会計ソフト「摘要」欄は、一定のルールに従って入力されていますか?摘要の表記がバラバラになることで生じる問題や対策について、今回は考えてみたいと思います。

会計ソフトの摘要とは

会計ソフトの「摘要」とは、言葉そのものですが、会計ソフト内の「摘要」という欄に入力するものです。

具体的には、例えば材料を株式会社A商事から仕入れたケースであれば

材料仕入 (株)A商事

といった形式で記入します。

要するに、その取引の内容がわかるように、詳細を書いておく欄と理解してもらえればよいでしょう。

消費税を原則課税で申告しているケースなどでは、仕入税額控除を受けるために必要な帳簿の記載事項として

  • 課税仕入れの相手方の氏名または名称(要するに取引先名)
  • 課税仕入れに係る資産または役務の内容(要するに購入したものやサービスの内容)

が挙げられていますので、摘要もおろそかにすべきではありません。

では、摘要の表記が「揺れる」とはどういうことでしょうか。

先ほどの例でいえば、月ごとに

材料仕入 (株)A商事
材料仕入れ カ)エーショウジ
材料 A商事

といった具合に、同じ取引内容なのに、書き方が微妙に異なることを指します。

こうした表記の揺れがあると何が困るかといいますと、帳簿を見たときに同じ会社や取引内容かわかりにくいということもありますが、それ以上に会計データをあとで分析用のデータとして活用する際に困ることになります。

広告

摘要の表記揺れを防ぐための対策は?

こうした摘要の表記揺れを防ぐために、とりうる対応を3つ確認しておきましょう。

【1】会計ソフト入力時のルール設定

ひとつの方法として、会計事務所や会社の経理部内で、入力の際のルールを決めておくという方法があります。

例えば

  • カナや英字を入力するときはすべて半角にする
  • 会社名はカナではなく漢字で書く

といったものです。

ただ、この方法は入力する人がルールを守らないとうまく機能しません。

当然、ルールを守らない(忘れてしまっている)ケースは出てきますし、特に新しい方が入力することになると、間違えることが増えるでしょう。

【2】基礎データをExcelで作成+リストから選択

会計データへの入力をCSVファイルのインポートで行っている場合、その基礎データはExcelやGoogleスプレッドシートで作成することが多いのではないでしょうか。

こうしたケースでは、入力用の基礎データを作成する際に、例えば取引先については、事前にExcel内などで設定した項目からのみ選択するようにすれば、少なくとも取引先については、表記の揺れが起きることはありません。

※Excelでのドロップダウンリストの設定については、こちらの記事などを参照ください。

Excelで隣のセルに応じてドロップダウンリストの項目を変えたいとき、ひとつずつ範囲に名前をつけていませんか?

ただ、この方法も、新規取引先が出てくるごとに、Excelファイル内の取引先マスターをメンテする必要があり、取引先の変更が多いケースでは、運用するのは結構大変です。

【3】自動仕訳ルールを活用

会計ソフトごとに機能は微妙に異なりますが、「自動仕訳ルール」と呼ばれる、通帳などの摘要から仕訳を自動的に設定できる機能があります。

この機能の中で、あらかじめ取引先などを摘要欄に登録しておけば、摘要の揺れを防ぐことは可能です。

手間としてはこれが最もかからないのですが、使っている会計ソフトの機能に依存するため、使えないケースもあるでしょう。


実際には、どれかひとつで防ぐというよりも、入力方法などに合わせて、【1】~【3】のやり方を組み合わせて対応するのが現実的だといえます。

広告

「補助科目で十分じゃないの?」とは言えない理由

今回の話は、会計データを経営分析用に使用するという前提でまとめています。

簡単な例でいえば、今期において、A商事からの仕入はいくらかといったことを知りたいケース。

仕入を別のシステムで管理していれば、わざわざ会計データを分析する必要はありませんが、そうした会社ばかりとは限りません。

また、上記のような目的であれば

「買掛金に補助科目を設定すれば済む話では」

と考える方もいるかもしれませんが

「実は事情があって、買掛金以外に、未払金で計上しているものもあって・・・」

となると集計した数字にモレが生じます。

会計ソフトの補助科目は、一般的には勘定科目に紐ついているため、科目横断的な分析は苦手です。このあたりは取引先をタグで管理しているfreeeだと、機能として強いといえます。

ただ、freeeであっても、取引先タグが

  • (株)A商事
  • カ)エーショウジ
  • A商事

といった具合に、同じ会社で複数の登録をしてしまうと、正しく集計できないことに変わりありません。そのため、摘要の表記揺れを防ぐという考え方は、やはり大事だといえます。

データとして活用しようとする場合、元データがキレイに作られていると、その後の作業はスムーズに進みます。

会計データを使って分析をするというケースでは、摘要の表記揺れを防ぐことも

「キレイなデータを作る」

ことにつながっています。

帳簿上の摘要の表記がバラバラになっていないか確認するとともに、表記揺れを防ぐための対策を検討してみてはいかがでしょうか。

投稿者

加藤 博己
加藤 博己加藤博己税理士事務所 所長
大学卒業後、大手上場企業に入社し約19年間経理業務および経営管理業務を幅広く担当。
31歳のとき英国子会社に出向。その後チェコ・日本国内での勤務を経て、38歳のときスロバキア子会社に取締役として出向。30代のうち7年間を欧州で勤務。

40歳のときに会社を退職。その後3年で税理士資格を取得。

中小企業の経営者と数多く接する中で、業務効率化の支援だけではなく、経営者を総合的にサポートするコンサルティング能力の必要性を痛感し、「コンサル型税理士」(経営支援責任者)のスキルを習得。

現在はこのスキルを活かして、売上アップ支援から個人的な悩みの相談まで、幅広く経営者のお困りごとの解決に尽力中。

さらに、商工会議所での講師やWeb媒体を中心とした執筆活動など、税理士業務以外でも幅広く活動を行っている。
広告