仕事に不慣れなうちはいろんな知識を必死に吸収しようとしますが、慣れてくると段々と選別して学ぶようになります。今回は、仕事上の知識を得る際には多少のムダも必要ではないか、というお話です。
経験を積むと変わる、知識を得るかどうかの「判断基準」
税理士業界に入ったばかりの頃は知らないことだらけで、とにかく気になることは何でも本を読んだりセミナーを受けたり、税務雑誌もすべてのページに目を通すなどしていました。
このときは、知識を得るかどうか決めるための判断基準が
「自分が知っているかどうか」(これを「第1基準」とします)
だったわけです。
知らないことであれば、将来的に使うかどうかなど気にせずに、とにかく知識を吸収しようとしていました。
ところが10年も同じ仕事をしていると、知っていることも少しずつ増えてきて、多少なりとも全体像が見えてきます。
そうなると、いつの間にか判断する際にもう一つ基準を使うようになります。
それは
「自分が使う機会がありそうか」(これを「第2基準」とします)
というもの。
判断の流れとしては当初は
- 知っている知識か?(第1基準) → 知っている → 学ばない
- 知っている知識か?(第1基準) → 知らない → 学ぶ
と第1基準だけ使っていましたが、知らないケースについては
知っている知識か?(第1基準) → 知らない → 将来自分が使う機会がありそうか?(第2基準)
と第2基準でフィルターをかけてから、学ぶかどうか決めるようになってきました。
全く知らないことはそもそも気づけない
当然のことながら時間は有限ですから、すべての知識を学ぶことは不可能です。
取捨選択する必要が生じますので
「自分が使う機会がありそうな知識かどうか」
という基準で判断することが増えてきます。
また、仕事で必要になったときに集中的に学ぶというのは、インプット・アウトプットの効率から考えればとても理にかなった方法でしょう。
ただし、あまりにこの方法に偏りすぎると、まったく知識がない分野ができてしまう可能性があります。
常々肝に銘じているのは
「何も知らないと、遭遇したときに気付かない」
という点。
仕事上の問題が目の前にあるのに、そもそもそれを問題として認識できない恐れがあるということです。
この仕事をしていると多少の知識を持っていても、気付かずに素通りしてしまうこともあります。
まったく何も知らなければ、気付く可能性はほぼゼロと言っていいでしょう。
つまり、知識を得るかどうか判断する時点で、将来使う可能性を正しく判断することは難しいということです。
だからこそ、「将来使う機会がありそうか」という判断基準(第2基準)に、重きを置きすぎないよう気をつけています。
「知ってるつもり」にも要注意
第1基準の「知っているかどうか」についても注意が必要です。
「知っている」と思っていたら、実は「知っているつもりだった」と。
知っている知識であっても、確認のために本を読んだり研修を受けることがありますが、大抵ひとつくらいは忘れていたりして「えっ?!」と驚く内容があったりするものです。
「仕事に慣れてきたときの方がミスをしやすい」とよく言われますが、「知っているつもり」で仕事をして誤った判断をしてしまう、というのが原因のひとつでしょう。
自分の判断をあまりに信用しすぎると、身につけておくべき知識に抜け漏れが生じる可能性があります。
そうした状況を避けるためのひとつの方法として、現時点では「ムダ」と思える知識であっても学ぶ機会を持っておいた方がいいのではないかと。
もちろん時間は有限ですから、すべての知識を得るのは不可能ですが、学ぶ際には多少の「遊び」を持っておいた方が、結局は仕事にもよい影響を与えるのではないでしょうか。
仕事で使う知識に関して「何を」学ぶかという問いに対する正解はありませんが、今回の記事がご自身で判断される際の参考になれば幸いです。
投稿者
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大学卒業後、大手上場企業に入社し約19年間経理業務および経営管理業務を幅広く担当。
31歳のとき英国子会社に出向。その後チェコ・日本国内での勤務を経て、38歳のときスロバキア子会社に取締役として出向。30代のうち7年間を欧州で勤務。
40歳のときに会社を退職。その後3年で税理士資格を取得。
中小企業の経営者と数多く接する中で、業務効率化の支援だけではなく、経営者を総合的にサポートするコンサルティング能力の必要性を痛感し、「コンサル型税理士」(経営支援責任者)のスキルを習得。
現在はこのスキルを活かして、売上アップ支援から個人的な悩みの相談まで、幅広く経営者のお困りごとの解決に尽力中。
さらに、商工会議所での講師やWeb媒体を中心とした執筆活動など、税理士業務以外でも幅広く活動を行っている。
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