会計ソフトの機能の一つである部門会計。その活用法について確認しておきましょう。
目次
部門会計ってどんな時に使うもの?
格安のものを除けば会計ソフトには「部門」という入力欄があります。
「部門会計」「部門別会計」「部門管理」など言い方はいろいろありますが、この部門を使って数字を管理するために使います。
具体的にどのようなケースで使うかというと
- 複数の事業(部門・事業部など)を行っている場合の事業毎の利益計算
- 部門予算の管理
- 原価計算
といったものが挙げられます。
分けて管理するとなると、イメージとしては会社の中での管理に使うというイメージが強いかもしれません。
個人事業だと部門会計は不要?
個人事業で部門会計を使うケース
部門会計は主には「大きくなったものを分ける」ために使いますが、実際は個人事業であっても使えるケースはあります。
わかりやすい例でいえば
飲食店などで多店舗展開している場合に店舗ごとの収益を管理するために使う
といった会社の中で行う事業や部門別の管理と同じような使い方がまずは考えられます。
他にも個人の場合だと、小売業の他に不動産収入がある場合などは、所得税の計算をする際に事業所得と不動産所得に分ける必要があります。
そのため部門を使って、所得税の計算のために所得税の所得区分ごとに分けるという使い方も考えられます。
収入の種類別の利益の把握にも使える
先ほど挙げた例などは使い途を想像しやすいのですが、他にも活用方法はないのでしょうか。
例えば作家さんの場合、平均課税という特殊な計算方法を使うと所得税が通常の計算方法よりも下がるケースがあります。
この平均課税の対象となるものに「印税」や「原稿料」があるのですが、作家さんの場合は他に講演を依頼されたりして「講演料」をもらっているケースもあるものです。
ところが、残念ながら「講演料」については平均課税という計算方法を適用できません。
もし「原稿料」と「講演料」の両方の収入がある場合には、平均課税を使うには「原稿料」から生じる利益と「講演料」から生じる利益を分けて計算する必要があります。
こうしたケースで「原稿料」と「講演料」を部門として設定することで、それぞれの利益が計算しやすくなります。
結果として、平均課税の計算をスムーズに行うことが可能です。
「部門」という名称に引きずられて
「部門の管理にしか使ってはいけない」
と思い込んでしまうと、活用の幅が狭まってしまいます。
「部門」は数字を分けたいときに使えると理解しておけば、用途は広がるものです。
「部門」と「補助科目」の使い分け
ここまでの説明を聞いて
「分けるだけなら補助科目を使えばいいのでは?」
と考える方もいるかもしれませんが、「部門」と「補助科目」では用途が違います。
補助科目はあくまで一つの科目をさらに細かく分けたい場合に使うものです。
例えば先ほどの「原稿料」と「講演料」の利益をそれぞれ計算するために補助科目を使ってしまうと、各科目の補助科目の残高を再度「原稿料」「講演料」ごとに集計する必要が生じます。
※補助科目をキーとして全体を集計できる機能がある場合を除きます。
一方「補助科目」ではなく「部門」を仕訳に付加しておくことで、こうした科目毎に集計する手間をかけずに済みます。
「部門」と「補助科目」の使い分けについては
- 最終的に全体の数字を分けるのであれば「部門」を使う
- 各勘定科目の内訳を分けたい(例えば租税公課の中の源泉所得税だけを集計したいなど)ときは「補助科目」を使う
という考え方で使い分ければよいでしょう。
経理の仕組みを作っておけば後工程がラクになる
今回は会計ソフトの「部門」を取り上げました。
経理の経験がある方ならよくわかると思うのですが、経理では
「足すのはカンタン」「分けるのはタイヘン」
です。
分かれている数字を集計する作業はそれほど大変ではありませんが、一旦集計してしまったものを必要とされる区分に応じて分けるのは大変な作業です。
だからこそ、必要とされる数字を事前に明確にした上で、経理処理をはじめる前にきちんと仕組みを作っておくことが重要です。
仕組みを作らずに経理を進めて、後になってから分けることに工数をかけるのはムダな作業です。
そうしたムダを省くために使えるツールの一つが、会計ソフトの中の「部門」です。
もし後から手作業で分けている業務があるのなら、「部門」の機能を使えないか一度検討してみませんか。
投稿者
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大学卒業後、大手上場企業に入社し約19年間経理業務および経営管理業務を幅広く担当。
31歳のとき英国子会社に出向。その後チェコ・日本国内での勤務を経て、38歳のときスロバキア子会社に取締役として出向。30代のうち7年間を欧州で勤務。
40歳のときに会社を退職。その後3年で税理士資格を取得。
中小企業の経営者と数多く接する中で、業務効率化の支援だけではなく、経営者を総合的にサポートするコンサルティング能力の必要性を痛感し、「コンサル型税理士」(経営支援責任者)のスキルを習得。
現在はこのスキルを活かして、売上アップ支援から個人的な悩みの相談まで、幅広く経営者のお困りごとの解決に尽力中。
さらに、商工会議所での講師やWeb媒体を中心とした執筆活動など、税理士業務以外でも幅広く活動を行っている。
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