電子帳簿保存法に対応するためのサービス・ソフト選定で悩ましいことの一つが、将来変更する可能性をどう考えるか。サービス等を変更した場合に起こりうる問題点を整理してみたいと思います。

電子取引保存の際の要件

電子帳簿保存法で求められる電子取引の保存については、(聞き飽きたと思いますが)

  1. マニュアル等を備え付けておく
  2. パソコン・モニター・プリンター等を準備する
  3. 保存したデータを検索で探せるようにしておく
  4. 次のいずれかの方法を採用する
    1. タイムスタンプ付きのデータをもらう
    2. データ受領後にタイムスタンプを押す
    3. 訂正削除の履歴が残る又は訂正削除できないシステムに保存する
    4. 訂正削除の防止に関する事務処理規定を準備する

特に3・4が厄介なため、電子取引の保存については、可能な限り電子取引の保存に対応したソフトやサービスを使ったほうが、管理はしやすいと考えています。

訂正削除の防止に関する事務処理規定を作って対応するのは、できれば最終手段にしておきたいと。

ただ、ソフトやサービスを選ぶ際に気になるのが、サービス提供が取りやめになったり、乗り換えたくなった時にどうなるかです。

今回はもし将来そうしたケースに遭遇した場合に、起こりうる問題点について考えてみたいと思います。

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サービスやソフトを変更するとどのような問題が生じるか?

サービスやソフトを変更しようとしたときに、まず気になるのは

  • それまでに保存したデータのダウンロードが可能かどうか

という点です。

これについては、まだ始まったばかりのためあまり明確に示しているサービスはないように感じます。

その一方で、仮にサービス提供側がデータのダウンロードに応じてくれれば何も問題ないかといいますと、いくつか気になる点は残ります。

例えば保存要件の4については

  • 保存時にタイムスタンプを押すサービスの場合、ダウンロードしたデータには保存時のタイムスタンプが押されているのか(技術的に可能かどうかを含めて)
  • 訂正削除履歴を残すサービスの場合、ダウンロードしたデータには訂正削除履歴は含まれていないのではないか
  • 訂正削除ができないサービスの場合、ダウンロードしてしまったら、そもそも「訂正削除ができない」という要件を満たしていないのではないか

といった問題が生じるのではないでしょうか。

検索要件(上記の3)については、データダウンロードができたとしても、ダウンロード時にファイル名に「取引年月日・取引先・取引金額」を付与してくれない可能性があり、別途索引簿を自動作成してくれるようなサービスでなければ検索要件を満たせなくなる、といった問題が考えられます。

このようにサービスを変更する場合には

  • そもそもサービスを変更する際にデータダウンロードなどによる移行が可能か
  • 移行できたとしても、要件3・4を満たせなくなるという問題が生じないか

といった点に注意が必要です。

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もう少し現実的な対処法を明示すべきでは?

サービス変更時に電子取引データの保存に問題が生じるとすると、現実的な対応は

「変更後のサービスとともに変更前のサービスも、保存期間中は継続して利用する」

ということになってしまいます。

コストの観点からこうした状況は避けたいですから、電子取引を保存するサービスを選ぶ際には慎重に検討する必要があります。

とはいえ、自主的にサービスを変更するのではなく、事業者がサービス提供を中止したり、事業者自体が破綻してしまい、サービス・ソフトが使えなくなってしまった場合まで同じように扱ってよいのかどうか。

この場合に

「電子取引を法律通りに保存していないから問題だ」

と言われて納得できる人はいないでしょう。

実際こうしたケースの対処法については特に決まりは見当たりませんが、ひとつヒントになるものとして、電子帳簿等(電子取引ではありません)の保存システム変更についての電子帳簿保存法取扱通達4-40(システム変更を行った場合の取扱い)があります。

この中でシステムを変更したとしても法律の取決め通り保存しなければならないとしつつも

この場合において、当該要件に従って変更前のシステムに係る電磁的記録の保存等をすることが困難であると認められる事情がある場合で、変更前のシステムに係る電磁的記録の保存等をすべき期間分の電磁的記録(法第4条第1項又は第2項((国税関係帳簿書類の電磁的記録による保存等))に規定する財務省令で定めるところにより保存等が行われていた国税関係帳簿又は国税関係書類に係る電磁的記録に限る。)を書面に出力し、保存等をしているときには、これを認める。

としています(太線は筆者)。

困難であると認められる事情があれば書面出力による保存も認めているわけです(但し、優良帳簿で過少申告加算税の軽減措置の適用を受けている場合はこの方法は認められません)。

電子取引の保存については「義務」としての対応が求められている以上、サービスやソフトを変更した際に、何らかの柔軟な対応を認めてもらわないと実務が回りません。

電子帳簿等にはいざというときの例外を認めているのであれば、電子取引についても、少なくともダウンロードしたデータでの保存を容認するなどの方針を認めておくべきじゃないかと思うんですが・・・。

投稿者

加藤 博己
加藤 博己加藤博己税理士事務所 所長
大学卒業後、大手上場企業に入社し約19年間経理業務および経営管理業務を幅広く担当。
31歳のとき英国子会社に出向。その後チェコ・日本国内での勤務を経て、38歳のときスロバキア子会社に取締役として出向。30代のうち7年間を欧州で勤務。

40歳のときに会社を退職。その後3年で税理士資格を取得。

中小企業の経営者と数多く接する中で、業務効率化の支援だけではなく、経営者を総合的にサポートするコンサルティング能力の必要性を痛感し、「コンサル型税理士」(経営支援責任者)のスキルを習得。

現在はこのスキルを活かして、売上アップ支援から個人的な悩みの相談まで、幅広く経営者のお困りごとの解決に尽力中。

さらに、商工会議所での講師やWeb媒体を中心とした執筆活動など、税理士業務以外でも幅広く活動を行っている。
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