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電子帳簿保存法への対応を進めれば経理をデジタル化できるのか。今回はこの点について考えてみましょう。

国税庁に電子帳簿保存法の特設サイトがオープン

先日国税庁のホームページ内に「電子帳簿等保存制度特設サイト」が開設されました。

電子帳簿保存法に関連する情報への入口となるポータルサイトといった位置づけのものです。

少し気になったのが、サイトの冒頭に書いてある

電子帳簿保存法は、税務関係帳簿書類のデータ保存を可能とする法律で、同法に基づく各種制度を利用することで、経理のデジタル化が図れます。

という部分。

要するに

「電子帳簿保存法により使える制度を活用することで、経理のデジタル化ができますよ」

と。

個人的には、この書き方には違和感を感じていて、電子帳簿保存法に対応したからといって経理がデジタル化されるわけではないと考えています。

今回は、この点についてまとめておこうと思います。

電子帳簿保存法への対応=経理のデジタル化?

こうした話をする際に、確認しておくべきなのは

「経理のデジタル化って具体的にどういうこと?」

という点。

明確な定義があるわけではなく、百人いれば百通りの定義が出てくることになるでしょう。

DXに関する説明としてよく使われるものとして、DXに至るまでに

  1. デジタイゼーション(Digitization)
  2. デジタライゼーション(Digitalization)
  3. デジタルトランスフォーメーション(Digital Transformation)

の3つの段階があると説明されます。

簡単に言えば

  • 1は紙などのアナログデータをデジタルデータに変えること
  • 2は業務プロセスをデジタルに置き換えること
  • 3は業務のデジタル化により蓄積したデータをビジネスに活用すること

といった感じです(定義は人により異なりしますので、異論はあるかもしれません・・・)。

私の考える「経理のデジタル化」とは、ここでいう2のデジタライゼーションです。

業務プロセスをデジタルベースに置き換えて、少なくとも紙を見ながらのデータ入力や再入力などがない状況を想定しています。

このように考えた場合、電子帳簿保存法に対応することでこうした状況が実現できるのかどうか、保存区分ごとに確認してみましょう。

電子帳簿書類

会計ソフトをすでに利用しているのであれば、すでに会計ソフトの中にデータはあります。

そのデータを紙に印刷してなくてもいい、というのが電子帳簿保存法の制度ですから、対応したとしても経理業務に活用できるデータが増えるわけではありません。

「電子帳簿保存をしたいので、会計ソフトを導入する」ということであれば、新たにデータが手元にできますので、経理のデジタル化につながるかもしれませんが、こうした理由で対応するケースはまず考えられません。

また、Excelで作成した請求書などの書類についても、会計ソフトと状況は同じです。

紙に印刷して保存する必要がないというだけですから、使えるデータに変化はありません。

手書きの請求書を請求書ソフトに置き換えるというケースはあり得ますが、「電子書類の保存をしたいから」という理由で切り替えするケースがあるか?

通常であれば、「請求書発行業務を効率化したいから」であり、電子帳簿保存法対応が理由にはならないでしょう。

スキャナ保存

スキャナ保存は、先ほどのDXの3段階でいえば「1.デジタイゼーション」に該当します。

紙の請求書をスキャンしてPDFファイルにしても、そのPDFをみながら会計ソフトに入力しているのでは、「経理のデジタル化」とはいえません。

スキャナ保存にOCRでの読み取りを加えて、会計ソフトにインポートできるデータにするという方法も考えられます。

ただ、OCRの精度が100%になることはありませんので、修正対応等を考えると、スキャナ保存への対応は「経理のデジタル化」にはつながらないというスタンスです。

電子取引

PDFファイルの請求書がメールで送られてきて、そのまま保存したとしても、状況としてはスキャナ保存と何も変わりません。

繰返しになりますが、受け取ったファイルを見ながら会計ソフトに入力する状況は「経理のデジタル化」ではありません。

EDI取引であれば、会計ソフトへの入力が効率化されると思いますが、これも「電子帳簿保存法に対応するため」ではなく、あくまで業務の効率化を目的として導入しているはず。

つまり電子帳簿保存法に対応しようという取組みが、ダイレクトに経理のデジタル化になるわけではありません。


電子帳簿保存法という法律は、あくまで取引書類などの保存について

  • 電子取引:データで保存しなさい
  • その他の帳簿書類:データで保存してもいいよ

ということを決めているだけです。

「経理のデジタル化」のために仕組みを変更するのは、経理業務や会社内の業務の効率化を目的として行うはず。

極端なことをいえば、紙での帳簿書類の保存を受け入れるのであれば、電子帳簿保存法がなくても「経理のデジタル化」は可能です。

こうした理由により、電子帳簿保存法への対応そのものが経理のデジタル化につながるとは考えていません。

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「デジタルインボイス」は中小企業でも使えるEDIシステム

PDFファイルというのは非常に便利なフォーマットで、今やなくてはならない存在でしょう。

ただし、「経理のデジタル化」を考えた場合には

「デジタル化したような気分にさせてしまうもの」

という点に注意が必要です。

「ウチの会社は関連書類をすべてPDFファイルにしてるから、経理業務はデジタル化されてるよ」

といいつつ、PDFファイルを見ながら会計ソフトに入力していませんでしょうか?

「経理のデジタル化」という点では、個人的にはデジタル庁が推進している「デジタルインボイス」に期待をしています。

中小企業や個人事業主は今までコストや導入の難しさから、EDI取引を積極的に導入することはできませんでした。

「デジタルインボイス」により、こうした状況が一変する可能性があります。

中小企業などが現在利用しているソフトが「デジタルインボイス」に対応すれば、特に大きな変更なく請求書のやりとりをデータで行うことができるようになります。

「デジタルインボイス」が受発注の仕組みにまで広がるかどうか、現状ではわかりませんが

『「デジタルインボイス」は中小企業でも負担なく使えるEDIの仕組み』

というのが私の理解です。

こうした新たな仕組みも活用しつつ、経理業務がデジタル化されることを期待しています。

投稿者

加藤 博己
加藤 博己加藤博己税理士事務所 所長
大学卒業後、大手上場企業に入社し約19年間経理業務および経営管理業務を幅広く担当。
31歳のとき英国子会社に出向。その後チェコ・日本国内での勤務を経て、38歳のときスロバキア子会社に取締役として出向。30代のうち、7年間を欧州で勤務。

40歳のときに会社を退職。その後3年で税理士資格を取得。

中小企業の経営者と数多く接する中で、業務効率化の支援だけではなく、経営者を総合的にサポートするコンサルティング能力の必要性を痛感し、「コンサル型税理士」(経営支援責任者)のスキルを習得。

現在はこのスキルを活かして、売上アップ支援から個人的な悩みの相談まで、幅広く経営者のお困りごとの解決に尽力中。
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