最近は生成AIという言葉を聞かない日はありませんが、これにより税理士業務が劇的に効率化するのかについて私見をまとめておきます。

生成AIを使わないと時代遅れ?

ChatGPTやBardなど生成AIについて世の中で取り上げられることが増えました。

ニュースや雑誌などで目にしない日はなく、風潮としては

「業務に活用するのが当然、使えない人は遅れてる」

といった印象を受けます。

生成AIについては日常の言葉使いで質問をすれば、違和感のない言葉で回答を返してくれて、さらに内容もかなりまともです。

使ってみても毎回「スゴい!」と感じます。

ただ驚きはあっても、本当に「便利」かどうかについては冷静に考える必要があるのではないかと。

そこで今回は生成AIを使って、一般的な税理士業務を効率化できるのかどうか検討してみたいと思います。

なお誰でも始められる状況で検討したいので、ChatGPTの無料プランでプラグイン等は使わないという前提とします。

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一般的な税理士業務で適用できる場面を検討すると・・・

一般的な税理士事務所での業務について、生成AIを活用できるか検討してみましょう。

預かった資料の整理や内容の読み取り

そもそも紙の資料を預かっていると生成AIの出番はありません。

預かった資料をスキャンしたりデータで最初から預かったとしても、フォルダごとにファイルを分けたり、ファイル名を変更してもらうことはできません。

画像を直接アップロードすることもできませんので、ファイルの内容を読み取って解析してもらうことも難しい状況です。

ファイルの内容を読み取りたいのであれば、インボイスや電子帳簿保存法への対応として会計ソフトベンダーなどからAI-OCRを使った実用的な機能が既に提供されています。

この点についてわざわざ生成AIを使って行う必要はないでしょう。

会計データ入力

記帳代行を行っている事務所であれば会計ソフトへの入力作業が発生します。

この作業については、既に

  • 銀行の入出金データやクレジットカード明細の取り込み
  • 自動仕訳ルールによる仕訳入力の自動化

が各社会計ソフトに実装されているため、わざわざ生成AIを使うことは考えられません。

活用方法としては、Excelファイルから会計ソフトにインポートするファイルを作成する際に、つくりかたを相談するくらいでしょうか。

ちなみに弥生会計にインポートするデータファイルの作り方を聞いてみましたが、想定しているファイルとは異なるものが案内されています。

会計データチェック

自計化されているお客さまについては、定期的に会計データのチェックを行うケースもあるでしょう。

ChatGPTの無料版ではExcelファイルをアップロードすることができませんので、試算表や日記帳から異常値がないかチェックしてもらうといった使い方はできません。

仮にアップロードできたとして、チェックの基準がブラックボックスとなっている状態での回答を100%信用するかといった問題があります。

そうなると最終的に人間による確認が必要となりますので、大きな効率化にはつながりません。

データのチェックについては、例えばExcelで事前にチェック内容を条件付き書式などを使って準備しておけば、異常値をすぐに発見できます。

この場合は、自分で決めたチェックポイントに従ってチェックを行っているためその点は安心です。

その一方でAIを使ってチェックしてもらうことにより、今まで気付いていなかったり見落としていたポイントに気付くという効果は期待できるかもしれません。

報告資料作成

顧客への報告資料を毎回PowerPointなどのスライドで作成している場合には、構成案やサマリーの作成などに活用できる可能性はあります。

ただこれも会計データから報告資料をつくるソフトやサービスが既にありますので、毎回報告内容やフォーマットを変える必要があるケースを除くと、わざわざ生成AIを使う機会は無いのではないかと。

質問への回答

お客さまからの問合せや税務判断を行うにあたり調べ物をするケースはよくあります。

こうした点に生成AIを活用できると非常に助かるのですが、現状では回答についての信頼性が十分とは言えません。

税務に関する質問に対しては首をかしげざるを得ないものもあり、現状ではこの目的で生成AIを使うことは現実的ではありません。

データ分析

データを分析するといった作業はAIが得意とするところですが、ファイルがアップロードできないとそもそも分析をしてもらえません。

さらにいえば、一般的な税理士事務所でデータを分析する機会がそれほどあるかといった疑問もあります。

メールの文案作成

テキスト処理が得意という点から考えると、メール文面の作成といった作業は得意なはずです。

ただこれについてもわざわざ文面を考えてもらわないといけないメールってそんなにあるかどうか。

長文のメールを作成する際の草案作りだと使えるかもしれませんが、そこまで長いメールの場合は別途まとめた資料を添付するケースが多いのではないでしょうか?

案内文書の作成

税制改正などがあった場合に、お客さまに案内する文書やニュースレターを作成することがあるかもしれません。

こうした場合に構成の検討や下書きづくりという目的で生成AIを活用する場面は考えられるでしょう。

作業の自動化・プログラミングのサポート

Excel内の作業を自動化するためにマクロを使いたいけれど、自分ではうまく書けないというケースがあるかもしれません。

こうしたケースでChatGPTに相談しながらマクロをつくるといったやり方は、業務効率化のために考え得る一つの活用法といえるでしょう。

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業務に具体的に当てはめるイメージが大事

とりあえず私がイメージする一般的な税理士業務において生成AIを活用できるかどうか検討してみました。

全般的にみて生成AIを使って税理士業務を大きく効率化できるケースってあまりないのではないかと感じています。

現在提供されている税理士向けのサービスを使えばある程度実現できていることも多く、生成AIを使って大きく変えられる部分がないというのも理由の一つでしょう。

一応お断りしておきますが、生成AIそのものを否定するつもりはありません。今後世の中を大きく変えうるツールだと考えています。

ただしそうはいっても生成AIも一つのツールです。具体的な業務に当てはめられないと効果を発揮しません。

ツールを使って、具体的にどの業務をどのように変えるかというイメージをしっかりと持つことが大事です。

場合によっては個別の業務ではなく、業務全体の流れを根本的に変えてしまうことも必要となります。

こうしたイメージがアタマの中に浮かぶかどうかが能力や才能の違いとも言えますので、既に生成AIを使って業務を大きく効率化している税理士事務所もあるかもしれません。

個人的には生成AIそのものを活用するよりも、現在提供されている既存のサービスに生成AIが組み込まれることで税理士業務が大きく効率化する可能性があるのではと考えています。

例えば、土地の図面を読み込んだら土地の評価計算をすべて自動的にやってくれるといった機能が提供されると、相続税の申告業務などが大きく効率化する可能性があります。

今回は生成AIと税理士業務の組合せについて現状で考えていることをまとめてみました。

異なる意見をお持ちの方も多いかと思いますが、生成AIの活用を検討される際の参考になれば幸いです。

投稿者

加藤 博己
加藤 博己加藤博己税理士事務所 所長
大学卒業後、大手上場企業に入社し約19年間経理業務および経営管理業務を幅広く担当。
31歳のとき英国子会社に出向。その後チェコ・日本国内での勤務を経て、38歳のときスロバキア子会社に取締役として出向。30代のうち7年間を欧州で勤務。

40歳のときに会社を退職。その後3年で税理士資格を取得。

中小企業の経営者と数多く接する中で、業務効率化の支援だけではなく、経営者を総合的にサポートするコンサルティング能力の必要性を痛感し、「コンサル型税理士」(経営支援責任者)のスキルを習得。

現在はこのスキルを活かして、売上アップ支援から個人的な悩みの相談まで、幅広く経営者のお困りごとの解決に尽力中。

さらに、商工会議所での講師やWeb媒体を中心とした執筆活動など、税理士業務以外でも幅広く活動を行っている。
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