前回の記事で、単に電子帳簿保存法やインボイスに対応するだけではDXに繋がらないという話を書きました。ではペーパーレス化そのものには意味がないのかどうか。その点について考えてみたいと思います。
「DX=ペーパーレス化」ではないものの…
前回の記事で、経済産業省などが言うところの「DX」を実現するには、電子帳簿保存法に対応するなどのペーパーレス化では不十分、といった話を書きました。
書き終えた後も、少し言葉足らずのような、書き足りないような感覚がありましたので、前回の記事の補足的な位置づけとして、改めてペーパーレス化について取り上げます。
簡単にいえば
「単に書類をPDFなどのデータにするだけのペーパーレス化って意味がないのかどうか」
という点について確認しておきたいということです。
本当の意味でのDXにつながらないのなら、ペーパーレス化には意味がないかというと、実際はそうではないと考えています。
その大きな理由のひとつは保管場所の問題。
特に会社が大きくなればなるほど、保管すべき書類は増えていきますので、保管スペースの問題は無視できません。
定期的に保存期間を過ぎた書類を廃棄するといった手間もかかります。
これらの書類がデータ化されれば、保管場所はサーバーやハードディスクに変わりますし、クラウドサービスに保管すればそうしたスペースすら不要です。
紙の書類だと、書庫内での保管状況がいつの間にか崩れてしまうこともあり、廃棄の際に対象書類を確定するのに一苦労といったこともありますが、データであれば紙の書類よりはこうした問題は少ないはず(ないとはいいませんが)。
規模が大きくなるほど、こうしたスペースの問題は常につきまといますので、そういう点ではペーパーレス化を進めることには意味があります。
ペーパーレス化によるメリットは、緊急時の事業継続の可能性が上がること
とはいえ、個人的には保管場所の問題よりも
「会社に行かなくても、書類を確認できること」
「バックアップがとりやすくなること」
の方が大きなメリットと考えています。
新型コロナウイルスの影響で出社が制限され、強制的にテレワークに移行したケースも結構あったかと思います。
今後は感染症による影響だけではなく、例えば災害により交通手段が使えなくなったり、会社の建物に影響が出て出社できないというケースも十分ありえます。

こうした場合に書類がすべて紙のままだと
- 自宅でのテレワークができず業務が完全に止まる
- 会社の建物に影響が出た場合、書類の破損や消失の可能性(社内サーバーだと、ペーパーレスでも同じリスクはありますがバックアップからの復旧の可能性は残ります)
といったリスクを抱えることになります。
書類をペーパーレスにしただけでテレワークができるわけではありませんが、ペーパーレスになっていないと、テレワークの可能性はほぼゼロです。
またペーパーレス化しないまま紙の書類の大部分が消失してしまうようなケースでは、そこから業務を復旧させるのはかなり大変な作業となります。
特に最近は地震などが増えていることもあり、このような災害による影響も現実的なリスクとして想定しておく必要があるでしょう。
そういう意味では
- 過去の書類をデータ化しておく
- 取引先からの書類はデータでもらうように業務の流れを変えていく
といった形でペーパーレス化を進めておけば、少なくとも営業活動や事務作業については継続できる可能性が高くなります。
目的が違えば手段も変わってくる
結局のところ何が言いたいかというと、本来的な意味でのDXをやりたいのであれば、単なるペーパーレス化では意味がないですが
- 書類の保管スペースの削減
- 出先からの書類の確認
- 災害時などのテレワークへの対応
といった目的が明確であれば、ペーパーレス化そのものもムダではないということです。
DXには将来に向けた競争力の強化や新しいビジネスの創出といった目的がありますが、中小企業のすべてがそのレベルのDXができるとは限りません。
その一方で、単なるペーパーレス化であっても
- 書類を探すムダな時間が減る
- 書類保管のための倉庫費用削減
- テレワークを導入して通勤時間・費用が削減できる
といったコスト削減や生産性の向上などは十分期待できるわけです。
大事なのは、その施策により「何を実現したいか」という点。
そこが明確であれば、事業者により取るべき手段や方法は変わってきます。
「なんかDXって言葉をよく聞くから、それっぽいこと何かしないと」
という考え方で何かをしても、効果は期待できません。
この機に、現在実施中の施策であっても目的が明確になっているかどうか、改めて確認してみてはいかがでしょうか。
投稿者

- 加藤博己税理士事務所 所長
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大学卒業後、大手上場企業に入社し約19年間経理業務および経営管理業務を幅広く担当。
31歳のとき英国子会社に出向。その後チェコ・日本国内での勤務を経て、38歳のときスロバキア子会社に取締役として出向。30代のうち7年間を欧州で勤務。
40歳のときに会社を退職。その後3年で税理士資格を取得。
中小企業の経営者と数多く接する中で、業務効率化の支援だけではなく、経営者を総合的にサポートするコンサルティング能力の必要性を痛感し、「コンサル型税理士」(経営支援責任者)のスキルを習得。
現在はこのスキルを活かして、売上アップ支援から個人的な悩みの相談まで、幅広く経営者のお困りごとの解決に尽力中。
さらに、商工会議所での講師やWeb媒体を中心とした執筆活動など、税理士業務以外でも幅広く活動を行っている。
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