毎年この時期になると、「年末調整の時期がやってきた・・・(ため息)」という気分になります。手間がかかる割にあまり単価も高くない業務。少しでも効率的にこなすために、何ができるのか考えてみました。

年末調整の課題のひとつは給与データの再入力

会計事務所で年末調整をする上で課題となるのは、資料回収の手間や記入内容の誤りなどを除くと、主に次の2点ではないかと思います。

  1. お客さまの給与ソフトと会計事務所の給与ソフトが異なる場合、給与データの再入力が生じる
  2. 税務署と各市町村への源泉徴収票・給与支払報告書の提出に時間がかかる

1については、会計事務所側の都合だけで、既に給与ソフトを使っているお客さまのソフトを変更してもらうことは難しいケースも多いでしょう。

そうなると、お客さまから給与明細をもらって会計事務所の給与ソフトに再度入力する、という作業が発生するケースが考えられます。

お客さまの給与ソフトの中で年末調整を完結させれば、再入力の問題は発生しませんが、この場合源泉徴収票や給与支払報告書を電子申告で送信できない可能性があります。

2については、会計事務所側のソフトに必要なデータがすべて入っていれば、電子申告で送信することが可能なため、紙で各市町村に送ることと比べれば、大きく効率化することができます。

しかしその場合には、1で触れた給与データの再入力の問題が生じることになります。

お客さまの給与ソフトの中で電子申告までできればよいのでしょうが、そもそも給与ソフトが電子申告に対応しているかという問題があったり、電子申告まで自分でできるレベルのお客さまであれば、会計事務所に年末調整を依頼しないということも考えられます。

そうすると、会計事務所として年末調整の業務を効率的に進めようとすると(給与計算を受託していないのであれば)、

お客さまの給与ソフト → 会計事務所の給与ソフト → 会計事務所の電子申告ソフト

という流れを前提にせざるを得ません。

その場合、

お客さまの給与ソフト → 会計事務所の給与ソフト

の部分をいかに手間をかけずに行うかがひとつのポイントとなります。

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給与データを再入力しないためにできることは?

会計事務所で給与データを再入力しない最も確実な方法は、

  • お客さまと会計事務所で同じ給与ソフトを使う
  • クラウド給与サービスを導入してもらって、その中で年末調整を完了させる

のどちらかです。

同じソフトを使っていれば、データをもらってきてそのまま使うことができますし、クラウド給与サービスであればわざわざお客さまのところまで行かなくても、給与データの確認や年末調整の作業を進めることができます。

とはいえ、先ほども書いたとおり、会計事務所側の都合で給与ソフトを変更してもらうのは容易ではありませんし、会計事務所側が複数の給与ソフトを使うことは作業効率の点からあまり望ましいとはいえません。

そうすると、わざわざ再入力をしているような場合には、会計事務所の給与ソフトのインポート機能を使うことが現実的な対応として挙げられます。

お客さまの給与ソフトからデータをエクスポートしてもらい、そのデータを受領して会計事務所側の給与ソフトにインポートすることになりますが、もちろん給与ソフトが異なればデータ形式が異なります。

そのため、最初だけ受領したデータをインポートできる形式に変換するシートをExcelで作成するなどの対応が必要になりますが、一度作成してしまえば毎年使うことができますので、効果は大きいでしょう。

また給与ソフトを使っていないような小規模のお客さまであれば、こちらからExcelシートを渡して給与データを入力してもらえば、同じようにインポート機能を活用して、再入力をなくすことが可能です。

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今後の改善に期待したい3つのこと

年末調整については、給与データの形式がソフト毎に異なるため、なかなか即効性のある対策が打ちにくく、もどかしい思いをする場面が多々あります。

年末調整業務を効率化する上で、今後個人的に期待したいこととしては、

  1. 給与ソフトが他の給与ソフトとAPI連携できるようになり、ボタンひとつで給与データが取り込めるようになること
  2. マイナポータルに保険料証明書のデータが集約されて、給与ソフトにボタンひとつで取り込めるようになり、証明書の提出・保管が不要となること
  3. 最終的には、マイナポータルの中で各個人が自分で年末調整を完了させることができるようになること

の3点があります。

給与ソフト間でデータ連携が容易になれば、かなり状況が改善されるでしょう。

そのため今回お伝えしたようなインポート機能をわざわざ使わなくても、ボタンひとつで給与データが取り込みできるような仕組みが広がることを期待しています。

また、資料回収にかかる工数も年末調整のひとつの課題です。マイナポータルに保険料証明書データが集約されて、個人からの提出が不要となるような時代が来れば、かなり効率化できるのではないかと。

最後に3点目については、実現の可能性がほとんど無いかもしれませんが、納税意識を持ってもらうためにも、年末調整は会社ではなく自分で行うべきものになってほしいと思っています。

投稿者

加藤 博己
加藤 博己加藤博己税理士事務所 所長
大学卒業後、大手上場企業に入社し約19年間経理業務および経営管理業務を幅広く担当。
31歳のとき英国子会社に出向。その後チェコ・日本国内での勤務を経て、38歳のときスロバキア子会社に取締役として出向。30代のうち7年間を欧州で勤務。

40歳のときに会社を退職。その後3年で税理士資格を取得。

中小企業の経営者と数多く接する中で、業務効率化の支援だけではなく、経営者を総合的にサポートするコンサルティング能力の必要性を痛感し、「コンサル型税理士」(経営支援責任者)のスキルを習得。

現在はこのスキルを活かして、売上アップ支援から個人的な悩みの相談まで、幅広く経営者のお困りごとの解決に尽力中。

さらに、商工会議所での講師やWeb媒体を中心とした執筆活動など、税理士業務以外でも幅広く活動を行っている。
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