税務関係の電子申告の方法が増えたことで、税理士が代理申告する際に少々面倒になるケースがあります。パスワードが設定されていないというのがそのひとつですが、こうした際の対処法を確認するとともに、電子申告の仕組みについて少し考えてみたいと思います。

e-Taxのパスワードが設定されないケース

新規のお客様などで

「電子申告の利用者識別番号はあるけれども、パスワードはない」

というケースをチラホラ見かけます。

「パスワードを覚えていないだけでは?」と思われるかもしれませんが、忘れたわけではなく、本当にパスワードが設定されていません。

国税庁としては電子申告を推進したいため、一般の納税者の方が申告しやすいよう

  • マイナンバーカード方式
  • ID・パスワード方式

といった(マイナンバーカード以外の)電子証明書を必要としない方式を提供するようになりました。

電子申告をするための複数の方法が用意されたことで、ご自身で申告される方にとっては利便性が向上したと思います。

ただ問題になるのは、申告内容が手に負えなくなるなどの理由で税理士に依頼するケース。

e-Taxのサイトにも記載がありますが、税理士が代理送信する場合には、納税者自身が暗証番号の登録を必ず行う必要があるとされています。

税理士等が申告等データを作成し、送信する場合には、納税者は暗証番号の変更、電子証明書の登録などの初期登録をする必要がありますか。| 【e-Tax】国税電子申告・納税システム(イータックス)

つまり、暗証番号がない状態で税理士に依頼しようとすると、(主に税理士側が)困った状況になってしまいます。

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マイナンバーカードを使った確認方法

マイナンバーカード方式で申告をされていた場合、電子申告時にID(利用者識別番号)とパスワードの入力が求められません。

税理士にいざ依頼しようとすると

「利用者識別番号を教えてください」

といわれて、わからないというケースもあるでしょう。

こうした場合、通常は下記リンク先から変更等届出を提出するとされています。

作成・送信する開始(変更等)届出書の選択| 【e-Tax】国税電子申告・納税システム(イータックス)

ただ、届出を出して税務署から連絡が来るのを待っていたのでは、時間がかかって仕方がありません。

そこで、マイナンバーカード方式で電子申告をしていた方については、マイナンバーカードを使ってe-Taxにログインすることで

  • 利用者識別番号(ID)の確認
  • パスワードの登録

を行うことができます。

マイナンバーカード方式により利用開始の手続を行いましたが、利用者識別番号及びパスワードがわかりません。どうしたらよいですか。| 【e-Tax】国税電子申告・納税システム(イータックス)

リンク先では、具体的な手順が画像付きで解説されていますが、主なポイントを確認しておきましょう。

なお作業は、パソコン・スマホのどちらでも行えます。

利用者識別番号(ID)を確認したい場合

以下、パソコンでの手順となりますが、スマホでも基本的には同じです。

  1. e-Taxのログイン画面(右上のログインをクリック)からマイナンバーカードを読み取ってログイン
  2. マイページをクリック
  3. 基本情報をクリック
  4. 開いた画面で「利用者識別番号」(16桁の数字)を確認できます

パスワードの登録・変更をしたい場合

ログインしてマイページを表示するまでの手順(手順1~2)は、利用者識別番号を確認するときと同じです。

マイページの下の方に「その他の登録情報」というメニューがありますので、クリックします。

下図の画面(e-Taxのページより抜粋)が表示されますので、「利用者識別番号のパスワード」欄の「変更する」の箇所をクリックします。

なお画面はパスワードを登録済みの状態となっていますが、パスワードを設定していない場合は、「未設定」(「未登録」だったかもしれません)と表示されています。

ボタンも「変更する」ではなく「登録する」となっていますので、これをクリックすればパスワードを設定できます。

なおここで設定するパスワードは、電子申告を利用する際に使うものです。マイナンバーカードのパスワードは変更されませんのでご注意ください。

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制度の見直しが必要な時期では?

暗証番号などがわからない場合、最終手段として、電子申告の開始届を出し直すという方法もあるのですが、これをすると税務署から電話かかってきて

「以前の番号のデータがなくなりますが、本当にいいんですか?」

と確認されます。

そもそも同一人物であることがわかってるんなら、データを引き継げる仕様にしてよ、といつも思います。

他にも、e-Taxから届くお知らせメールに宛名を表示したい場合には、e-Tax内で宛名を登録しなければなりません。

登録時に氏名を入力してるんだから自動的に表示すればいいのに、なぜでしょうか。

また税理士は申告をする際に利用する税理士用の電子証明書を持っていますが、これもマイナンバーカードのチップに搭載できないんだろうかといつも思います(容量などの技術的な問題があるのかもしれませんが)。

税務関係の電子申告手続きに関しては、他の手続き等と比べるとかなり進んでいる印象はありますが、先行して普及してきたこともあり、特に「わかりやすさ」という観点でのユーザーインターフェースは今ひとつだと感じます。

そろそろ仕組みとして抜本的に見直しをすべき時期なんじゃないかと、パスワードの登録方法を調べながら思った次第です。

投稿者

加藤 博己
加藤 博己加藤博己税理士事務所 所長
大学卒業後、大手上場企業に入社し約19年間経理業務および経営管理業務を幅広く担当。
31歳のとき英国子会社に出向。その後チェコ・日本国内での勤務を経て、38歳のときスロバキア子会社に取締役として出向。30代のうち7年間を欧州で勤務。

40歳のときに会社を退職。その後3年で税理士資格を取得。

中小企業の経営者と数多く接する中で、業務効率化の支援だけではなく、経営者を総合的にサポートするコンサルティング能力の必要性を痛感し、「コンサル型税理士」(経営支援責任者)のスキルを習得。

現在はこのスキルを活かして、売上アップ支援から個人的な悩みの相談まで、幅広く経営者のお困りごとの解決に尽力中。

さらに、商工会議所での講師やWeb媒体を中心とした執筆活動など、税理士業務以外でも幅広く活動を行っている。
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