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前回インボイスに対応した会計ソフトへの入力について取り上げましたが、インボイス制度により会計ソフトへの考え方を変える必要があるかもしれません。

経理処理のインボイス対応はメンドクサイ

前回の記事において、弥生会計でのインボイス入力の方法を確認しました。

確認した上での正直な感想は

「作業が増えてメンドクサイ」

しかありません。

インボイス制度が始まると入力項目が増えて経理処理が面倒になる一方で、納税する側にはなにもメリットはありません。

これでは中小企業や個人事業者は大変で実務が回らなくなる恐れがあります。

だからこそ会計ソフトベンダーは

「インボイスが始まると経理が大変、だから少しでも効率化しましょう」

というアピールを様々な場面で行っています。

会計ソフトは「入力するもの」ではなくなる?

経理の効率化といっても、入力項目が増えることについて効率化するのは容易ではありません。

この状況に対して会計ソフトベンダーが提示する解決策は、請求書をAI-OCRなどで読み込みましょうというもの。

例えば弥生会計でいえば

スマート証憑管理

というサービスを利用することで、インボイスの内容を自動的に読み取るという提案がされています。

請求書などをこのサービスに読み込んで、AI-OCRで読み取ったものを会計ソフトに流しこむ。だから大変ではありませんよというスタンスです。

このサービスについては

「これまでは仕訳画面が中心だったが、スマート証憑管理画面がこれからの仕訳入力画面になると思っている」

といった説明もされていて、請求書を見ながら会計ソフトに打ち込むのではなく、スマート証憑管理に読み込んだ請求データを元に会計データを作る形に変えていこうとしているようです。

ただ、まだまだ紙の請求書なども多く残っている状況ではこうしたやり方で効率化できるのかどうか疑問は残ります。

  1. スキャンして読み込み、さらにAI-OCRによる読み取りが正しいかチェックする(さらにその後、会計ソフトにデータを流し込む)
  2. 紙の請求書を見ながら、弥生会計に請求書区分を入力する

という手順を比べた場合に、1の方が断然ラクとは言い切れないわけです。

そうした問題を解決するのが、決められたデータフォーマットで請求書データをやりとりする「デジタルインボイス」という仕組みです。

でも現時点ではほとんど盛り上がっていません。

盛り上がっていないというよりも会計ソフトベンダーがインボイス対応で手一杯で、デジタルインボイスへの対応まで手が回っていないという印象です。

インボイス制度が始まる2023年10月の時点では

  • 請求書をスキャンしてOCRで読み取る
  • デジタルインボイスでデータそのものをやりとりする

といった方法は多くの中小企業や個人事業者が活用するところまで普及しないんじゃないかと思ってます。

とはいえインボイスによる入力負担の増加は確実に生じますので、少しずつ時間をかけてそうした方向に変わっていくのだろうと。

今までは会計ソフトで受け取った請求書を処理する場合には、一部を除いて

「入力する」(CSVファイルのインポートも含めて)

というやり方しかありませんでしたが、請求書データに基づいて会計データを作成するという方向に変わっていくことになるのでしょう。

状況が変わってきたときに

「今まで入力していたから、やり方を変えたくない」

というスタンスでいると効率化の妨げになりかねないので注意しておくべきかと。

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経理を大きく変えるキッカケに

実際のところ

インボイス制度により経理処理が大変になる→だから経理処理を効率化しよう

というのは流れとしてはナットクできない部分もあります。

その一方で、多くの会社や事業者(私も含めてですが)は追い詰められないと大きく変えられないという面があるのも事実です。

先日、来年から税務署が納付書を送ってこなくなるので電子納税を検討しましょうという記事を書きましたが、インボイスによる経理の効率化も同じです。

後ろ向きにばかり捉えていても何も変わりませんので、インボイスへの対応を経理体制を見直して変えるチャンスと考えて上手に活用しましょう。

投稿者

加藤 博己
加藤 博己加藤博己税理士事務所 所長
大学卒業後、大手上場企業に入社し約19年間経理業務および経営管理業務を幅広く担当。
31歳のとき英国子会社に出向。その後チェコ・日本国内での勤務を経て、38歳のときスロバキア子会社に取締役として出向。30代のうち、7年間を欧州で勤務。

40歳のときに会社を退職。その後3年で税理士資格を取得。

中小企業の経営者と数多く接する中で、業務効率化の支援だけではなく、経営者を総合的にサポートするコンサルティング能力の必要性を痛感し、「コンサル型税理士」(経営支援責任者)のスキルを習得。

現在はこのスキルを活かして、売上アップ支援から個人的な悩みの相談まで、幅広く経営者のお困りごとの解決に尽力中。
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