先日、お客様から言われたある一言が気になっていました。経営数字を伝えることの意味を改めて考えてみたいと思います。
事実を知ることは、楽しいこととは限らない
先日お客さま訪問をして話をしている中で、何気なく言われた一言が、
「こうやって、数字を毎月見せられるのはツラい」
でした。
そのあとに、
「でもこうやって毎月数字を確認しておかないと、手を打つのが遅れるから、確認するのは大事だよね」
と仰っていましたが、冒頭の発言は私にとっては驚きでした。
というのも、この会社、決して業績が悪いわけではありません。むしろ数字でいえば、かなり良い状態です。
それにもかかわらず、数字と向き合うことを経営者は「ツラい」と感じることがあるのだと。
数字を見ていると、「将来もこの状態が維持できるのか」などいろんなことを考えてしまうと。
そこで改めて感じたのは、数字というのは曲げようのない事実であり、それを突きつけられることは、決して楽しいこととは限らないということです。
これって数字を報告する立場と報告を受ける立場で、受け止め方・感じ方が違うんだなと。
もちろん私自身も自分の経営数字は毎月確認していますが、それは自分で自分の数字を見ているだけであり、誰かから数字を突きつけられているわけではありません。
そのため、こうした「誰かから数字を突きつけられる」という感覚に対して、今まで少し無頓着だったのではないかと気付かされたわけです。
過去の結果ではなく、将来に目を向けてもらうために
税理士という仕事をしていると、過去の結果についての数字をまとめるケースがどうしても多くなります。
説明を受ける側からすると、起きてしまった結果に対して、
「こうなりました、原因はこれですよね、このままでは良くないですね」
といったことを言われたとしても、面白いはずがありません。
過去の結果の話だけでなく、
- その結果を受けて、改善するために何をすべきか(改善策)
- そうした改善策を取れば、どのような未来を実現できるか(将来像)
といった将来に向けての話がないと、単に責められているようにしか感じられないでしょう。
普段から意識して、過去の結果(実績)の説明にとどまらず、そこから先の話をしていたつもりですが、もしかすると1の改善策の話が大半で、それをすることによってどう変わるかという2の将来像についての話が十分できていなかったのではないかと。
経営数字を経営者に第三者の立場で報告するというのは、言葉が適切かわかりませんが、
「相手の喉元にナイフを突きつけるようなもの」
なのかもしれません。
それくらい慎重に対応するつもりをしておかないと、カンタンに相手を傷つける可能性がある。
だからこそ、報告を受ける相手が、将来に対して少しでも希望やワクワク感を持てるように、将来像がイメージできるような報告内容にする工夫を常にしておく必要があると感じています。
見えないサービスの価値をどうやって伝えていくか
冒頭の発言、その続きの後半部分がありましたので、お役に立てていると感じる反面、もっとうまいやり方があったんじゃないかとモヤモヤする部分が正直あります。
数字をまとめて報告するだけなら、この仕事「顧問料高いな」と思われてオシマイでしょう。
説明を聞いている相手が、苦痛を感じているかもしれないことを認識した上で、
- 少しでも苦痛を感じずにすむような説明の仕方
- 未来に目を向けることができような資料の準備
- 来月もまた話を聞きたいと思ってもらえるような内容と信頼関係
といったものをどれだけ用意できるか。
試算表や申告書以外は、形のないサービスを提供している仕事ですから、相手にその価値を理解していただく必要があります。
そうした意味で、今回の件、自分の仕事を見直す良い機会となりました。
ふとした瞬間にポロッと出るお客さまの本音、しっかり受け止めて大事にしていきたいと思います。
投稿者
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大学卒業後、大手上場企業に入社し約19年間経理業務および経営管理業務を幅広く担当。
31歳のとき英国子会社に出向。その後チェコ・日本国内での勤務を経て、38歳のときスロバキア子会社に取締役として出向。30代のうち7年間を欧州で勤務。
40歳のときに会社を退職。その後3年で税理士資格を取得。
中小企業の経営者と数多く接する中で、業務効率化の支援だけではなく、経営者を総合的にサポートするコンサルティング能力の必要性を痛感し、「コンサル型税理士」(経営支援責任者)のスキルを習得。
現在はこのスキルを活かして、売上アップ支援から個人的な悩みの相談まで、幅広く経営者のお困りごとの解決に尽力中。
さらに、商工会議所での講師やWeb媒体を中心とした執筆活動など、税理士業務以外でも幅広く活動を行っている。
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