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2017年税理士試験が本日8月8日からスタートしています。

受験生の皆様には、体調に気をつけて1年間学んできたことをすべて答案用紙にぶつけてもらいたいと思います。

私自身受験生時代には、必死になって勉強していました(と自分では思っています)が、年数が経つにつれて当時感じていたことなども忘れてきています。

自分に対する備忘を兼ねて、また受験生の方のお役に少しでも立てばということで、受験生時代に感じたこと(特に税法の勉強について)を少し書いておこうと思います。

1.消費税を甘く見て失敗した1年目

受験1年目は、科目毎にどの程度の勉強ボリュームが必要なのかもよくわからず、簿記・財務諸表論・消費税の3科目を受講していました(予備校の講師の方には勧められませんでしたが)。

簿記と財務諸表論は、それまで仕事で経理をしていたこともあり、すんなりと頭に入ってきたのですが、消費税の講義については途中から「この人は一体何を言っているんだろう?」という感じで聞いていました。

ちなみにこれは講師の方の教え方が悪かったわけではなく、私の理解力の問題です・・・。

中途半端に知っていると逆に失敗してしまう

経理の仕事の中で、消費税申告のための基礎資料を作ることはありましたが、申告書の作成まではやったことがありませんでした。

そのため、「消費税なんて、免税とか非課税となる取引を除外して、あとは仮受消費税から仮払消費税引いた金額を申告しとけばいいんでしょ」という感覚で勉強を始めたのが失敗の元でした。

講義の導入部分は問題なく聞いていたのですが、「消費税は売上に係る消費税額から仕入税額控除をして計算します」と聞いて「仮払消費税とか仮受消費税の科目から集計するのじゃないの?」と少し混乱。

また、「税抜経理の場合も一旦税込に戻してから計算します」と説明を受けてさらに混乱。その上、「仕入税額控除は全額控除できない場合があります」って聞いて「どういうこと?」。

しまいには、「調整対象固定資産て何?3年目にもう一回計算し直すの?」、「国等の仕入税額控除の特例計算??」、「なんで簡易課税制度ってこんなに計算大変なの?全く簡易じゃない!」、「理論の問題って一体何を解答として書けばいいの???」ということで1年目は消費税は撃沈しました。

受験期間中は、このようなトンネルの中を進むような気分だったような・・・

2.アタマを税法「脳」に作り替えることが必要

トラウマがあったわけでもないのですが、「消費税くらい簡単にできるだろう」と思っていたところ、苦戦してしまいましたので、受験2年目は法人税・相続税を受験して消費税は1年空けることにしました。

受験3年目に心機一転、消費税を改めて初心者コースで一から勉強してみると、不思議なことに説明がすんなりと頭に入ってきました。

これは、恐らく

・1年目の失敗により、「自分はまだわかっていない」と理解して素直な気持ちで勉強できたこと

・受験2年目に税法科目に集中して取り組んだことで、税法の考え方を受け入れる準備ができたこと

の2点がその理由だと考えています。

法律に基づいて考えることに慣れている人は多くない

1点目は心構えの問題ですが、結構やっかいなのが2点目です。

大学の法学部でみっちり法律を勉強したような方以外は、法律に本格的に取り組むのは初めて(ちなみに私は経済学部卒業です)ですから、法律に基づく考え方を受け入れる準備ができていません。

簿記や財務諸表論は、ルールに当てはめて計算していけば答えは出ますし、またどのルールを当てはめるべきかという点においてあまり悩むことはないと思います。

しかし、税法科目は計算問題においてさえ、税法の条文に当てはめて判断を行う必要がありますし、そもそも条文自体が読みにくいため、どのルール(条文)を当てはめるかという使い方の部分で慣れが必要となります。

例えば、消費税の免税・非課税・不課税などの判定は、取引内容ごとに覚えるよりも、輸出免税の条文、非課税の条文、課税対象の条文にその場で当てはめて判定する方が素早く処理することができます。

税理士試験の受験勉強は将来に向けた基礎体力作り

また、理論の勉強も「また暗記か・・・」という気分になりますが、合格後に税理士として仕事をしていくことを考えると、暗記するくらいアタマにたたき込んで、税法の大枠・体系を体に染みこませる必要があります。

昔、詰め込み教育が批判されたこともありましたが、基礎を固めるためには最初にとことんインプットすることが欠かせません。こうしたインプットなしに高度なアウトプットを求めても上手くいくはずがありません。

受験期間中は「なぜこんなつらい作業を続けないといけないんだ・・・」という気持ちになってしまいますが、何事においてもその後の飛躍のためには「基礎」を固める作業が欠かせません。

税理士試験のための勉強も、合格後に必要な「基礎体力」作りをやっていると思って、なんとかモチベーションを維持していただき、厳しい税理士試験を突破していただけたらと思います。

投稿者

加藤 博己
加藤 博己加藤博己税理士事務所 所長
大学卒業後、大手上場企業に入社し約19年間経理業務および経営管理業務を幅広く担当。
31歳のとき英国子会社に出向。その後チェコ・日本国内での勤務を経て、38歳のときスロバキア子会社に取締役として出向。30代のうち、7年間を欧州で勤務。

40歳のときに会社を退職。その後3年で税理士資格を取得。

中小企業の経営者と数多く接する中で、業務効率化の支援だけではなく、経営者を総合的にサポートするコンサルティング能力の必要性を痛感し、「コンサル型税理士」(経営支援責任者)のスキルを習得。

現在はこのスキルを活かして、売上アップ支援から個人的な悩みの相談まで、幅広く経営者のお困りごとの解決に尽力中。
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