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デジタル化は効率化の手段のひとつですが、何のために行うのかを明確にし無理なく業務効率を向上させるという視点は持っておきたいものです。

デジタル化を無理強いしない

税理士に関しては「税理士法」という法律があります。その中には

(税理士の業務における電磁的方法の利用等を通じた納税義務者の利便の向上等)
第二条の三 税理士は、第二条の業務を行うに当たつては、同条第一項各号に掲げる事務及び同条第二項の事務における電磁的方法(電子情報処理組織を使用する方法その他の情報通信の技術を利用する方法をいう。第四十九条の二第二項第八号において同じ。)の積極的な利用その他の取組を通じて、納税義務者の利便の向上及びその業務の改善進歩を図るよう努めるものとする。

という条文があります(太字は筆者)。

堅苦しい書き方になっていますが、要するにデジタル化を積極的に推進してお客さまが便利になるよう努力しなさい、ということです。

このデジタル化は主に税金に関する部分が対象とはいえ、税理士は法律上も中小事業者へのITサポート的なものが求められているともいえます。

もちろん以前から必要に応じてそうしたサポートも行っていますが、相手の状況を無視してとにかく何らかのデジタルツールを導入してもらうというのは違うかなと。

所得税の確定申告時期になると、個人事業者の方とのやりとり増えますが

「LINEしか使ってません」
「メールって使った方がいいですか」
「Exceって具体的になにができるんですか」

といったレベルの方もまだまだいらっしゃいます。

いまだにツールを使えないこうした人たちが悪いというつもりは全くなくて、今までにそうした教育を受ける機会がなかったわけですから、やむを得ない部分もあるでしょう。

そもそも何のためにデジタル化するのか?

最近になって「デジタル化」という言葉を聞く機会が増えました。

そうしたことが求められる背景としては、今後日本において人口が減るなかで従来の仕事の仕方では立ちゆかないということがあります。

要するに生産性を上げて、今よりも少ない人数で効率的に仕事をしないといけないということです。

そのための方法のひとつとして「デジタル化」があると。

デジタル化というのはあくまで「手段」ですから、デジタル化しなくても効率化できるのならそれで問題ありません。

例えばデジタルツールをほとんど使えない事業者の場合、そもそも書類の整理もできていないというケースがあります。

レシートは袋にまとめて入れていたり、事業と個人のお金が分かれていなくてどれが事業用の支払いかよくわからないなど。

こうした状況で例えばいきなり

「インボイスや電帳法対応のために経費精算の仕組みを入れましょう」

なんて話をしてもまったく実態と合っていません。

そうしたことを考える前にやるべきことはたくさんあります。

事業用の銀行口座を決めて支払はすべてそこから行うとか、事業用のクレジットカードをつくって支払はそこにまとめるといったことをするだけでも、お金の流れがわかりやすくなりかなりスッキリするはず。

こうしたことはデジタル化でも何でもなくて仕事の仕組みやフローの見直しとなりますが、零細事業者の方だとこうした見直しをするだけでも仕事の効率が大きく変わる可能性があります。

デジタルツールを導入する前に考えるべきことややるべきことはたくさんありますので、その事業者の状況に応じて何をすべきか検討することが大事です。

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いろんなケースに対応できるよう引出しは増やしておく

デジタルツールを使えないという人は恐らく将来的に減っていくでしょう。

最近は学校でもタブレットを使った授業などが増えてきていますので、そうした世代の方達が社会に出てくることによりデジタルに関するスキルは底上げされていきます。

とはいえそうした状況になるにはまだ少し時間が必要ですし、目の前の課題に対して取り組む必要はあります。

その一方で、使いこなせないツールを無理強いして導入しても意味はありません。

使う本人がやる気にならないとツールを導入してもうまくいきませんので、お客さまから

「こんなことで困ってる」
「こんなことできたら便利なのに」

という話が出たときに

「実はこんな方法があるんです」

と提案できるようにしておきたいものです。

そのためにもある程度の引出しは持っておくべきだと考えています。

間違っても

「とりあえずツールを導入すれば課題は勝手に解決する」

という思考にはならないよう、普段から注意しておきたいものです。

投稿者

加藤 博己
加藤 博己加藤博己税理士事務所 所長
大学卒業後、大手上場企業に入社し約19年間経理業務および経営管理業務を幅広く担当。
31歳のとき英国子会社に出向。その後チェコ・日本国内での勤務を経て、38歳のときスロバキア子会社に取締役として出向。30代のうち7年間を欧州で勤務。

40歳のときに会社を退職。その後3年で税理士資格を取得。

中小企業の経営者と数多く接する中で、業務効率化の支援だけではなく、経営者を総合的にサポートするコンサルティング能力の必要性を痛感し、「コンサル型税理士」(経営支援責任者)のスキルを習得。

現在はこのスキルを活かして、売上アップ支援から個人的な悩みの相談まで、幅広く経営者のお困りごとの解決に尽力中。

さらに、商工会議所での講師やWeb媒体を中心とした執筆活動など、税理士業務以外でも幅広く活動を行っている。
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