら、テキストのどこの部分がきちんと文章にできなかったかを確認します。
この際、細かい「てにをは」はあまり気にせず自分の吹き込んだ文章が理論の意味合いとしておかしくないかという点に重点を置いて確認しましょう。

この吹き込んで再生してテキストと見比べるという作業を3回くらい繰り返せば、長い理論でなければある程度暗記はできます。

この方法の利点は、「話す(アウトプット)、耳で聞く(インプット)、目で見る(インプット)」と1回につきアウトプット1回、インプット2回できることです。

理論暗記はインプットとアウトプットの回数を増やすことが重要ですから、そういう意味ではこの方法は効率的です。

正直なところ1回目の暗唱は全く言葉が出てこなくてイヤになってしまうことが多かったですが、理論を書くよりは話す方が遙かに早く自分の暗記の状況を確認できますし、単に書き写すよりも思い出そうとする方が効果は高いと思います。
特に何度も書くという方法は、模擬試験が増える直前期には手首に負担を掛けすぎてしまうため、私としてはおすすめできません(私も何度も手首を痛めそうになりました)。

税理士試験はどうしても時間を掛けざるを得ない試験ではありますが、努力した分だけ結果として現れる試験ですが、誤った方向の努力をいくら重ねても効果は出ません。
暗記の仕方は人それぞれ向き・不向きがありますが、暗記方法の一例として参考にしていただき自分にとって最適な暗記方法を見つけ出してください。

本番まで2週間足らずですが、体調には十分気をつけて臨んでください。

投稿者

加藤 博己
加藤 博己加藤博己税理士事務所 所長
大学卒業後、大手上場企業に入社し約19年間経理業務および経営管理業務を幅広く担当。
31歳のとき英国子会社に出向。その後チェコ・日本国内での勤務を経て、38歳のときスロバキア子会社に取締役として出向。30代のうち、7年間を欧州で勤務。

40歳のときに会社を退職。その後3年で税理士資格を取得。

中小企業の経営者と数多く接する中で、業務効率化の支援だけではなく、経営者を総合的にサポートするコンサルティング能力の必要性を痛感し、「コンサル型税理士」(経営支援責任者)のスキルを習得。

現在はこのスキルを活かして、売上アップ支援から個人的な悩みの相談まで、幅広く経営者のお困りごとの解決に尽力中。