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RPAのひとつであるMicrosoftのPower Automate Desktop(以下「PAD」)に関連する書籍も増えてきて、RPAを学びやすい環境が整ってきたと感じています。が、あえて今回は「RPAってカンタンじゃないですよ」ということをお話したいと思います。

PAD関連の書籍が増えてきました

PADについての解説本が出ると、目を通すようにしています。

今年に入ってからは以下の3冊を読みました(気付いてないだけで他にも出版されているのかもしれませんが)。

できるPower Automate Desktop ノーコードで実現するはじめてのRPA (できるシリーズ)

はじめてのPower Automate Desktop―無料&ノーコードRPAではじめる業務自動化

Microsoft Power Automate かんたん活用ガイド

※最後の書籍はタイトルが「Power Automate」となっていますが、内容の半分以上はPADについて解説した本となっています。

半年前には解説本がほぼ皆無であり、ネットで情報を検索しながら使い方を学んでいたことを考えると、未経験者の方が学び始める環境が整ってきたと感じています。

「RPA」という言葉、一時期に比べると耳にする機会が減ってきたように感じますが、単なる流行語としての時期は過ぎ、活用する方が本気で使うという段階に入っているのでしょう。

RPAといえば、

「カンタンにパソコンでの作業を自動化できます」

「プログラム書けなくてもすぐに使えます」

「○○時間の作業時間を短縮することができます」

といった説明を聞くことが多いのですが、単純に鵜呑みにするのは危険です。

Excelで表や基本的な関数だけ利用するレベルの方に勧めたとしても、いきなり使いこなせることはまずありません。

では、いきなり使いこなせない具体的な理由は何か?

今回は、この点について整理しておきましょう。

RPAがカンタンとは言い切れない理由

RPAがカンタンとは言い切れない最大の理由、それは

「カンタンにできる≠プログラミング知識が不要」

という点に尽きます。

「でもRPAならレコーディング機能があるから、操作をそのまま記録すればいいだけでしょ?」

という意見があるかもしれませんが、例えば極端な例ですが、画面上のボタンを何度(例えば100回)も押す操作があったとします。

この自動化をするために、ボタンを100回押す操作を実際にやって記録するのはよい方法とは言えません。

毎回押す回数が100回であれば、レコーディング機能で1度だけ100回の操作を記録する方法も使えますが、処理の度に押す回数が「90回」になったり「105回」になるような処理だと、この方法では自動化できません。

こうした繰り返す処理を自動化するには、Loopなどの「繰り返し処理」についてどうしても学ぶ必要があります。

さらに、回数が「100回」なのか「90回」なのか、それとも「105回」なのかという「判断」が必要となりますので、IFなどを使った「条件分岐」という処理も学ばないと自動化ができないわけです。

このようにプログラミングに関する知識が一切ないままレコーディング機能だけでRPAによる自動化を進めると、すぐにできないことだらけになってしまいます。

次に、RPAがカンタンとはいえない理由として、

「業務をきちんとフローに落とし込む能力が欠かせない」

という点も挙げられます。

先ほどのボタンを何度も押すような業務があったとして、これをRPAで自動化しようとすると

  1. ボタンを押す回数を判断する条件を明確にする
  2. 1の条件に基づき、ボタンを押す回数を確定する
  3. 2で確定した回数だけ実際にボタンを押す

という流れを言葉や図で整理する必要があります。

「とにかくボタンを何回もたくさん押さないといけないんです」という説明では、RPAに代わりに作業してもらうことはできません。

業務の流れをきちんと言葉や図に落とし込んで、さらにそれをRPAが理解できる方法で書くという作業はRPAを利用する上で欠かせません。

なんとなく業務を理解したまま、とりあえずすぐできるレコーディング機能で自動化する、という手法では事前に期待していたような自動化を実現することは難しいでしょう。

最後に、「意外とメンテナンスに時間がかかる」という点も注意しておく必要があります。

例えばWebサービスへの入力作業を自動化した場合など、Webサービスの入力画面が変更された場合などは、RPA側の修正・メンテナンスは必ず必要となります。

画面の見た目は変っていなくても、プログラム等が変更されている場合などもあり、RPA側の修正・メンテナンスは想像する以上に多いこともRPAがカンタンとは言い切れない理由の一つとなります。


このようにRPAを使うには注意すべき点がいくつかあります。

安易に始めてしまうと「期待していたのと全然違う、RPAは使いものにならない」という結論になってしまい、活用できずに終わってしまうでしょう。

だからこそ「プログラムできなくてもすぐに使えます」という言葉を鵜呑みにせず、本当に自社で活用できるか十分に検討した上で導入を判断いただく必要があります。

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それでもRPAをオススメする理由

「RPAって巷で言われているほどカンタンじゃないですよ」という理由を挙げてみましたが、「ではRPAは導入するべきではないのか?」というとそうは思いません。

「100回ボタンを押す」という作業は極端な例かもしれませんが、1週間や1ヶ月の単位では、同様の作業をしているケースは結構あるのではないでしょうか。

こうした作業をなくすためには、理想をいえば業務フローを見直して、システムやツールも適切なものに入替えるべきですがが、なかなかそこまでできない会社も多いはず。

そんなときRPAであれば、現状のシステムやツールはそのままで人が行う作業部分だけを自動化することができます。

最初は作業時間の短縮よりも作る時間の方が長くなってしまいますが、使い続けて慣れていけば作る時間は確実に短くなっていきます。

またRPAは導入するツールによって使い勝手やサポート体制など様々な違いがあります。

最初にご紹介したPADは無料で始められるものの、サポートはありませんので自分で使い方を学んでいく必要がありますが、書籍などが増えてきたこともあり、RPAを体験するために最初に使ってみるにはちょうどよいツールです。

「RPAって気にはなってるけど自社でも使えるんだろうか?」とお考えであれば、一度試してみてはいかがでしょうか。

投稿者

加藤 博己
加藤 博己加藤博己税理士事務所 所長
大学卒業後、大手上場企業に入社し約19年間経理業務および経営管理業務を幅広く担当。
31歳のとき英国子会社に出向。その後チェコ・日本国内での勤務を経て、38歳のときスロバキア子会社に取締役として出向。30代のうち7年間を欧州で勤務。

40歳のときに会社を退職。その後3年で税理士資格を取得。

中小企業の経営者と数多く接する中で、業務効率化の支援だけではなく、経営者を総合的にサポートするコンサルティング能力の必要性を痛感し、「コンサル型税理士」(経営支援責任者)のスキルを習得。

現在はこのスキルを活かして、売上アップ支援から個人的な悩みの相談まで、幅広く経営者のお困りごとの解決に尽力中。

さらに、商工会議所での講師やWeb媒体を中心とした執筆活動など、税理士業務以外でも幅広く活動を行っている。
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