弥生会計でのインボイス対応を考える際には、入力手段のひとつとしてCSVファイルのインポートは検討しておきたいものです。今回はインボイス対応した弥生会計でCSVファイルをインポートする際の注意点を確認しておきましょう。
目次
効率的な入力にはCSVファイルのインポートは欠かせない
先日、弥生会計でインボイスに対応した入力方法を確認しました。
残念ながらインボイス制度により経理処理時の入力項目は増加します。
こうした状況に対処するため、効率的な入力方法としてCSVファイルのインポートは検討しておきたいものです。
今回は、インボイス制度に対応した弥生会計のバージョン(弥生会計 23 Ver.29.2.1(弥生会計 23R2))以降でのCSVファイルインポート時の注意点を確認しておきましょう。
インボイス対応したCSVファイルをインポートする際の注意点
弥生会計がインボイス対応したことによるインポート用CSVファイルの最も大きな変更点は「税区分」の書き方が変わったことです。
新たに追加された入力項目である「請求書区分」「仕入税額控除」が税区分に取り込まれた形になっています。
この変更によるCSVファイルへの影響を確認します。
なお前提条件として、弥生会計の科目設定において「外注費」に
- インボイス:請求書区分「適格」
- インボイス以外:請求書区分「区分記載」
という補助科目を設定しています。
インポートするデータは
外注費(インボイス以外)/未払金 55,000
外注費(インボイス)/未払金 55,000
とします(データの順番が逆になってしまったことと、貸方を買掛金にしていない点については特に深い意味はありません・・・)。
【1】インボイス対応した税区分データをインポート
まずは基本的なパターンとして、新しい「税区分」を設定したファイルをインポートしてみましょう。
CSVファイル内の「税区分」は次のように設定しています。
インポートしたところ特に問題なく完了しました。
仕訳も問題なく作成されています。
【2】科目設定と異なる請求書区分等を付与したデータをインポート
次に科目設定と異なる税区分を設定をしたデータをインポートしてみましょう。
科目設定とは逆に
- 補助科目:インボイス以外・・・適格
- 補助科目:インボイス・・・区分記載
としたデータをインポートします。
この場合、特に警告メッセージ等が表示されることもなくインポートは完了します。
仕訳としては科目設定を無視してCSVファイル通りに作成されています。
下図の上2行が【1】でインポートしたデータ、下2行が【2】でインポートしたデータです。
【3】「請求書区分」等を付与しないデータをインポート
次に「税区分」を従来の形式で記載したCSVファイルをインポートしてみましょう。
具体的には「税区分」から「適格」「区分80%」の文字を削除します。
このファイルをインポートすると弥生会計から注意を促すメッセージが表示されます。
要するに
「請求書区分」とかがデータに含まれてないから、科目設定に合わせて勝手に設定したよ。間違ってないか自分でチェックしてね。
という意味です。
仕訳を確認すると、確かに科目設定に従って「請求書区分」などが付与されています。
ちなみに同じファイルを2023年9月30日以前の日付の仕訳としてインポートすると同じメッセージが表示されますが、仕訳データとしては科目設定にかかわらず
- 請求書区分:区分記載
- 仕入税額控除:100%
が付与されるようです。
従来の税区分でインポートした方がよい可能性も
今回確認した内容から判断すると、現在の仕様では
- CSVファイルの「請求書区分」が科目設定と一致しなくてもそのままインポートされる
- CSVファイルに「請求書区分」等がなくても科目設定から自動的に付与される
となっているようです。
科目設定と異なる「請求書区分」等であっても科目設定との照合等はされず、警告等もなしにインポートされますので、CSVファイルを作る際に「請求書区分」が間違っていても気付かない可能性があります。
CSVファイルの「請求書区分」のミスに対してチェックがかからないことから考えると、科目設定を事前にしっかりと作り込んだ上で、CSVファイルには「請求書区分」等を付与しない方がミスは起きにくいかもしれません。
その場合、運用方法の例としては
- 補助科目を「請求書区分」ごとに設定する
- CSVファイル作成時には「税区分」は「請求書区分」等を含まない従来のものを使用する
- CSVファイル作成時のインボイスかどうかの判断は補助科目の選択により行う(請求書区分はインポート時に弥生会計に自動的に付与してもらう)
というものが考えられます。
その一方で、CSVファイルに「請求書区分」等を付与して、期末の消費税申告書作成前に補助科目ごとに誤った「請求書区分」がないかチェックした方がいいと考える会社もあるでしょう。
このあたりは会社の経理処理がどのように行われているかにより、適切な運用方法は変わってきます。
今回の記事も参考に、自社にあったミスの起きにくいCSVファイルの作り方を検討していただければと思います。
投稿者
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大学卒業後、大手上場企業に入社し約19年間経理業務および経営管理業務を幅広く担当。
31歳のとき英国子会社に出向。その後チェコ・日本国内での勤務を経て、38歳のときスロバキア子会社に取締役として出向。30代のうち7年間を欧州で勤務。
40歳のときに会社を退職。その後3年で税理士資格を取得。
中小企業の経営者と数多く接する中で、業務効率化の支援だけではなく、経営者を総合的にサポートするコンサルティング能力の必要性を痛感し、「コンサル型税理士」(経営支援責任者)のスキルを習得。
現在はこのスキルを活かして、売上アップ支援から個人的な悩みの相談まで、幅広く経営者のお困りごとの解決に尽力中。
さらに、商工会議所での講師やWeb媒体を中心とした執筆活動など、税理士業務以外でも幅広く活動を行っている。
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