2025年以降、税務署に紙で提出する申告書等には受領印は押さないことになるようです。
2025年から申告書等の受領印がなくなります
税理士会から案内があり、X(旧Twitter)でも話題にしていた方もいましたが、税務署に提出する申告書等に対して税務署は「収受日付印」と呼ばれる受領日が記された押印をやめるとのことです。
当初は2024年4月以降実施される予定でしたが、税理士会等の交渉により周知期間が必要との判断から2025年1月からの実施となったようです。
国税庁のホームページにはこの件に関する情報はまだ掲載されていませんが、今後一般向けにも周知用のリーフレット等が出てくることになると思われます。
そもそもなぜこのような対応になったかというと、税務行政のDX化を進める中で税務署における税金の手続きの見直しの一環として書面で提出された申告書等の控えに収受日付印を押さないことにしたとのことです。
2022年のe-Tax(電子申告)利用率は
- 所得税:65.7%
- 法人税:91.1%
とされていますので、あまり影響はないのかもしれませんが、発信されている内容に「?」と思うところもありますので、少し確認しておきたいと思います。
今後の取扱いはどのように変わるのか
あくまで対象は「紙で税務署に提出する申告書等」となります。
電子申告を利用してデータで提出している方には、今回の内容は気にする必要はありません。
その一方で紙で提出している方については
- 税務署に書類を提出したことをどうやって証明すればいいのか
- 金融機関などから収受印がある申告書等のコピーの提出を求められることがあるがどのように対応すればよいのか
といった問題が生じます。
1については
当分の間の対応として、窓口で交付する「リーフレット」(申告書等の提出事実等の確認方法をご案内するもの)に、申告書等を収受した「日付」や「税務署名」を記載した上で、希望者にお渡しすることを検討しています。
国税庁「収受日付印の押なつ見直しに関するこれまでの主なご意見とその回答」より
とのことです。
うーん、リーフレットに日付を書いて渡すくらいなら、素直に控えに収受印を押せばいいのでは・・・。
郵送で提出するものについても「返信用封筒」と「申告書等の控え」を同封した方については同じ対応を予定しているようです。
リーフレット以外の確認方法として
- 申告書等情報取得サービス
- 個人情報の開示請求
- 税務署での申告書等の閲覧サービス
- 納税証明書の交付請求
があるとされているのですが、b・c・dについては費用がかかったり、必要書類を準備した上で税務署まで足を運ばなければ確認ができず、自分が提出したことを証明するための手段としてはあまり現実的とは思えません。
aは以下のリンク先に記載されているものですが、内容を見る限り所得税申告のみが対象となっているようで、また本人のマイナンバーカードが必要なため税理士が代理で取得することはできないようです。
国税庁:紙で申告した方もe-Taxで所得税申告書等のPDFファイルを取得できます!
私の場合、相続税申告については今も紙で提出しています。相続税の申告は1回限りにも関わらず、相続人全員の利用者識別番号(e-TaxのID)を取得する必要があるため電子申告を利用していません。
この場合
「本当に申告書を提出してくれたの?」
と聞かれたら、どのように証明すればいいんだろうかという心配があります。
2については、2025年1月以降も収受印のある控えの提出を求める金融機関等については国税当局から説明するので、そんなケースがあったら情報提供して欲しいとのことです。
説明すると言っても
「収受印を押さないことにしたからそれで対応して」
というだけなんじゃないかと。
本当に申告書等を提出しているか確認したい金融機関としては対応に苦慮するのではないかと心配になります。
金融機関が対応に苦慮するだけならまだしも、例えば融資を受けたい事業者への融資の実行が遅れるもしくは融資が認められないなどの不利益が生じないかといった心配も残ります。
そもそも何のため、誰のための廃止?
今回は、税務署に紙で提出する申告書等への収受印廃止について取り上げました。
国税庁としては電子申告にシフトしてほしいとの思いもあっての施策だと思われますが、代わりに日付を記入したリーフレットを渡すくらいなら収受印を押した方が、税務署窓口の手続きとしても簡単なのではないでしょうか。
そもそも
- 申告書等提出の電子化を推進する(デジタル化・DX化の推進)
- 紙提出書類の受領を証明する
というのはまったく別の問題です。
収受印を押さないというやり方は
「紙で提出すると不便になるように運用を変えるから、電子申告に切替えるように」
と言われているようであまり感じのよいものではありません。
税務署の窓口の工数もそれほど減りそうもありませんし、提出した納税者も不便しかありません。
「デジタル化」という名目でたかだかスタンプを押す手間を省略するのって、誰のメリットになるのだろうかと思います。
本当にDXを進めたいのであれば、工程表などをきちんと提示して
「例外的な理由がない限り、紙書類による申告書等の提出は認めない」
というところまで持っていくべきだと考えますが、かなり大変でしょうからそこまではやらないんでしょうね。
投稿者
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大学卒業後、大手上場企業に入社し約19年間経理業務および経営管理業務を幅広く担当。
31歳のとき英国子会社に出向。その後チェコ・日本国内での勤務を経て、38歳のときスロバキア子会社に取締役として出向。30代のうち7年間を欧州で勤務。
40歳のときに会社を退職。その後3年で税理士資格を取得。
中小企業の経営者と数多く接する中で、業務効率化の支援だけではなく、経営者を総合的にサポートするコンサルティング能力の必要性を痛感し、「コンサル型税理士」(経営支援責任者)のスキルを習得。
現在はこのスキルを活かして、売上アップ支援から個人的な悩みの相談まで、幅広く経営者のお困りごとの解決に尽力中。
さらに、商工会議所での講師やWeb媒体を中心とした執筆活動など、税理士業務以外でも幅広く活動を行っている。
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