所得税の確定申告を「いつ」依頼するかについては、依頼者の方と税理士との間でそれなりのギャップがあると感じています。このギャップについて今回は取り上げてみます。
「年が明けたら税理士を探そう」
今年も残り1週間を切りましたが、2024年の収入等について所得税の確定申告が必要な方の中には
「年が明けたら税理士を探そう」
と考えている方もいるかもしれません。
通常であれば所得税の確定申告は2月16日から3月15日。2月半ばに始まるんだから、「1月から探せば十分」という考え方でしょう。
とはいえ、私も含めて税理士は確定申告時期が始まってから所得税の確定申告対応をはじめているわけではありません。
最近では、この時期に既に今年の分の確定申告の受付を終了している税理士の方もいます。
確定申告の依頼時期については、ご依頼者様と税理士との間で感覚のギャップが意外と大きいと感じていますので、今回はこの点について少し書いておきます。
ご依頼を受けてから税理士がやらなければならないこと
新規でご依頼を受ける場合に、税理士側ではその方について必要となる情報が不足しています。
そのため状況の整理を行う必要があり、具体的には次のようなものがあります。
- 前年の申告内容の確認(どのような内容の申告をしているか。そもそも前年の申告内容におかしな点がないかなど)
- 電子申告しているかどうか。してなければ電子申告用の利用者識別番号を新たに取得。
- 事業所得や不動産所得の場合は、記帳状況の確認。記帳ができていないもしくは内容的に不十分な場合は1年分の記帳を短期間に行う必要あり。
- 今回の申告で、前年と異なる特殊な取引がないかの確認。
- どのような納税方法に対応できるか。電子納税に対応できない方であれば納付書の手配など。
ザッと思いつくままに挙げてみましたが、すぐに思いつくだけでもこれくらいの確認・チェック・対応が必要となります。
毎年定期的にご依頼いただく方や顧問契約をしている方の場合、これらの内容については事前にある程度終わっていますが、それでも年が明けてから一定の業務量は発生します。
しかも所得税については、当然ながらすべての方の期限が同じです。また法人顧問の仕事も当然ありますので、12月や1月が決算月の対応も同時進行で行わなければなりません。
こうした状況で新たに仕事を請け負って
「仕事が増えたので業務がパンクしました。なので間に合いませんでした。」
と従来のお客さまに迷惑をかけるわけにはいきません。
そのため年が明けてから
「今回の所得税の申告をお願いしたい」
と言われた場合に、税理士が躊躇してしまうケースは多くなります。
また依頼する方はあまりイメージできていないかもしれませんが、新規にご依頼を受けた場合、不明点が山のように発生します。
これらについては、税理士側から質問をして回答をいただかないと、業務を進めることができません。
ところが、依頼した側は依頼したことによって
「すべて自分の手から離れたのでもう安心」
と感じてしまい、税理士側からの質問や依頼に対して
「こんなにいろいろ回答とかしないといけないのなら、依頼しなければよかった」
と不満を感じる可能性もあります。
こうした点も、早めに依頼をしておけば質問や依頼が短期間に集中することもありませんので、そこまで不満を感じることもないでしょう。
「自分に合った税理士」を探すには
確定申告の依頼時期に関しての依頼者と税理士の間のギャップについてまとめてみました。
税理士を変えたいという方の理由のひとつに
「今の税理士と合わない」
という点を挙げる方は一定数いらっしゃいます。
もちろん依頼してみないと自分に合うか合わないかわからない点もありますが、確定申告が始まる直前に税理士を探すと
「自分が依頼したい税理士」
ではなく
「そのタイミングで仕事を受けてくれる税理士」
しか見つからない可能性が高くなります。
なお、土壇場で仕事を受けてくれる税理士の質が悪いという意味ではありません。運がよければ、自分に合う税理士を見つけられる可能性はもちろんあります。
ただ、じっくりと比較検討をせずに依頼した場合、どうしても合う・合わないといった不満は生まれやすいのではないでしょうか。
「巧遅は拙速に如かず」なんて言葉もあります。何ごともギリギリに動いてもあまりよいことはありませんので、早めの行動を心掛けていただければと。
投稿者
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大学卒業後、大手上場企業に入社し約19年間経理業務および経営管理業務を幅広く担当。
31歳のとき英国子会社に出向。その後チェコ・日本国内での勤務を経て、38歳のときスロバキア子会社に取締役として出向。30代のうち7年間を欧州で勤務。
40歳のときに会社を退職。その後3年で税理士資格を取得。
中小企業の経営者と数多く接する中で、業務効率化の支援だけではなく、経営者を総合的にサポートするコンサルティング能力の必要性を痛感し、「コンサル型税理士」(経営支援責任者)のスキルを習得。
現在はこのスキルを活かして、売上アップ支援から個人的な悩みの相談まで、幅広く経営者のお困りごとの解決に尽力中。
さらに、商工会議所での講師やWeb媒体を中心とした執筆活動など、税理士業務以外でも幅広く活動を行っている。
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