あまり税理士とは関係のない話ですが、仕事で海外の会社とコミュニケーションをとるのが難しい理由について、過去の経験から考えてみたいと思います。
目次
自分が経験した海外会社との2つの関わり方
サラリーマン時代に累計で7年間ほど海外勤務を経験しましたが、それとは別に日本での勤務時代に、駐在員のいない北米の販売会社と仕事をする機会がありました。
つまり、
- 海外工場への出向者としての立場からの関わり方
- 日本から現地スタッフと直接やりとりする立場での関わり方
という2つの異なる形で、海外の方と働く機会がありました。
出向時の経験を書き出すと、愚痴のオンパレードで連載ものになってしまいそうですので、今回は日本から現地スタッフと直接やりとりしたときの経験について書いてみようかと。
具体的には、当時勤務していた事業部で、管理会計上その販売会社を連結していましたので、販売会社の経理部門から報告や資料をもらったり、内容について問合せをするといった仕事をしていました。
そのような形で数字をもらっていると、たまに粗利率が前月から大きく動いたりすることがあります。
事業部の中で報告する際に当然理由を聞かれますので、事前に現地スタッフに問い合わせるわけですが、毎回返ってくる回答が
「Model mix」(機種構成差)
というひと言だけ、ということもありました。
こうした分析をする際に、「機種構成差」というのは、ある意味最後の分析しきれない部分をまとめるために使われることが多く、「主な理由は機種構成差です」なんて説明しようものなら、「だったらどんな風に構成が変わったんだ?」と聞かれてしまうわけです。
なので、その内訳を問い合わせたりするわけですが、なかなかこちらの納得できる回答がもらえず、時間切れになってしまう、なんてことがありました。
コミュニケーションがうまくいかない3つの要因
では、海外会社とコミュニケーションをする際に、うまくかみ合わない理由は何だろうかと。
あくまで個人的な意見ですが、主な要因としては、
- 言葉の壁
- 時差の問題
- バックグラウンドの違い
の3つだと考えています。
1. 言葉の壁
今さらという要因ですが、やはり言葉の壁は大きいです。
特に私が仕事をしていたのが、欧米の方が多かったため、まず日本語を理解する人はいません。
こちらは当然母国語ではない英語を使うわけですが、向こうがネイティブであれば「当然英語を理解してるだろう」としてコミュニケーションを取ってきます。
相手がノンネイティブだとすると、お互い母国語ではない言語でコミュニケーションを取るわけですから、細かいニュアンスはうまく伝わりません。
結局、こちらが伝えたい内容が、ニュアンスを含めて相手にうまく伝わっていないことが多く、結果としてこちらが必要とする回答が返ってこないわけです。
日本人同士が日本語でコミュニケーションをとっても、うまく伝わらない場面があるくらいですから、言葉の壁はやはり最も大きな要因としてあります。
2. 時差の問題
これはコミュニケーションをとる相手国によって大きく変わりますが、特に欧米とやりとりする場合は時差の問題も生じます。
こちらの昼間が向こうでは夜となると、コミュニケーションを取るのは、主にメールになります。
そうすると前日送っておいた質問に対して、翌日出社後にメールを確認したら、
- こちらが必要とする回答ではなかった
- ひどいときはメール自体が返ってきていない
ということがあるわけです。
そうすると電話で確認することもできず、再度メールを送って翌日まで待たないといけないため、仕事は進まずストレスがたまる一方ということになります。
3. バックグラウンドの違い
これも「バックグラウンド」という言葉で括ってしまうと、身も蓋もなくなってしまいますが、やはり育ってきた環境が違うと、ものごとに対する考え方は大きく異なります。
特に欧米の方だと、仕事より家庭を重視する方が多いわけで、残業してまで依頼された仕事をやろうという方はあまりいません(この点、日本も少しずつ変わってきていると感じてはいますが)。
そうなると、時間が来れば仕事が終わらなくても帰るという人も多く、先ほどのメールの返事が返ってこないといったことにもつながります。
投げやりな言い方に聞こえるかもしれませんが、「考え方が違うものは違うんだから仕方ない」と割り切って受け入れないと、先には進めないんだろうな、と最近特に感じます。
コミュニケーションが難しい要因を3つ挙げましたが、例えば東南アジアなどの方とやりとりをする場合だと、
- 日本語をある程度理解する人がいることがある
- 日本との時差はあまり大きくない
- 考え方も、欧米の方と比較すれば多少は日本に近いところがある
という面があり、そうした点が日本人にとって、欧米の会社と比較すると多少コミュニケーションが取りやすい理由ではないかと考えています。
では、どうすればうまくいくのか?
では、こうした理由があるからどうしようもないと諦めてしまうのか?
それでは何も解決しませんので、対策として3つ挙げてみます。
- コミュニケーションの目的を明確にする
- 質問の仕方を工夫する
- コミュニケーションで根負けしない
ⅰ. コミュニケーションの目的を明確にする
こちらが必要とする回答が返ってこないとイライラが募り、やりとりしている理由を忘れてしまいがちですが、コミュニケーションを取る理由は、あくまで自分の仕事を終わらせるため。
コミュニケーションがかみ合っていないと感じるときは、その仕事を終わらせるために、最低限相手から入手しないといけない情報をもう一度明確にして、軌道修正を図るべきです。
ⅱ. 質問の仕方を工夫する
ⅰで入手すべき情報を明確にしたら、次にやるべきなのは、質問の仕方を工夫することです。
うまくいかない要因として「言葉の壁」を挙げましたが、例えば、
- 言葉よりも数字を多用する
- 文面も長文よりも、箇条書きなどで書く
- Yes/Noや選択肢から選んで回答できるような質問に変更する
などの工夫をすれば、言葉の壁をいくらか越えやすくなり、こちらが必要とする回答を得られる確率は高くなります。
ただし、Yes/Noや選択肢から選ぶ質問の仕方にする場合、こちらで下調べ等の準備作業が確実に増えます。
それでも何のためにコミュニケーションをしているのかを考えれば、結局はこの方が早く目的を達成することが可能です。
ⅲ. コミュニケーションで根負けしない
最後は精神論になってしまいますが、思うような回答が得られないコミュニケーションを続けていると、「もういいか」という気分になってしまうことが往々にしてあります。
そこでやめてしまって問題がなければ構いませんが、何らかの目的があってコミュニケーションを始めたはず。
気持ちで負けてしまうと、こちらが損をするというケースは多くあります。
他にもいろいろ仕事があって、こうしたやりとりにばかり時間をかけていられない、ということも多いとは思いますが、目的を再度確認して、コミュニケーションで相手に根負けしないようにすべきでしょう。
私の経験から、海外会社とのコミュニケーションについてまとめてみました。
中にはネイティブ並みに英語が話せて、海外会社とのコミュニケーションにまったく問題はないという方もいらっしゃると思います。
とはいえ、英語に苦手意識を持つ日本人が多いのも事実。今回のようなやりとりに苦戦し、日々ストレスをためている方も一定数いらっしゃると思います。
今回の記事、そうした方がコミュニケーションを取る際の参考になれば幸いです。
投稿者
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大学卒業後、大手上場企業に入社し約19年間経理業務および経営管理業務を幅広く担当。
31歳のとき英国子会社に出向。その後チェコ・日本国内での勤務を経て、38歳のときスロバキア子会社に取締役として出向。30代のうち7年間を欧州で勤務。
40歳のときに会社を退職。その後3年で税理士資格を取得。
中小企業の経営者と数多く接する中で、業務効率化の支援だけではなく、経営者を総合的にサポートするコンサルティング能力の必要性を痛感し、「コンサル型税理士」(経営支援責任者)のスキルを習得。
現在はこのスキルを活かして、売上アップ支援から個人的な悩みの相談まで、幅広く経営者のお困りごとの解決に尽力中。
さらに、商工会議所での講師やWeb媒体を中心とした執筆活動など、税理士業務以外でも幅広く活動を行っている。
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