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国税庁から発表されている新型コロナウイルス関連のFAQは、すでにかなりのボリュームとなっています。その中から、今回は不動産オーナーが注意すべきポイントを確認しておきたいと思います。

国税庁から発表されている新型コロナウイルス対応に関するFAQ

新型コロナウイルスに伴う外出自粛等により、大きな影響を受けている事業者の方も多いと思います。

そうした状況において使える税務上の制度や注意点については、国税庁が

国税における新型コロナウイルス感染症拡大防止への対応と申告や納税などの当面の税務上の取扱いに関するFAQ

としてまとめています。

今回様々な対策が実施されていることもあり、令和2年5月15日更新版ですでに57ページとなっていて、一般の方がすべてを読むには厳しいボリュームです。

今回はこの中から、賃貸物件を所有している方が、確認しておいた方がよいFAQをみていきたいと思います。

不動産オーナーが確認しておくべきFAQは?

賃貸不動産に直接関連するFAQとしては、「5 新型コロナウイルス感染症に関連する税務上の取扱い関係」の中に2つあります。

  1. 【法人税】問 4.《賃貸物件のオーナーが賃料の減額を行った場合》 〔4月 30 日更新〕(34ページ)
  2. 【消費税】問 12.《賃料の減額を行った場合の消費税率等の経過措置について》〔5月 15 日追加〕(48ページ)

※ページ番号は、5月15日更新版のもの

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【法人税】問 4.《賃貸物件のオーナーが賃料の減額を行った場合》

ここでは、新型コロナウイルス感染症の影響で、賃借人からテナントや住居・駐車場の賃料の減額を求められ、それに応じた場合の取扱いについて書かれています。

まず注意しないといけないのは、法人については合理的な理由がなく賃料を減額した場合、その差額が寄附金とされてしまうという点です。

例えば、仮に減額前の賃料を100、減額後の賃料を80とします。

合理的な理由なしに賃料を下げてしまうと、法人税の計算においては、

  • 法人の収入は80ではなく、100のままで計算
  • 差額の20(100-80)については、寄附金として経費処理

となってしまうわけです。

寄附金とされてしまうと、全額が経費とはなりませんので、法人税が想定していたよりも増えてしまいます。

新型コロナウイルスの影響下で賃料の減額に応じた場合に、寄附金とされてしまわないためには、以下の3つの条件を満たす必要があるというのが、このFAQで説明されている内容です。

① 取引先等において、新型コロナウイルス感染症に関連して収入が減少し、事業継続
が困難となったこと、又は困難となるおそれが明らかであること
② 貴社が行う賃料の減額が、取引先等の復旧支援(営業継続や雇用確保など)を目的
としたものであり、そのことが書面などにより確認できること
③ 賃料の減額が、取引先等において被害が生じた後、相当の期間(通常の営業活動を
再開するための復旧過程にある期間をいいます。)内に行われたものであること

「国税における新型コロナウイルス感染症拡大防止への対応と申告や納税などの当面の税務上の取扱いに関するFAQ」より引用 強調は筆者による

①③については問題ないと思いますが、ご注意いただきたいのが②。

取引先等の復旧支援であることを、書面で確認できるようにしておく必要があります。

この書面に関しては、国土交通省が不動産関連団体に対して4月17日に出した

「新型コロナウイルス感染症に係る対応について(補足その2)」

という文書の中で、覚書の記載例を掲載しています。

この文面通りに覚書を結ぶ必要はありませんが、作成する際の参考になるでしょう。

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【消費税】問 12.《賃料の減額を行った場合の消費税率等の経過措置について》

テナントなどの賃貸借契約においては、経過措置として、旧8%で請求・支払をされているケースもあるでしょう。

賃料の減額などにより賃料の変更等をしてしまうと、この経過措置の適用がなくなってしまうわけですが、賃料の変更が「正当な理由に基づくもの」であれば、経過措置をそのまま適用できるというのがこのFAQで説明されている内容です。

では、今回の新型コロナウイルス感染症の状況下で、「正当な理由に基づくもの」として取り扱われるのはどういったケースか?

FAQの中では、国土交通省から不動産関連団体に対しての要請を踏まえて、賃借人支援のために賃料の減額をするのであれば、「正当な理由に基づくもの」として構わないということです。

ただしこの場合も、先ほどの法人税のFAQと同様に、後日説明できるように賃料の減額についての書面(先ほどご紹介した覚書等)を残していただく必要があります。

なお、「国土交通省の要請が出る前に、賃借人が新型コロナウイルスの影響で大変だったので、賃料の減額に応じてしまったが、経過措置の適用はできないのか?」という方もいらっしゃるかもしれません。

この点についてはFAQの注書きの中で、

3 当該政府の要請が行われる前に、賃貸業者が、新型コロナウイルス感染症等の影響を受けた賃借人の支援のために賃料を一定の期間減額した場合も、同様に取り扱って差し支えありません。

「国税における新型コロナウイルス感染症拡大防止への対応と申告や納税などの当面の税務上の取扱いに関するFAQ」より引用

とされていますので、経過措置を適用して問題ないとのことです。

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頻繁に情報が更新されているため、最新情報の確認を

今回は、不動産賃貸に関連がありそうなFAQを2つピックアップしました。

このFAQに限りませんが、新型コロナウイルス感染症への対応・対策については、かなり頻繁に新しい情報が追加されています。

是非とも気になる内容については、最新の情報を確認されることをオススメします。

投稿者

加藤 博己
加藤 博己加藤博己税理士事務所 所長
大学卒業後、大手上場企業に入社し約19年間経理業務および経営管理業務を幅広く担当。
31歳のとき英国子会社に出向。その後チェコ・日本国内での勤務を経て、38歳のときスロバキア子会社に取締役として出向。30代のうち7年間を欧州で勤務。

40歳のときに会社を退職。その後3年で税理士資格を取得。

中小企業の経営者と数多く接する中で、業務効率化の支援だけではなく、経営者を総合的にサポートするコンサルティング能力の必要性を痛感し、「コンサル型税理士」(経営支援責任者)のスキルを習得。

現在はこのスキルを活かして、売上アップ支援から個人的な悩みの相談まで、幅広く経営者のお困りごとの解決に尽力中。

さらに、商工会議所での講師やWeb媒体を中心とした執筆活動など、税理士業務以外でも幅広く活動を行っている。
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