仕事柄「経理が苦手」という人に会うケースは多いですが、そうした方は同じような特徴を持っている気がします。その特徴とその点を踏まえてどのように対処すべきか考えてみましょう。

「私、経理って苦手なんです」

この仕事をしてると「経理が苦手なので全部任せたい」という方にお目にかかることは多いものです。

特に規模の大きくない中小企業などの場合、社長自身が経理をしていることも多く、経理担当を雇うほどの規模はないけれど自分でするのは大変、ということでこうした悩みが出てきたりします。

そうした悩みを抱えているから、外部の専門家に頼ることを考えたときに、税理士が候補のひとつとして名前があがるのでしょう。

このようなご相談を受けていろいろとお話をうかがっていると、ある一定の傾向みたいなものが見えてきます。

私の独断と偏見ではありますが、3つにまとめると

  1. 業務の流れを整理するのが苦手
  2. 決めたルールを淡々と守るのが苦手
  3. そもそも細かい作業が苦手

といったところではないでしょうか。

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「経理が苦手」という人がもつ3つの特徴

この3つの特徴について、もう少し詳しく検討してみます。

業務の流れを整理するのが苦手

まず最初のポイントとして、経理処理の現状の流れを整理して、もっと簡単にできるようなやり方を考えることをしていない、という傾向があります。

これにはいくつか原因があって

  • 経理なんてどんなやり方でも大変さは変わらないと思っている
  • 業務フローを整理したり、見直すことが苦手
  • そもそも経理のやり方を見直すという発想がない

といったところです。

経理処理のフローを見直さない人が、本業でも業務の見直しを行わないかというと、決してそういうわけではありません。

本業では抵抗感なくできる人であっても、「経理」という言葉に対してそもそも拒否反応があって

「経理処理の現状の流れを整理して、他の方法を考えるなんてやりたくない」

となっているケースが多い気がします。

ちなみに完全な余談ですが、こうした流れを整理することを英語でいう場合、「Streamline」という単語がピッタリくるイメージがあります。

元々の意味は「流線」とか「流線型」ですが、動詞になると「合理化する」とか「簡素化する」という意味を持ちます。

流線のように仕事が流れるようにすると、結果として合理化されるというイメージで、個人的には好きな単語です。どうでもいい話ですが・・・。

決めたルールを淡々と守るのが苦手

仮に経理のやり方を見直ししたとしても、決めたやり方を淡々と続けるのが苦手、という方もいます。

ルールを決めたけれど、きちんとまとめていなかったり、まとめてあってもその通りに毎回同じことをするのが苦手といったケースがあります。

いろいろと理由はありますが、決めたルールを守ることを重要だと感じていないというか、その後の影響を想像できないことが多いのではないでしょうか。

ルールの背景や影響を理解すると多少は改善する可能性はありますが、「苦手なものは苦手」という方はいますので、難しいところです。

そもそも細かい作業が苦手

2つ目と重なる部分も多いですが、例えばレシートを整理したり、集計したり、ソフトに入力したりといった細かい作業が退屈で苦手という人は一定数います。

もともとの性格的なものから来ている部分が大きく、経理処理においてはこうした細かい作業は避けられないとはいえ、経理に対する苦手意識の原因のひとつとなっています。

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「苦手」を前提に仕組みを考える

ちなみに今回の記事、経理が苦手な人を非難したり、批判する意図はありません。

誰でも得手不得手はあるもので、私だって苦手なものはたくさんあります。

だからこそ、経理をラクにするために、今回挙げた特徴を踏まえてどうするか考えるべきでしょう。

例えば決めたルールを守るのが苦手であれば、守るべきルールの数をできるだけ減らして対応できる方法がないか検討する。

細かい作業が苦手というのもいろいろありますが、例えばレシートの整理だと、整理せずにスキャンして会計ソフトに読み込み、会計ソフトの機能を活用してある程度自動的に整理してもらう、といった方法も考えられます。

そもそもスキャン自体をしたくないという場合も、スキャナーを使っているのであれば、スマホで写真撮影する方法に置き換えられないか、といった方法も選択肢のひとつになるでしょう。

ただ、このあたりの話は全体で見ると枝葉の部分であり、最も大事なのは「経理の流れを整理して見直す」という部分です。

ここをきちんとできていないと

  • やらなくて良い作業をいつまでも続けている
  • もっと簡単な方法があるのに手間のかかるやり方を続けている
  • 便利なソフトやサービスがあるのに知らずに面倒なやり方を続けている

といったことになりかねず、結果的に他の2つの点を改善できない可能性が高くなります。

だからこそ「そんなの自分ではムリ」と感じる方は、専門家に経理処理の流れの見直しを依頼するのもひとつの方法です。

私もお客さまの経理処理を見直す際には

  • 現状を確認して、ムダを省く流れに変える
  • できるだけシンプルなルールにする
  • 作業の負担をできるだけ減らすやり方を考える

といったことを意識して提案するようにしています。

もちろん経理にまつわる作業をゼロにすることはできませんが、苦手な人に難しい仕組みを強いるのは苦行でしかなく、余計に苦手意識を持たれてしまいます。

経理処理が苦痛という方はひとりで悩まずに、外部の専門家に相談することを検討してみてはいかがでしょうか。

投稿者

加藤 博己
加藤 博己加藤博己税理士事務所 所長
大学卒業後、大手上場企業に入社し約19年間経理業務および経営管理業務を幅広く担当。
31歳のとき英国子会社に出向。その後チェコ・日本国内での勤務を経て、38歳のときスロバキア子会社に取締役として出向。30代のうち7年間を欧州で勤務。

40歳のときに会社を退職。その後3年で税理士資格を取得。

中小企業の経営者と数多く接する中で、業務効率化の支援だけではなく、経営者を総合的にサポートするコンサルティング能力の必要性を痛感し、「コンサル型税理士」(経営支援責任者)のスキルを習得。

現在はこのスキルを活かして、売上アップ支援から個人的な悩みの相談まで、幅広く経営者のお困りごとの解決に尽力中。

さらに、商工会議所での講師やWeb媒体を中心とした執筆活動など、税理士業務以外でも幅広く活動を行っている。
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