電子取引データの保存についての悩みのひとつはデータを「どこに」保存するかということ。今回はマネーフォワードクラウドBoxでの保存について検討してみましょう。
電子取引データを「どこに」保存するかという悩み
電子取引データの保存については、2024年1月以降どのような保存方法を採用するとしても、とりあえずデータを保存しておく必要があります。
この場合の悩みのひとつは「どこに」データを保存しておくかというもの。
最も簡単な方法はパソコンやサーバー内にフォルダを作って保存することですが、この場合検索要件や改ざん防止措置(タイムスタンプなど)をどうするかという別の悩みが生じます。
令和5年度改正により検索要件を不要とする方法も整備されましたが、判定期間の売上が5千万円超の事業者はデータをわざわざ印刷しておく必要があります。
売上が5千万円を超えるような事業者であれば
「せっかくデータで受け取っているのに、わざわざ印刷するくらいならデータの保存だけで済む方がいい」
というニーズもそれなりにあるはず。
その場合、最近であれば会計ソフト内に保存する方法が考えられますが、電子帳簿保存法のためだけにわざわざ会計ソフトを変更したくないというケースもあるでしょう。
こうしたケースで考えられる方法のひとつが電子取引データの保存に対応した保存サービスの利用です。
選択肢のひとつとして、マネーフォワードが提供しているマネーフォワードクラウドBoxというサービスがあります。
今のところ無料で使えるサービスであり、同社の会計ソフトなどの利用は強制されていませんし、電子取引データ保存に対応していることを示すJIIMA認証も取得済みのサービスです。
マネーフォワードクラウドBoxでのアップロード手順
このサービスについて最近改めて仕様などを確認したところ、以前は無かったAI-OCRでの読取りに対応するなど、便利になっている点もあります。
ここでは検索要件を満たす形(=他の要件を満たせばデータを印刷する必要の無い方法)でマネーフォワードクラウドBoxに直接電子取引データを保存する方法を確認しておきましょう。
※初期設定の手順などは割愛します。
【1】マネーフォワードクラウドBoxを開き「アップロード」をクリック
【2】点線の枠内に保存するファイルをドラッグ&ドロップ
※一度に50ファイルまでまとめてアップロードできるとのことです
【3】必要項目を設定して「アップロード」をクリック
設定項目としては以下の通りです。
- 自動読取する:チェックを入れる・・・これにより取引日・取引先・取引金額をAI-OCRが読み取ってくれます
- 授受区分:「受領」を選択・・・必須項目ではありませんが、自分が受け取ったものか発行したものか一目でわかるよう設定しておきましょう
- 書類種別:「自動読取する」にチェックを入れると必須項目となるため該当する書類の種別を選択・・・なぜか「請求書」しか選択肢にあがってきませんがとりあえず選択します(選択しないとアップロードできません)
【4】アップロードしたデータをクリックし、必要項目を入力して保存
取引日・取引先名・金額を確認して必要があれば修正します。AI-OCRにより読取りされたデータについては項目欄の右上のところに「読取結果」と表示されます。
今回は取引日が読み取られていませんでしたので手入力。取引先名も「Amazon.co.j」となぜか最後のpが読み取りされていませんでしたので修正。
金額は正しく読み取りされていましたのでそのまま使用します。
この3項目を入力することにより、電子帳簿保存法で必要とされる検索要件を満たすことができます。
修正・追記等が完了したら「保存」ボタンを忘れずに押しましょう。
これでマネーフォワードクラウドBoxでの電子取引データの保存が完了しました。
無料サービスでも問題はないか?
アップロードして保存する手順自体は難しいものではありません。
ただし会計ソフトで電子取引データを保存した場合には
- 仕訳日→取引日
- 摘要→取引先
- 仕訳金額→金額
としてマネーフォワードクラウドBoxで検索できるように自動的に登録してくれます。
こうした手順と比較すると、AI-OCRのサポートがあるとはいえ、仕訳入力とは別に検索用の3項目を修正・追記する手間が発生する点には注意が必要です。
また無料サービスということでバックアップをきちんととってくれるのかという心配もあります。
この点について本記事執筆時点では、マネーフォワードクラウド利用規約では無料でサービスを利用している契約者については、マネーフォワード側でのデータバックアップの対象外とされていますが、例外としてマネーフォワードクラウドBoxについてはデータバックアップの対象とされています(利用規約第17条5)。
現状では、データのバックアップについても心配はなさそうです。
とはいえ民間企業が提供するサービスであり、タイムスタンプも無料ではありませんので、自社の利益獲得に貢献しないとなった場合(特に他の有料サービスを契約していない場合)には有料化される可能性は十分にあります。
「無料だからこれでいいや」と使い始めたものの、突然有料化となった場合に、各データにタイムスタンプが押されていることから、過去の保存データを他のサービスに移行できない可能性が高いと考えておくべきです。
電子取引データの保存方法について検討中の事業者にとっては、使い始めるハードルが低いサービスであることには変わりありませんが、こうした点も踏まえて検討いただければと思います。
投稿者
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大学卒業後、大手上場企業に入社し約19年間経理業務および経営管理業務を幅広く担当。
31歳のとき英国子会社に出向。その後チェコ・日本国内での勤務を経て、38歳のときスロバキア子会社に取締役として出向。30代のうち7年間を欧州で勤務。
40歳のときに会社を退職。その後3年で税理士資格を取得。
中小企業の経営者と数多く接する中で、業務効率化の支援だけではなく、経営者を総合的にサポートするコンサルティング能力の必要性を痛感し、「コンサル型税理士」(経営支援責任者)のスキルを習得。
現在はこのスキルを活かして、売上アップ支援から個人的な悩みの相談まで、幅広く経営者のお困りごとの解決に尽力中。
さらに、商工会議所での講師やWeb媒体を中心とした執筆活動など、税理士業務以外でも幅広く活動を行っている。
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