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税金に関する文章を書くときには、常に「正確さ」と「わかりやすさ」のバランスをどう取るかという問題があります。今回はこの点について普段考えていることをまとめておきます。

税金に関する文章を書くときはいつもヒヤヒヤします

頻繁にとは言いませんがこのブログでも税金に関する文章を書くことはあります。

税理士といえども税金について書くとなると、間違いがないように法律や国税庁から出ている資料など複数の資料を事前に確認します。

それでも

「何か間違ったことを書いていないだろうか」
「この記事を読んで内容を誤解する人が出てこないだろうか」

と心配になるものです(私だけかもしれませんが)。

間違いがないかどうかは事前に確認して書けば問題ないかもしれませんが、誤解を生まないような「正確さ」に万全を期すのであれば法律の条文を引用してその解説をひとつずつすべきということになります。

でもそんな書き方をしてしまうと

  • 内容を理解してもらえない
  • そもそも最後まで読んでもらえない
  • 専門家に向けて書いているブログではない

ということでここに書く意味がなくなってしまいます。

そうなると必然的に「わかりやすさ」を追求することになりますが、ここを追求しすぎると

「内容を誤解する人が出てくるんじゃないか」

という最初の悩みに戻ってしまうため、「正確さ」と「わかりやすさ」のバランスは毎回悩むところです。

例えば前回の記事だとどうバランスを取っているか

前回、個人事業主の方が住所変更したときに税務署への届出が不要となったという内容について書きました。

この記事でも、もし正確に書こうとするなら住所変更の届出が不要になった点について

第20条 納税地の異動の届出
納税義務者は、その所得税の納税地に異動があつた場合(第16条第3項から第5項まで(納税地の特例)に規定する書類の提出又は第18条第1項(納税地の指定)の指定によりその納税地に異動があつた場合を除く。)には、政令で定めるところにより、その異動前の納税地の所轄税務署長にその旨を届け出なければならない。

という所得税法の条文が2023年1月1日からは削除されたからです、という説明が必要となります。

でもこのブログを見に来る方は別にそんな説明は求めていませんし、ここまで書かなくても

「住所変更したときの税務署への届出が2023年1月から不要になりました」

と書けば大枠としては理解してもらえます。

法律を引用することで拒否反応を示して読んでもらえなくなるくらいなら、書かない方がよいということです(説明上必要と判断したときは引用しますが)。

他にもさらっと「住所」と書いてますが、これもきちんと説明するのなら所得税基本通達に

2-1 住所の意義
法に規定する住所とは各人の生活の本拠をいい、生活の本拠であるかどうかは客観的事実によって判定する。
(注) (省略)

というのがあって、必ずしも住民登録している場所が住所ではないんですよといった説明も必要となります。

ただほとんどの方は住民登録=住所となっているでしょうから、ここまで書く必要はないと判断して書いていません。

こうした情報を必要とする一部の方に向けて書くというやり方もありますが、前回の記事はある程度広く一般的な方をターゲットとして書いているため、このような内容の取捨選択をしています。

文章を書く際には、このように切り捨てている情報が結構あります。

伝えたい核心部分だけを残すようにしないと「わかりやすさ」は向上しないのですが、それは「正確さ」をいくらかは犠牲にしてる部分もあり、この点についてはいつもモヤモヤするところです。

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すべての人に正確に伝えるのは不可能と割り切る

今回まとめた内容については、悩むのはあくまで書く側であって、読む人にそうした点を意識しながら読んで欲しいというものでは当然ありません。

世の中のすべての人に正確にかつわかりやすく伝えるというのは無理だと割り切って書くしかありません。

読んでもらいたいターゲット層が不明確で誰も読んでくれない記事よりも、一部でも必要な人にきちんと届くような文章を書くべきかと。

誰に向けて書くかを意識することで伝えたいポイントは明確になってきます。

そのポイントについて「正確さ」と「わかりやすさ」のバランスを取りながらまとめられれば及第点だろうと。

今回の記事、書くときに感じるモヤモヤを一度文章にしておきたいということでまとめてみました。

投稿者

加藤 博己
加藤 博己加藤博己税理士事務所 所長
大学卒業後、大手上場企業に入社し約19年間経理業務および経営管理業務を幅広く担当。
31歳のとき英国子会社に出向。その後チェコ・日本国内での勤務を経て、38歳のときスロバキア子会社に取締役として出向。30代のうち7年間を欧州で勤務。

40歳のときに会社を退職。その後3年で税理士資格を取得。

中小企業の経営者と数多く接する中で、業務効率化の支援だけではなく、経営者を総合的にサポートするコンサルティング能力の必要性を痛感し、「コンサル型税理士」(経営支援責任者)のスキルを習得。

現在はこのスキルを活かして、売上アップ支援から個人的な悩みの相談まで、幅広く経営者のお困りごとの解決に尽力中。

さらに、商工会議所での講師やWeb媒体を中心とした執筆活動など、税理士業務以外でも幅広く活動を行っている。
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