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電子取引については2024年1月からデータの保存が必須となりますが、その際に悩ましいのがバックアップを取るかどうか。今回はこの点について考えてみましょう。

電子帳簿保存法ってバックアップは必要ですか?

相談やセミナーで電子帳簿保存法について説明した際に

「電子取引についてはデータの保存が義務なんですよ」

と説明をすると

「データのバックアップをしておかないといけないんですか?」

という質問を受けることが割とあります。

この点については国税庁の電子帳簿保存法一問一答【電子取引関係】(令和5年6月)の問23において次のように書かれています。

問23 バックアップデータの保存は要件となっていますか。
【回答】
バックアップデータの保存は要件となっていません。
【解説】
バックアップデータの保存については法令上の要件とはなっていませんが、電磁的記録は、記録の大量消滅に対する危険性が高く、経年変化等による記録状態の劣化等が生じるおそれがあることからすれば、保存期間中の可視性の確保という観点から、バックアップデータを保存することが望まれます。
また、必要に応じて電磁的記録の保存に関する責任者を定めるとともに、管理規則を作成し、これを備え付けるなど、管理・保管に万全を期すことが望ましいと考えられます。

まあ何というかズルい書き方だなと思います。

法律上は義務じゃないけど、データは消える可能性があるのでバックアップした方が望ましいと。

「強制はしないけれどバックアップした方がいいんじゃない」という責任は取らんけれど、何かあっても知らないよというスタンスですね。

今まで書類を紙保存する中で

「紙は破れたり、火災があるとすべて消失する可能性があるので、コピーを取っておいて別の場所に保存したた方がいい」

なんて言われたことはありませんが、なぜデータ保存についてはこのようなことを言われるのか?

理由のひとつとしては、先ほどの解説にあるようにHDDなどの記録媒体自体が壊れてしまう可能性があり、その場合データがすべて破損するからという点は挙げられるでしょう。

紙であっても火災や引越し時の紛失といった状況が無いわけではないので、データだけ特別扱いするものどうかとは思いますが・・・。

とはいえ、データが飛んでしまうと調査の際の対応も大変ですし、過去の請求書等を参照したい場合に自分が困ることになります。

結論としては、自分が困らないためにバックアップは取っておいた方がよいと考えています。

自社サーバーやパソコンに保存する場合の対処法

電子取引データ保存の専用サービスを利用するにあたっての課題などについては下記の記事で取り上げました。

今回は、自社のサーバーやパソコンで保存するケースを考えてみようと思います。

大企業であればバックアップシステムを導入して、定期的に別媒体にバックアップを作成するといった方法も考えられますが、あまりコストをかけたくない中小零細企業や個人事業者の場合はそこまでできません。

個人的にお勧めしているのは、オンラインストレージを契約してパソコン(サーバー)とデータを二重化しておくこと。

DropboxやOneDriveなどであれば、パソコンなどの特定フォルダに保存しておけば自動的にオンラインとデータを同期してくれます。

仮にパソコンのSSDなどがダメになってデータが破損したとしても、オンライン上のデータは残っているため新しいパソコンを準備すればすぐにデータにアクセスできます。

最近だとセキュリティやコストの観点などからパソコン本体には大容量のストレージを載せずに、データはすべてオンラインに置くという運用をしているケースもあるかもしれません。

バックアップという観点で考えるのであれば、何らかの形でデータが2箇所にあるという状態になるよう検討した方がよいでしょう。

実際にデータが飛んでしまった状態で税務調査を受けたとして、その場合の取扱いがどうなるかは状況次第だと考えます。

バックアップを取っていたものの会社側ではどうしようもない理由で元データもバックアップも両方破損していたのであれば配慮してもらえる可能性は高いと思いますが、バックアップを一切取っていなかったらどうなるか。

やるべきことはきちんとやっているんですよということを示すためにも、何らかの形でバックアップを取っておいた方がよいでしょう。

なお2024年1月以降の電子データの保存については、検索要件などを不要とする「紙とデータ」の両方を保存する方法があります。

この場合データが破損したとしても、少なくとも印刷した紙が残っているのであれば大きな問題にはならない気もします。

「データが破損していては、条件であるダウンロードの求めに応じていない」とか細かいことを言い出されるとメンドウですが、わざわざそんなことを言い出すケースがあるのかどうか。

トラブルを避けるためにも、ご自身のデータ保存の状況に応じて少なくとも2箇所にデータを保存しておく方がいいでしょう。

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バックアップの仕組みを業務の中に組み込んでおく

「データを2箇所に」という点では専用サービスを使う時にはどうするんだという問題は残ります。

サービスにデータをアップロードする際に、元ファイルを別途自社サーバーに放り込んでおくという方法も考えられますが、保存のためにそこまで手間をかけるかは悩ましいところです。

私の場合は電子取引データはクラウド会計ソフトに保存していますが、クラウド会計ソフトに保存すると同時に元ファイルはパソコン上の年度別のフォルダに移しています。

これでオンライン(クラウド会計)とローカル(パソコン)にデータを二重に保存している形になります。

バックアップのやり方にもいろいろありますが、大事なのは負担を感じずに行える体制を作っておくこと。

「バックアップ作業をしなければならない!」とわざわざ意識しないといけないような方法ではどこかで破綻します。

ムリせず自然と気付いたらバックアップが取れている。そのようなバックアップ体制を検討してみてはいかがでしょうか。

投稿者

加藤 博己
加藤 博己加藤博己税理士事務所 所長
大学卒業後、大手上場企業に入社し約19年間経理業務および経営管理業務を幅広く担当。
31歳のとき英国子会社に出向。その後チェコ・日本国内での勤務を経て、38歳のときスロバキア子会社に取締役として出向。30代のうち7年間を欧州で勤務。

40歳のときに会社を退職。その後3年で税理士資格を取得。

中小企業の経営者と数多く接する中で、業務効率化の支援だけではなく、経営者を総合的にサポートするコンサルティング能力の必要性を痛感し、「コンサル型税理士」(経営支援責任者)のスキルを習得。

現在はこのスキルを活かして、売上アップ支援から個人的な悩みの相談まで、幅広く経営者のお困りごとの解決に尽力中。

さらに、商工会議所での講師やWeb媒体を中心とした執筆活動など、税理士業務以外でも幅広く活動を行っている。
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