先日国税庁から公表された資料を見ながら、今後税金に関する手続きがどのようにデジタル化されていくのか確認しておきましょう。

「税務行政のデジタル・トランスフォーメーション」とは

先日国税庁から

税務行政のデジタル・トランスフォーメーション-税務行政の将来像 2023-

が公表されました。

「2023」とあるとおり、過去にも何度か公表されている資料のアップデート版になります。

ポイントとしては

  1. 納税者の利便性の向上
  2. 課税・徴収事務の効率化・高度化等
  3. 事業者のデジタル化促進

の3つが挙げられていますが、「納税者の利便性の向上」の項目から所得税に関するものを中心に気なった点を確認しておきます。

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進めてほしいこと、変えてほしいこと

所得税確定申告の簡便化

まず最初に目を引いたのが確定申告の簡便化について。

「税務行政のデジタル・トランスフォーメーション」より抜粋

ここに『「日本版記入済み申告書」の実現』という記載があります。

現時点でも所得税の確定申告の際に生命保険料データなどをマイナポータル経由で取り込むことはできますが、こうした仕組みを給与データなどにも拡大しようというものです。

その結果として、例えば医療費控除などの申告であれば、データ連携と取込の処理をするだけで、確定申告書が完成するというイメージです。

現状、給与所得者の方が医療費控除の申告をするには

  • 源泉徴収票を見ながら画面に必要事項を入力
  • 医療費明細を入力(もしくはExcelフォーマットからインポート)

といった作業が必要となりますが、これが不要になるような仕組みを目指すということでしょう。

「税務行政のデジタル・トランスフォーメーション」より抜粋

この動きは非常に歓迎すべきものと考えています。簡単な申告であれば、苦労せずに自分でできるようになります。

ただこの仕組みがいつ導入されるかというと、工程表を見ても項目としての記載がありません。

「税務行政のデジタル・トランスフォーメーション」より抜粋

申告書を作成する際に引込むためのデータがすべてデータで提出される環境が整わないと、実現は難しいということでしょう。

こうした仕組みについては取組みを加速して進めてほしいな、と思ってます。

年末調整手続の簡便化

先ほどの「記入済み申告書」が実現できた暁には、個人の給与に関する所得税を計算するために必要なデータがすべて揃っているということです。

給料をもらっている方については、現状では雇用している事業者が「年末調整」という形で個人の税金を計算しています。

でも、税金を計算するために必要なデータが税務署側にあるのであれば、わざわざ年末調整という負担を事業者に負わせなくても、対象者全員が画面上で自分の税金を確認して申告をすればいいのではと思うわけです。

こうすれば事業者の負担は大きく減り生産性の向上も期待できますが、残念ながらこうした構想についての記載は今回の資料には一切ありません。

年末調整については、あくまで年末調整そのものの負担を軽減するための簡便化について触れているのみです。

「税務行政のデジタル・トランスフォーメーション」より抜粋

個人的にはこのスライドにあるような施策で事業者の負担が大きく軽減されるとは思っていませんので、今後年末調整の手続きが「記入済み申告書」に統合されていく動きが出てくることを望んでいます。

e-Taxマイページの充実

事業者が申告をする際の悩みのひとつとして

「どのような届出を税務署に提出したのかわからない」

というものがあります。

控えをすべて手元に残しておけば問題はありませんが、例えば税務署に出向いたときに説明されるがままに提出するといったことも皆無ではないでしょう。

社歴の長い会社だと、昔の資料が残っていないことも考えられます。

こうした状況への対処として、今年の1月から個人向けにe-Tax内にマイページという機能の提供が開始されました。

「税務行政のデジタル・トランスフォーメーション」より抜粋

今年1月に確認した時点では

  • 所得税
    • 青色申告かどうか
    • 電帳法に基づく届出書が提出されているかどうか
    • 予定納税額
  • 消費税
    • 簡易課税制度選択届出書が提出されているかどうか
    • 課税事業者選択届出書が提出されているかどうか
    • 課税期間特例選択書が提出されているかどうか
    • 中間納税額

といった内容を確認することができました。

特に消費税の届出関係はトラブルも多いため、画面上で税務署側の認識を確認できるのは非常にありがたいです。

今年9月からは法人向けへの提供も予定されていますし、税務代理人(要するに依頼している税理士)が代わりに確認できるようにすることも検討されているようです。

過去に届出を提出したかどうかについては、税務署まで確認に行く必要がありますが、こうした仕組みが整備されると利便性は大きく向上します。

ただ問題がひとつあって、1月に確認した時点では、届出の状況についてリアルタイムの更新ではなく毎年1月の年1回更新となっていました。

せっかく電子申告で届出書を提出してもリアルタイムの更新とならないと、提出する届出書の判断を間違える可能性があります。

この点はぜひ改善してほしいと思います。

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デジタル化は確実に進んでいく

国税庁が公表した資料をもとに、気になる点を確認しました。

急激に変わらない部分も多いですが、遅かれ早かれ税金に関する手続きはデジタル化します。

こうした情報を入手することで提供された仕組みを上手に活用して、面倒な手続きは少しでも早く簡単に終わらせられるようにしていきましょう。

投稿者

加藤 博己
加藤 博己加藤博己税理士事務所 所長
大学卒業後、大手上場企業に入社し約19年間経理業務および経営管理業務を幅広く担当。
31歳のとき英国子会社に出向。その後チェコ・日本国内での勤務を経て、38歳のときスロバキア子会社に取締役として出向。30代のうち7年間を欧州で勤務。

40歳のときに会社を退職。その後3年で税理士資格を取得。

中小企業の経営者と数多く接する中で、業務効率化の支援だけではなく、経営者を総合的にサポートするコンサルティング能力の必要性を痛感し、「コンサル型税理士」(経営支援責任者)のスキルを習得。

現在はこのスキルを活かして、売上アップ支援から個人的な悩みの相談まで、幅広く経営者のお困りごとの解決に尽力中。

さらに、商工会議所での講師やWeb媒体を中心とした執筆活動など、税理士業務以外でも幅広く活動を行っている。
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