ブログにお越しいただく方の検索キーワードを眺めていると、「通帳」という単語が結構出てきます。通帳のデータ化に悩んでいる方のために、データ化の方法をまとめておきます。

通帳のデータ化で困っている人は意外と多い?

ブログへの流入キーワードを確認していると、

「通帳」+「CSV化」、「データ化」、「OCR」、「スキャン」

といった組み合わせが結構出てくることに気付きました。

紙の通帳から会計ソフトへ効率的に仕訳入力するための方法を探して、検索されていると想像しますが、ネットバンキングやSTREAMEDなどのデータ化サービスが増えてきたなかで、こうした検索キーワードは少し意外だなと感じています。

ネットバンキング等を使わない理由として考えられるのは、

  • ネットバンキングの手数料を支払うメリットが感じられない
  • ネットバンキングはセキュリティに不安がある
  • データ化サービスはコストが高い

といったところではないかと。

うまく使えばコスト以上のメリットがあるのですが、組織の中ではなかなか思うように変えられないケースもあるでしょうから、そうした場合にどのような代替案があるか、整理しておきたいと思います。

紙の通帳をデータ化して会計ソフトに入力する方法

1.通帳を見ながら手入力

「仕事の仕組みを変えたくない」、「サービスにお金を払いたくない」、となってしまうと、採りうる方法は、最も原始的な「手入力」になります。

そもそもこの方法では、「データ化」をすっ飛ばして仕訳データを作成しているわけですから、今回の主旨にも合いません。

また、これは結局人件費という形でコストがかかるわけですから、人手不足のご時世からすれば、よい方法ではないでしょう。

2.スキャナーで通帳を読み込んでOCRでCSVデータにする

次に考えられるのが、通帳をスキャナーで読み込んで、OCR処理をしてCSVデータ化するという方法です。

結論から言えば、これも個人的にはおすすめできません。

理由としては、

  • 通帳のレイアウトが金融機関ごとに異なること
  • OCRの精度が改善されているとはいえ、どうしても手直しが発生すること

が挙げられます。

もともとスキャナーやOCRソフトがあれば別ですが、このために導入するくらいであれば、ネットバンキングの利用手数料として支払った方がはるかに生産的です。

3.STREAMEDなどのデータ化サービスを利用する

コストはかかりますが、ひとつの方法としてデータ化サービスも挙げておきます。

例としてSTREAMEDを挙げますが、通帳をスキャンしてデータを送れば、データ化してくれて、さらに会計ソフトに合わせた形のCSVデータを作成することができます。

STREAMED(ストリームド) | スキャンするだけ、翌日データ化

仮にOCRで通帳をCSVデータ化できたとしても、そのあとに各会計ソフトに合わせたインポート用のデータに作り替える必要がありますが、STREAMEDを使えば、会計ソフト用のインポートデータを作成する手間を省略できます

また仕訳作成についても、学習機能がありますので、摘要がきちんと表示される取引が多ければ、かなり効率的に仕訳作成作業を行えます。
(学習機能は、クラウド会計と比較すると少し弱い部分もありますが)

逆に言えば、通帳から現金を頻繁に引き出して支払ったり、小切手での支払が多い場合は、思ったほど効率的に仕訳作成ができない可能性があります。

あと問題はコストです。20円/仕訳(会計事務所の場合)を高いとみるか、安いとみるか。ここは環境によって異なってくるでしょう。

4.通帳の日付・金額・摘要だけExcelに手入力してクラウド会計に取込む

外部サービスにお金を支払いたくない、でも入力作業は効率化したいという場合に使えるのがこの方法です。

クラウド会計を使っていることが前提となりますが、通帳を直接会計ソフトに入力するのではなく、日付・金額・摘要のみをクラウド会計が指定するフォーマットに入力して、取引データとしてインポートします。

データの作成方法については、下記リンク先をご参照ください。

エクセルに手入力した取引明細をインポートする | マネーフォワード クラウド会計

freeeに手動でアップロードする明細を用意する

クラウド会計に取引データをインポートしたあとに、初回は自動仕訳ルールを登録する必要がありますが、翌月以降は自動仕訳ルールに基づいて仕訳が作成されるため、かなり入力作業を効率化することができます。

通帳の量が多いのであれば、Excelへのデータ入力だけ短期アルバイトで対応するといったことも検討できます。

仕訳の入力だと、勘定科目の判定等が必要となるため、誰でもできるわけではありませんが、Excelへの入力であれば、Excelに入力するスキルがあれば十分ですので、仕事を切り分けすることも可能となります。

通帳を自分でExcelに入力するという手間はありますが、個人的には、この方法をおすすめします。

どの方法を採るかは経営判断、でも時代の流れには合わせていくべき

ネットバンキングが使えないなどの制約があるなかで、入力効率を上げるために使えそうな方法をまとめてみました。

どの方法がベストかは会社や会計事務所の状況によりますので、現状に合わせてその中でベストな方法をとるか、成功事例等を参考にそうした方法を導入して仕事の流れを変えていくか、ここは経営判断になります。

ただそうはいっても、やはり時代の変化に合わせて仕事の仕方は変えていくべきでしょう。

今や試算表や総勘定元帳を手書きで作る方がほとんどいないように、仕事のやり方は時代とともに変わってきます。経理処理についてもその例外ではありません。

今までのやり方を変えることは、大変ですし、疲れますし、周りの反発を招くこともあるかもしれません。それでも変えるべきところは変えていかないと、将来的に取り残されてしまう可能性が高くなります。

今回最後に取り上げた方法は、そこまで大きな変化ではないと思いますので、できそうなところから是非試してみていただければ。

投稿者

加藤 博己
加藤 博己加藤博己税理士事務所 所長
大学卒業後、大手上場企業に入社し約19年間経理業務および経営管理業務を幅広く担当。
31歳のとき英国子会社に出向。その後チェコ・日本国内での勤務を経て、38歳のときスロバキア子会社に取締役として出向。30代のうち、7年間を欧州で勤務。

40歳のときに会社を退職。その後3年で税理士資格を取得。

中小企業の経営者と数多く接する中で、業務効率化の支援だけではなく、経営者を総合的にサポートするコンサルティング能力の必要性を痛感し、「コンサル型税理士」(経営支援責任者)のスキルを習得。

現在はこのスキルを活かして、売上アップ支援から個人的な悩みの相談まで、幅広く経営者のお困りごとの解決に尽力中。