今年の税理士試験は、先週の8月7~9日の3日間にわたり行われました。

この暑い中、税理士試験を受験された方達には本当に頭が下がります。特に今年は酷暑といわれる異常気象、ペットボトルの持ち込みも認められるくらいですから、さぞ大変だったと思います。

さて、毎年この時期に税理士試験に関連した内容を投稿していますが、さすがに試験時の記憶も薄れてきていますので、今年は少し違う内容を書きます。

テーマはズバリ、「税理士試験の勉強は、実務に役立つのか?」。

税理士試験の勉強ではその後の実務を意識すべきでない?

このテーマについては、以前にも下記の投稿で書きました。

税理士試験の勉強と税理士の実務は別物か?

実際、いろいろな方が書かれたものを読んでいると、「税理士試験はとにかく合格するのが目的。その後の実務など考えないで、合格するためにやるべきことを最優先でやるべき。」というスタンスの方もいらっしゃいます。

個人的には、この考え方も間違いではないと思っています。

ではなぜ、「税理士試験の勉強は、その後の実務のベースになる」と考えている私が、上記のような考え方についても間違いではないと言うのか?

その理由は、人はそれぞれ知識・経験・背景・環境が異なるため、「税理士試験のための勉強」という一つの事象に対しても、その人ごとに捉え方が変わってくるからです。

経験・知識・背景・環境が異なれば結論も変わる

私の場合であれば、40歳のときに子供もいる状況で、19年間勤めた会社を辞めました。

働き口としては、父親の税理士事務所があったとはいえ、税理士試験に合格しなければ最終的に事務所は継げませんし、そもそも試験に合格する保証などどこにもありません。

当時父親もすでに70歳を超えていましたので、税理士試験に受かる前に最悪の事態が生じたらどうしようかと心配したり、まさに背水の陣でした。

最短で試験に合格して、できるだけ短期間で引継ぎできる体制を整えないといけなかったため、試験が終わってからじっくり実務を学べばいいなどと悠長なことを言っている余裕もなかったわけです。

(この状況、今自分で書いていて少し冷や汗が出てきそうですが・・・。もちろん「ダメだったらまたどこかに就職するしかないな」と腹を括って臨んでいたわけですが、冷静に考えたら結構無茶しているなとも思います。)

そのため試験に受かるのは当然として、同時にとにかく実務をするために吸収できるものはすべて吸収する、というスタンスで臨んでいました。

こうした背景や経験を踏まえて、「税理士試験の勉強は、その後の実務のベースになる」と考えるようになったわけです。

もちろん、今実務をやっていて、試験勉強で習わなかったことなんて山ほどありますが、やはり基礎がなければ積み上げるのにも余計に時間がかかるという考え方は変わりません。

一方で、税理士試験を受験されている方の中で、私のような状況が当てはまる方がどれくらいいらっしゃるか?恐らくほとんどの方が異なる環境・背景の元で試験勉強をされていると思います。そのため、私の考え方が当てはまらない方も、大勢いらっしゃるでしょう。

大げさに言えば、私に見えている世界と、この投稿を読んでいただいている方に見えている世界は違うわけです。ですから当然同じ事象に対しても、人それぞれ得る結論は異なってきます。

大切なのは「自分にとっての正解」を探すこと、そして最後は決めること

受験される方を取り巻く状況は千差万別です。各人の置かれている状況・背景は異なるわけですから、他人の意見をそのまま採用しても、それはその人にとっての正解にはなりません。

今の世の中情報があふれかえっています。多くの情報に触れていると、「一体どれが正しいんだ??」といいたくなることも多いと思います。

結局最後は「自分にとっての正解」を自分で見つけるしかない訳で、正しいかどうかわからなくても、最後は自分で「これだ!」と決めるしかありません。

実際には「これだ!」というところまでいかなくて、「正しいかわかんないけど、とりあえずこれに決めとくか」という感じで決めるしかないことも多々あります。

ただ、「経験・知識・背景・環境の異なる他人の発信している情報が、すべて自分に当てはまるわけではない。そうした情報を元に最後は自分で決めるしかない。」、このことを理解するだけでも情報に対する接し方は変わるでしょう。

とはいえ、自分で決めるという作業はしんどいものです。そんなときは、最初の一歩として、そうした情報のなかで共感できる部分だけまねることから始めてはいかがでしょうか?

まねしてやってみて自分に合わなければ、また見直してみる。そうした作業を繰り返している内に、徐々に自分に合うものが見つかり、「自分にとっての正解」を決められるようになります。

一旦決めたら後は迷わず突き進む、でもときどき来し方を振り返って、「本当にこれでいいのか?」と自問・自省することを忘れずにいれば、間違っていたときの軌道修正も早めに対応できます。

では最後に「税理士試験の勉強は、実務に役立つのか?」という問いに対する答えですが、これも自分で決めるしかありません。ちなみに、私は他人がなんと言おうと役に立ったと信じています。

そうやって自分で判断して進んだ先に、道は開けてくると思いますので、受験生の皆様、是非自分の信じた道を突き進んでください。

投稿者

加藤 博己
加藤 博己加藤博己税理士事務所 所長
大学卒業後、大手上場企業に入社し約19年間経理業務および経営管理業務を幅広く担当。
31歳のとき英国子会社に出向。その後チェコ・日本国内での勤務を経て、38歳のときスロバキア子会社に取締役として出向。30代のうち、7年間を欧州で勤務。

40歳のときに会社を退職。その後3年で税理士資格を取得。

中小企業の経営者と数多く接する中で、業務効率化の支援だけではなく、経営者を総合的にサポートするコンサルティング能力の必要性を痛感し、「コンサル型税理士」(経営支援責任者)のスキルを習得。

現在はこのスキルを活かして、売上アップ支援から個人的な悩みの相談まで、幅広く経営者のお困りごとの解決に尽力中。