先日Power Automate Desktop(以下、「PAD」)を使っていて、「’暗号化された値’である必要があります」というエラーメッセージに遭遇し、解決に少し手間取りました。原因は初歩的なミスでしたが、同じミスで悩んでいる方がいるもしれませんので、まとめておきます。
目次
ファイル名がわからなくてもファイルを扱える「フォルダー内のファイルを取得」アクション
「特定のフォルダに保存したPDFファイルを、Webサービスに自動的にアップロードする」といったワークフローをPADで作る場合、ファイル名が一定でなければ、「フォルダー内のファイルを取得」というアクションを使います。
このアクションを使ってフォルダ内のファイル名を取得する処理については、以前にも取り上げました。
ファイル名が不明でもファイルを扱うことができますので、とても便利で使用する機会も多いアクションではないでしょうか。
ところが、今回このアクションを使おうとして、思いもかけないエラーメッセージに遭遇しました。
「暗号化された値’である必要があります」というエラーが出る具体的な状況は?
遭遇したエラーメッセージとは、
「パラメーター’送信するテキスト’:引数’TextToSend’は’暗号化された値’である必要があります。」
というものです。
このメッセージを読んでも、具体的に何が問題なのかさっぱりわかりません。
エラーを再現するために、以下の作業を自動化するワークフローを作成してみましょう。
- Cドライブにあるテストフォルダ内のPDFファイルを取得する(今回はファイルを1つのみ保存)
- メモ帳を起動する
- 1で取得したファイル名とパスをメモ帳に書き込む
順番にアクションを確認していきます。
最初に先ほどもご紹介した「フォルダー内のファイルを取得」アクションを使用します。
フォルダーに「C:\テスト」を指定して、PDFファイルだけを対象とするよう、ファイルフィルターに「*.pdf」と入力します。
このアクションにより、フォルダー内のファイル名は「Files」という変数に入ります。

次に、メモ帳を起動します。
「アプリケーションの実行」というアクションを選んで、notepad.exeというファイル名が保存されている場所をアプリケーションパス欄で指定します。

最後に、Filesという変数に入っている内容をメモ帳に書き込むために、「キーの送信」というアクションを使用します。

「送信するテキスト」欄の「テキスト、変数、または式として入力します」の右横にある{x}をクリックして、「Files」を選びます。

この状態で、「保存」をクリックすると…、

先ほどご紹介したエラーが起きます。
このエラーが起きる理由ですが、結論から言えば、「キーの送信」アクションで「Files」を指定する際に「%Files[0]%」ではなく、「%Files%」としてしまったためです。
「フォルダー内のファイルを取得」アクションについての説明をMicrosoftのサイトで確認してみると、「生成された変数」の型についての説明に「ファイルの一覧」と書いてあります。

「一覧」ということですから、「複数のファイルがある」という前提でPADは指示を待っていると考えられます。
そのため「Files」という変数に入っている「ファイルの一覧」の「何番目」かということをきちんと指示してあげないと、PAD側で何をしてよいかわからずにエラーになってしまう、ということのようです。
今回の例ではFilesに入っているリストは1つのみです。
こうしたケースでは0から数えていきますので、1番目のファイルを指示する場合には、「Files[0]」と書く必要があります。
改めて先ほどの「キーの送信」アクションを開くと、このような状態になっています。

「%Files%」の部分を「%Files[0]%」に修正すると、赤文字のエラーは消えます。

完成したワークフローは次のとおり。

これを実行してみると…

メモ帳に、テストフォルダ内のPDFファイル名を書き出すことができました。
エラーメッセージに惑わされないように
今回のエラーに遭遇した際には、もともと、
- 特定のフォルダーにファイルを1つしか保存しない
- そのファイルをWebサービスにアップロードする
という処理をつくろうとしていました。
そのため、「何番目のファイルか指定しなくても当然わかるだろう」という先入観があり、解決するまで少し時間がかかってしまいました。
そもそもは私の理解不足から来ているのですが、それにしても、
「’暗号化された値’である必要があります」
というエラーメッセージは、もう少しなんとかならないかな、と思います。
このメッセージ見たときは、
「PADに文字列を暗号化する処理ってあったっけ???」
という感じで、軽くパニックに…。
PADに限りませんが、パソコンやスマホ関係のエラーメッセージは、わかりにくいものが多いです。
エラーメッセージが解決のためのヒントをくれるケースもありますが、こうしたエラーに遭遇したときは、エラーメッセージの内容にこだわりすぎず、考えられるミスを冷静に確認していきましょう。
このような初歩的なエラーで悩んでいる方は多くないかもしれませんが、どこで躓くかは人それぞれ。
誰かの役に立つかもしれませんので、事例のひとつとしてまとめておきました。
投稿者

- 加藤博己税理士事務所 所長
-
大学卒業後、大手上場企業に入社し約19年間経理業務および経営管理業務を幅広く担当。
31歳のとき英国子会社に出向。その後チェコ・日本国内での勤務を経て、38歳のときスロバキア子会社に取締役として出向。30代のうち7年間を欧州で勤務。
40歳のときに会社を退職。その後3年で税理士資格を取得。
中小企業の経営者と数多く接する中で、業務効率化の支援だけではなく、経営者を総合的にサポートするコンサルティング能力の必要性を痛感し、「コンサル型税理士」(経営支援責任者)のスキルを習得。
現在はこのスキルを活かして、売上アップ支援から個人的な悩みの相談まで、幅広く経営者のお困りごとの解決に尽力中。
さらに、商工会議所での講師やWeb媒体を中心とした執筆活動など、税理士業務以外でも幅広く活動を行っている。
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