電子帳簿保存法への対応で悩ましい問題のひとつが「検索要件」です。今回はWindowsの標準的な機能では対応できない理由を確認しておきましょう。
目次
電子帳簿保存法対応が悩ましい原因のひとつは「検索要件」
前回の記事で、電子取引の電子データを保存する際のフォルダ構成等について考えてみましたが、こうした検討が必要となる原因は電子帳簿保存法が求める「検索要件」にあります。
前回の繰り返しになりますが、「検索要件」として求められているのは、
(1)取引年月日その他の日付、取引金額及び取引先を検索の条件として設定することができること。
(2) 日付又は金額に係る記録項目については、その範囲を指定して条件を設定することができること。
(3) 二以上の任意の記録項目を組み合わせて条件を設定することができること。
の3点(ただし、税務調査の際にダウンロードしてまとめてデータを渡せるのであれば、(2)(3)は不要)。
PDFファイルをパソコンやサーバー内のフォルダに保存するだけでは、なぜこれらの要件を満たすことができないのか、今回改めて確認しておきましょう。
Windowsの標準機能でどこまで検索できるか?
Windows標準の検索機能でどこまで対応できるか確認するために、「202203」というフォルダに複数のPDFファイルを準備しました。
ファイル名は国税庁が電子帳簿保存法Q&Aの中で例示している形式としていますが、それぞれのファイル内にはデータは一切なく、空白となっています。
ただし、一つだけWordで”ABC”と入力してからPDFファイルとして保存した「サンプルファイル」というファイルを混ぜています。
では、これらのサンプルに対して、上記「検索要件」をどこまで満たせるか、順番に確認していきましょう。
(1)取引年月日や取引先名等で検索ができるか?
Windowsのフォルダ内を検索したい場合には、フォルダを開いたときに右上に表示される「(フォルダ名)の検索」に検索したい文字列等を入力します。
例えば、(株)ABCのデータだけ検索したい場合、”ABC”(入力時は””は不要。以下同じ。)と入力して検索してみましょう。
ファイル名に”ABC”を含むファイルが表示されていますが、本文に”ABC”を含む「サンプルファイル」も検索結果として表示されてしまいました。
Windowsの検索機能で「ファイル名」だけを対象として検索したい場合には、「名前:(検索したい文字列)」とする必要があります。
改めて、”名前:ABC”で検索してみると・・・
となり、ファイル名に”ABC”を含むものだけ検索することができました。
このように検索要件(1)については、要件を満たしていると言えそうです。
(2)日付・金額について範囲指定検索ができるか?
結論からいえば、Windowsの検索機能では、ファイル名に対して範囲指定検索することができません。
いろいろと調べてみたのですが、特に金額の範囲指定をする方法を見つけることができませんでした。
日付については、ファイル名に含まれる情報について、「○月○日から△月△日まで」という検索はできませんが、例えば「2022年1月」といったように月別の指定であれば”名前:202201″と検索すれば、
となり、検索は可能です。
(3)二以上の条件を組み合わせて検索できるか?
複数の条件で検索したい場合には、”AND”を使えば検索できます。
例えば、2022年3月の(株)国税商事の25万円のファイルを探したい場合。
“名前:202203 AND 国税商事 AND 250000″と入力して検索してみると・・・
となり、複数条件に合致する検索も可能です。
Windows標準の機能であっても、検索要件(3)への対応もできそうです。
検索要件の3つの条件をWindowsの標準機能で満たせるか確認しましたが、結論としては(2)の範囲指定ができないという点が問題となります。
税務調査時にダウンロードしてまるごとデータを渡せるのであれば、この点は満たせなくても問題はありませんが、何らかの事情で「ダウンロードに応じたくない」ということであれば、別方法であるExcel等での索引簿の作成が必要となります。
電子取引データの保存方法については、
- ファイル名に取引日等を含める方法
- ファイル名は連番で別途索引簿を作成する方法
のどちらも認められていますので、会社の状況に応じてどちらを選択するかご検討いただければと思います。
クラウドサービスでのデータ保存だとどこまで対応できるか?
ここまで読んで「Windowsの検索機能が弱いだけで、クラウドのドライブに保存すれば対応できるんじゃないの?」と思われた方もいるかもしれません。
試しにGoogleドライブで試してみたのですが、
- Windowsと同じく、ファイル名に含まれる日付・金額を範囲指定して検索できない
- 数字の部分的な検索ができない
という状況でした。
先ほどと同じファイル(サンプルファイルを除く)をGoogleドライブに保存して、検索してみましょう。
なお、Googleドライブで特定のフォルダのみ検索したい場合には、フォルダを表示した状態で右クリックして、『「○○」内を検索』をクリックします。
2022年3月18日の(株)国税商事のファイルを検索したいので、”20220318 国税商事”で検索してみると…
と正しく検索されるのですが、”202203 国税商事”と日付を省略した形で検索すると、
なぜか検索結果が正しく表示されません。
試しに”202203″だけで検索してみても、
となり、やはり検索結果なしとなってしまいます。
(Googleドライブ内で数字の部分的な検索がきちんと機能しない原因については調べてもわかりませんでした・・・。)
結論としては、現状では索引簿を作成せずにWindowsやGoogleドライブの機能だけで国税庁が求める「検索要件」を満たすことは難しいということになります。
電子帳簿保存法で求められる「検索要件」について、Windowsの標準機能では何が問題となるのか確認をしました。
電子帳簿保存法の対応を検討される上で、今回の記事が参考になれば幸いです。
投稿者
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大学卒業後、大手上場企業に入社し約19年間経理業務および経営管理業務を幅広く担当。
31歳のとき英国子会社に出向。その後チェコ・日本国内での勤務を経て、38歳のときスロバキア子会社に取締役として出向。30代のうち7年間を欧州で勤務。
40歳のときに会社を退職。その後3年で税理士資格を取得。
中小企業の経営者と数多く接する中で、業務効率化の支援だけではなく、経営者を総合的にサポートするコンサルティング能力の必要性を痛感し、「コンサル型税理士」(経営支援責任者)のスキルを習得。
現在はこのスキルを活かして、売上アップ支援から個人的な悩みの相談まで、幅広く経営者のお困りごとの解決に尽力中。
さらに、商工会議所での講師やWeb媒体を中心とした執筆活動など、税理士業務以外でも幅広く活動を行っている。
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