「税理士がアドバイスをしてくれない」という不満は良く聞く話ではありますが、こうした不満が生じる原因について考えてみたいと思います。

「税理士が何もアドバイスしてくれないんです」

いろんな方から相談を受ける中で

「今の税理士が何もアドバイスしてくれない」

という不満を聞くことがあります。

この言葉の裏には、多くのケースで

「その結果として、たくさん税金を払うことになった」

という思いがあるのではないでしょうか。

一応、「節税」についての私のスタンスは

  • 世の中の「節税」といわれる手法のほとんどが税金の「先送り」(最終的に総額が減るわけではない)
  • 税制上認められている「節税」(例えば青色申告特別控除など)については、普通の税理士であれば当然のものとして検討した上で適用している

という考え方です。

この前提の上で、こうした不満が起きる原因を考えていたのですが、中小企業の経営者や個人事業者で不満を抱く方達の考え方としては

  1. 何があろうとも国に対して税金なんか払いたくない。そのためには手許のお金が減っても構わない。
  2. 申告時にいきなり想定外の税額を伝えられて、心の準備ができていなかったため驚いた。そんなに払うのならなぜ事前に言ってくれなかったのか!
  3. 税理士から事前に税金を減らす方法はないといわれたが、この税理士が知らないだけで知る人ぞ知る特別な節税方法があるはずだ。この税理士の能力が低いだけだ。

といったパターンがあるのではないかと。

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「アドバイスがない」という不満の正体

1は極端なケースかもしれませんが、これに近い考え方をされている場合は、こちらとしてできることはないですね。

考え方の問題ですから、お役に立てることは何もないでしょう。

3については「他の税理士しか知らない節税手法」って、基本的にそんなものはありません。

もう少し丁寧に言えば、あるかもしれませんがとても高度なスキームを必要とする可能性があります。

こうしたケース、そもそも説明を聞いて本当に内容を理解できるのかという問題があります。ご自身が理解できない方法を使って、安心できるのかどうか。

将来的に法律や制度が変わることによって、問題とされる可能性もゼロではありません。

また実行するにあたり、(報酬を含めて)多額の費用がかかることが多いものです。

ここまで理解した上で、知る人ぞ知る節税手法を使いたいのであれば、高度なスキームを提案してくれる税理士さんに乗り換えるべきでしょう。

1や3のケースは特殊なケースであり、実際には不満が出てくる理由のほとんどは2ではないかと考えています。

ただこれも、例えば年に1回確定申告の時期に資料をまとめて渡した上で、申告書の作成を依頼しているケースだと、事前に税額などについてアドバイスするのは不可能です。

税理士はお客さまの顔や去年の申告書を眺めていても、その人の税額が頭の中にぼんやりと浮かんできたりはしません。

資料等を預かった上で、きちんと検討してはじめて税額の見込みを出せますし、普段から事業の状況について話をうかがっていないと事業に沿ったアドバイスはできません。

この場合は、税理士が悪いというよりも、仕事の依頼の仕方が、適切なタイミングでアドバイスをもらえるような形になっていないことが問題です。

(この契約形態では事前のアドバイスができないことをきちんと伝えていない点は、税理士側の問題かもしれませんが。)

そうではなくて、定期的に話をする機会があるのに、何もアドバイスをもらえないということであれば、そうした不満はきちんと伝えた方がよいでしょう。

「こうしたことをして欲しい」というものがあれば、きちんと伝えて改善を要望する。

報酬が低くてそこまで対応できないと言われる可能性もありますが、それ以外の理由で改善しないのであれば、いわゆる「相性が悪い」という状態かもしれません。

その場合は、別の税理士を探すということも選択肢のひとつになり得るでしょう。

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納得のためのコミュニケーションが大事

税金の話に限ったものではありませんが、突然「これだけ払ってください」と言われると、誰しも理不尽に感じて多少の怒りを感じたりするものです。

このように感じる理由としては

  • 事前に情報がなかった
  • 自分で選択した結果ではない

という点が大きいのではないでしょうか。

例えば事前に

「今期の税額の見込はザックリとこれくらいになりそうです。決算対策としてこうした方法があります。ただし資金は対策するよりも減るケースもありますが、どうされますか?」

といった説明を受けて、自分で選んだ結果としての税額だったらどうでしょうか。

説明を聞いて自分で選んだ結果として、出てきた数字であれば「アドバイスがない」という不満にはならないはず。

このように、この仕事では事前のコミュニケーションが大事です。

「アドバイスがない」という不満をなくすためには

  • 税理士側:お客さまが納得できるような説明を事前に伝えられているか
  • 税理士に依頼する側:自分がして欲しいことを明確にしてその点を伝えられているか

ということが重要ですので、気になる方は改めて見直してみてはいかがでしょうか。

投稿者

加藤 博己
加藤 博己加藤博己税理士事務所 所長
大学卒業後、大手上場企業に入社し約19年間経理業務および経営管理業務を幅広く担当。
31歳のとき英国子会社に出向。その後チェコ・日本国内での勤務を経て、38歳のときスロバキア子会社に取締役として出向。30代のうち7年間を欧州で勤務。

40歳のときに会社を退職。その後3年で税理士資格を取得。

中小企業の経営者と数多く接する中で、業務効率化の支援だけではなく、経営者を総合的にサポートするコンサルティング能力の必要性を痛感し、「コンサル型税理士」(経営支援責任者)のスキルを習得。

現在はこのスキルを活かして、売上アップ支援から個人的な悩みの相談まで、幅広く経営者のお困りごとの解決に尽力中。

さらに、商工会議所での講師やWeb媒体を中心とした執筆活動など、税理士業務以外でも幅広く活動を行っている。
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