先日とあるネットの記事を見て、40才の時に会社を辞めた理由について思い出していました。そこから派生して、税理士にとっての学び直しや「リスキリング」等について考えてみたいと思います。
40才で会社を辞めた理由は「このままでは通用しなくなる」という感覚
先日ネットの記事で、
「40~50代の正社員のスキルが転職市場で通用しない・・・云々」
といったものがありました。
書いてある内容をすべて鵜呑みにするつもりはありませんが、私自身が会社を辞める前に感じていたことと非常に近いな、と。
会社を辞める前の2年間は、スロバキアで単身赴任をしてましたので、(家に帰るのは結構遅かったものの)ひとりになる時間は日本にいるときよりも多くなります。
そうすると、いろいろと考え事をしてしまうもので、そうした中には
「今の会社って未来永劫安泰と言えるんだろうか?」
「50歳くらいになったときに、もし会社から必要とされなくなったら転職できるんだろうか?」
「今やっている仕事のスキルって、他の会社でも通用するんだろうか?」
などといったものもありました。
要するに
「自分ができること・持っているスキルが将来的にも世の中に必要とされるんだろうか?」
という問題意識から出たものが多かった気がします。
こうしたことを40才になる前の数年間考えていて、最終的には
「仮に50歳になったときに(自発的ではない形で)方向転換を求められたときに、対応できないんじゃないか」
という思いが強くなり、退職に至ったわけです。
もちろんこれが会社を辞めた理由のすべてではありませんが、考えるキッカケとなった根っこの部分には、常にこうした問題意識がありました。
資格がすべてを解決するわけじゃないけれど・・・
「スキルが通用しなくなるのが怖い」ということで国家資格を取るべく「税理士」の資格を取ったわけですが、今思うと少し考えが浅かったかなという部分も多少あります。
「税理士の資格を取ればすべて安泰」と考えていたわけではもちろんありませんが、資格を取っても仕事がなければ生活はできませんので、当然自分で仕事を見つける必要があります。
そういう点では楽だとは言えませんが、それでも会社員時代と比較すると
- 少なくとも「税理士」という仕事をする上でのベースができた
- 自分で方向性を決めることができる
- どれだけの仕事を受けるか、どれだけの時間働くかも自分で決められる
- 新しいことを始めるのに誰かの了承を取る必要が無い
- 満員電車に揺られて通勤する必要も無い(この点は、コロナで状況は変わりましたが)
- 付き合う人も自分で決めていけばいい
等々、メリットも大きく増えたと感じています。
新たなスキルを身につけたからといってすべてが解決するわけではありませんが、新たに得られるものも多いわけです。
環境変化への対応のため「リスキリング」が必要
最近は日本でもデジタル化の進展等により、従来のスキルが通用しなくなるケースが増え、リカレント教育やリスキリングといった言葉を目にする機会が増えてきました。
それぞれの用語の定義を調べてみると
- リカレント教育:現在の職を離れて学び直しを行い、新しい職に就くこと
- リスキリング:今の会社で価値を生み続けるために、新たなスキルを身につけること
といった使い方がされているケースが多いようです(定義の細かい点、誤解等あるかもしれませんがご容赦ください)。
私が会社を辞めて税理士になったのは、この区分でいえば「リカレント教育」に該当します。
では税理士の資格があれば将来にわたって安泰かといえば、そうではないでしょう。
これは税法・税制が毎年変わることへのキャッチアップが必要という意味で言っているのではありません。
例えばもし消費税の電子インボイスが取引の主流となるような世の中の変化があった場合、税法だけ知っていてもお役に立てない可能性があります。
電子インボイスを発行・受領するためにどういったソフトが適切か、また社内フローの何を見直さないといけないか、といったことまでアドバイスできなければ、「役に立たない」と判断される可能性があるのではないかと。
つまりデジタル化の進展により税理士に求められるスキルも変わっていく可能性があると。
だとすれば、仮に税理士の仕事を続ける場合でも、「リスキリング」の必要性については意識しておく必要があります。
そして「リスキリング」に取り組む際のモチベーション・原動力として、私が昔感じた
「今持っているスキルが将来的にも世の中に必要とされるんだろうか?」
という感覚を持ち続けておくことが重要です。
いろいろと大変な時代になってきましたが、「税理士だから税金のことだけやっていればいい」という時代ではなくなってきたということで。
「学び直し」というのは、今や誰もが避けられない問題ではないでしょうか。
ちなみにリスキリングについて、経済産業省の「第2回 デジタル時代の人材政策に関する検討会」(2021年2月26日)の中でわかりやすいプレゼンがありましたので、リンクを貼っておきます。
投稿者
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大学卒業後、大手上場企業に入社し約19年間経理業務および経営管理業務を幅広く担当。
31歳のとき英国子会社に出向。その後チェコ・日本国内での勤務を経て、38歳のときスロバキア子会社に取締役として出向。30代のうち7年間を欧州で勤務。
40歳のときに会社を退職。その後3年で税理士資格を取得。
中小企業の経営者と数多く接する中で、業務効率化の支援だけではなく、経営者を総合的にサポートするコンサルティング能力の必要性を痛感し、「コンサル型税理士」(経営支援責任者)のスキルを習得。
現在はこのスキルを活かして、売上アップ支援から個人的な悩みの相談まで、幅広く経営者のお困りごとの解決に尽力中。
さらに、商工会議所での講師やWeb媒体を中心とした執筆活動など、税理士業務以外でも幅広く活動を行っている。
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