経理処理におけるミスは誰にでも起きうるものです。こうしたミスを「仕組み」を使って防ぐための考え方を確認しておきましょう。

どんなに優秀な人でもミスはする

経理処理をする場合、不慣れな人がミスをすることはよくあります。

上司の方がこまめにチェックしているケースも多いのではないでしょうか。

慣れてきてベテランになってくると「大丈夫だろう」ということでチェックの回数は減るかもしれませんが、どんなに優秀な人でも体調が悪い日があったり、注意力が散漫な日はあるもの。

そうした時にミスは起きてしまうものです。

どんなに仕事に慣れた優秀な方であっても「ついうっかり」というケースはありますので、「あの人に任せておけば大丈夫」という考え方で仕事を進めるのは危険です。

そこで今回は「ミスを起こせない仕組み」について考えてみましょう。

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「ミスを起こせない」仕組みとは

弥生会計という会計ソフトがあります。

このソフトでは仕訳日付の入力欄には月と日しかなく、さらに一つのファイルで3期分の年度を切替えて使う仕様になっています。

起きうるミスとしては

「誤った年度で仕訳を入力してしまう」

というものがあります。

具体例としては

  • 2023年4月20日の仕訳を入力しようとしている
  • 年度が2022年4月-2023年3月となっていることに気付いていない
  • 日付欄に「4/20」と入力して仕訳を登録
  • 結果的に「2022年4月20日」の仕訳として登録される

というミスです。

実際に私もこうしたミスをしたことがあります。

なぜこうしたミスが起きるかというと、決算処理は翌年度の初めに行いますが、翌年度になると当然翌年度の経理処理も並行して行う必要があります。

そのため決算が終わる前に翌年度への繰越処理を行い、今年度と翌年度を行ったり来たりしながら経理処理を行うことがあることが原因です。

そこで、こうしたミスを防ぐための機能として「入力制限」という機能があります。

具体的な設定方法は、メニューの「設定」-「帳簿・伝票設定」を選んだ後に「入力制限」タブをクリックします。

「仕訳の入力を制限する」にチェックを入れて、仕訳入力をできないようにする年度の最終日(今回の例では「2023/03/31」)を入力してOKをクリックすれば設定できます。

この設定をした後に、2023年3月までの年度を選んだ状態で仕訳を入力しようとすると・・・

『「仕訳の入力制限」により入力が制限されています』

というメッセージが表示されて仕訳を登録できません。

こうしておけば、誤って2022年4月20日」の仕訳を登録してしまうミスを防ぐことができます。

「前年度の経理処理が完了したら入力制限を設定する」というタスクを忘れずに実行できればミスを防げるのです。

というわけで「よかったよかった、メデタシメデタシ」といいたいところですが、実は弥生会計では年度を繰越す際に自動的に入力制限はかかりません。

また自動制限を設定するか確認するメッセージなども表示されません。

そのため年度誤りの入力ミスを防ぐためには

「入力制限を設定する」

というタスクを忘れずに行うための「仕組み」も別途必要となる点に注意が必要です。

この点についてはタスク管理ソフトなどで定期的にリマインダーを出すといった工夫をするしかありません。

本当に仕組みでミスを防ごうとするのであれば、ソフトの仕様にまで踏み込む必要があります(自社開発ソフトではないので要望することしかできませんが)。

今回の例でいえば

繰越時に自動的に入力制限をかけて、前年度に戻って処理したいときは自ら入力制限を外してもらう

というのが一つの方法として考えられます。

本来入力できない年度に入力している点を意識してもらうということです。

さらにいえば、日付入力欄を「月日」ではなく「年月日」を入力するように変更してしまえばそもそも今回のような問題は起きません。

2023年3月までの年度を選択した状態で、「2023/04/20」という日付を入力して登録しようとすれば当然エラーとなります。

このように「どうやってもミスが起きない」というところまで作り込んでいくのがミスを防ぐ上での仕組み作りとしては理想的です。

実際にはコストとの兼ね合いでどこまでやるべきかは変わってきますし、今回のように自分のところで変えられない点もあり理想的な状態までもっていくのは難しいことが多いです。

ですが「理想としてはこうあるべき」という点は意識しておくべきでしょう。

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ミスが起きうる仕組みを問題にすべき

組織で仕事をしていると、ミスを報告してきた部下に対して

「なぜそんなミスをしたんだ?!」

とつい言ってしまうこともあるのではないでしょうか。

理想をいえばミスをリカバーした後に

「ミスが起きた原因は?仕組みをどう変えれば防げるのか?」

という点をきちんと考えられる環境にしたいものです。

ミスした人が悪いのではなく、ミスが起きるような仕組みになっていることが問題。

誰だってミスはしますし、ミスをしたくてする人はいません。

だからこそ「ミスを起こせない」仕組みを目指してみませんか。

投稿者

加藤 博己
加藤 博己加藤博己税理士事務所 所長
大学卒業後、大手上場企業に入社し約19年間経理業務および経営管理業務を幅広く担当。
31歳のとき英国子会社に出向。その後チェコ・日本国内での勤務を経て、38歳のときスロバキア子会社に取締役として出向。30代のうち7年間を欧州で勤務。

40歳のときに会社を退職。その後3年で税理士資格を取得。

中小企業の経営者と数多く接する中で、業務効率化の支援だけではなく、経営者を総合的にサポートするコンサルティング能力の必要性を痛感し、「コンサル型税理士」(経営支援責任者)のスキルを習得。

現在はこのスキルを活かして、売上アップ支援から個人的な悩みの相談まで、幅広く経営者のお困りごとの解決に尽力中。

さらに、商工会議所での講師やWeb媒体を中心とした執筆活動など、税理士業務以外でも幅広く活動を行っている。
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