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電子取引データの保存については、通販サイト上でデータが確認できれば問題ないとする意見もあるとのことです。この点について検討してみたいと思います。

「ネットで見れるから大丈夫でしょ」と言い切れるか?

先日税務雑誌を読んでいたところ、電子取引データについての記事があり、その中で

「通販サイトで備品等を購入した場合、通販サイト上で購入履歴を確認できれば、わざわざ領収書データなどをダウンロードしておかなくても、電子帳簿保存法への対応として問題ないのでは、といった声がある」

という旨の記述がありました。

記事の内容としては、いくつかの通販サイトについて調査した上で、検索要件を満たさないのでダウンロードした方が無難、といった論調でまとめられていました。

この記事を読んで

「領収書データを毎回ダウンロードするの面倒だから、そういう風に考える人も出てくるよね」

と思うと同時に

「そうはいっても、この考え方で対応してしまうと、税務調査の時に問題になる可能性があるな」

と感じた次第です。

今年1月から電子取引についてデータ保存が義務化されていますが、2年間の猶予があることもあり、税務調査で重点的にチェックされることは今後数年はないでしょう。

さらにいえば、数年後であっても調査官がまったくチェックせずにスルーする可能性もないとは言えません。

とはいえ、税務調査で指摘を受けるのは気分のよいものではありませんので、対応できることは事前に対応しておくべきでしょう。

そこで今回は、領収書データ等をダウンロードせずに、通販サイトでの閲覧で対応しようとした場合の問題点について整理しておきます。

注意すべきは「検索要件」と「サービスの継続性」

通販サイトでは「検索要件」を確保できない

データで受取った請求書などはデータのまま保存することが義務化されましたが、単に保存するだけでは不十分で

  • システム関連書類の備付け
  • パソコン・モニター・プリンターなどの備付け
  • 検索要件の確保
  • 事務処理規程の備付け(他にタイプスタンプを押すなどの方法もあり) 

という条件を守る必要があります。

この中で面倒なのが「検索要件の確保」です。

取引年月日・取引金額・取引先で検索できるようにしておく必要があります。

私も仕事上、いくつかの通販サイトを使っていますが、この3項目すべてを満たすサイトに出会ったことがありません。

検索要件を満たさない通販サイト上で取引データを保存・閲覧できたとしても、電子帳簿保存法が求める保存方法にはなっていませんので、問題となる可能性があります。

結果として、領収書データ等をダウンロードして、国税庁が示している方法でファイル名を変更するか、もしくは別の電子取引データを保存するサービス等を使う必要があり、ダウンロードがどうしても必要となります。

サービスは長期間提供されるのか?

次に問題となるのは、通販サイトのサービスが長期間にわたり提供されるのかどうかという問題です。

長期間と書きましたが、法人税法でいえば申告期限から7年間保存しておく必要があります。

サービスの提供期間には

  1. 取引履歴を常に過去7年分閲覧できる状態になっているかどうか
  2. その通販サイトのサービス自体が将来にわたり継続されるかどうか

という2つの視点が必要です。

仮に現時点で、通販サイトの取引履歴を過去7年分閲覧できたとしても、それはあくまでその通販サイトが顧客サービスとして提供しているだけであり、規約等で保証してくれていません。

つまり、ある日突然

「今後は過去1年分の取引履歴だけ閲覧できるようにします」

といった変更が行われる可能性は常にあります。

そうなってしまうと

「通販サイトで閲覧できるから税務調査が来ても大丈夫」

とはならないわけです。

さらに、もう一つのポイントは、その通販サイトが将来も営業を継続してくれるかどうか。

業績不振等により突然サイトを閉鎖するという可能性もゼロではありません。

領収書データなどをダウンロードしていないと、突然サイトを閉鎖するとなった場合に、慌てて過去のデータをすべてダウンロードしなければならなくなります。

少なくとも通販サイトが電子帳簿保存法に対応する形での取引データの保存・閲覧を規約等で保証してくれていないと

「通販サイトで閲覧できるから大丈夫」

とはいえないということです。

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考え方を理解した上でベストな方法を検討する

主に上記2点の理由から、通販サイトで領収書等をダウンロードせずに運用するのはリスクがあると考えています。

逆に言えば

  • 通販サイトで「検索要件」を満たした取引データの検索が可能
  • 過去7年分のデータ保存・閲覧を保証してくれる

という状況であれば、ダウンロードせずに通販サイトでのデータ閲覧で対応することも可能と考えます。

※この場合であっても、通販サイトの突然の閉鎖というリスクは残ります。

電子取引データの保存にあたっては、考え方や理由を理解した上で、自社にとってどのような対応をするのがベストか検討いただければと思います。

なお、以前Amazonでの取引を題材に、保存方法をどうすべきか検討した記事があります。

ご興味のある方はご覧いただければと。

投稿者

加藤 博己
加藤 博己加藤博己税理士事務所 所長
大学卒業後、大手上場企業に入社し約19年間経理業務および経営管理業務を幅広く担当。
31歳のとき英国子会社に出向。その後チェコ・日本国内での勤務を経て、38歳のときスロバキア子会社に取締役として出向。30代のうち、7年間を欧州で勤務。

40歳のときに会社を退職。その後3年で税理士資格を取得。

中小企業の経営者と数多く接する中で、業務効率化の支援だけではなく、経営者を総合的にサポートするコンサルティング能力の必要性を痛感し、「コンサル型税理士」(経営支援責任者)のスキルを習得。

現在はこのスキルを活かして、売上アップ支援から個人的な悩みの相談まで、幅広く経営者のお困りごとの解決に尽力中。
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