今回は、自動車にまつわる税金について書いてみたいと思います。
消費税の対象となる取引とは?
消費税法の第四条には「課税の対象」として次のように書いてあります(括弧書きは省略)。
これは、売上側から見た消費税の対象となる取引です。
「国内において事業者が行つた資産の譲渡等及び特定仕入れには、この法律により、消費税を課する。」
細かい判定など色々とあるのですが、少々乱暴にまとめますと「日本国内で事業者が物やサービスを有償で提供したら消費税をかけますよ」という意味です(特定仕入については一旦無視しています)。
一方で、第二条には「課税仕入」の定義が次のように書かれています(括弧書き一部省略)。
これは、仕入側から見た消費税の対象となる取引で、この仕入に伴って支払った消費税は、売上により預った消費税から控除することができます。
十二 課税仕入れ 事業者が、事業として他の者から資産を譲り受け、若しくは借り受け、又は役務の提供を受けること(当該他の者が事業として当該資産を譲り渡し、若しくは貸し付け、又は当該役務の提供をしたとした場合に課税資産の譲渡等に該当することとなるもので、第七条第一項各号に掲げる資産の譲渡等に該当するもの及び第八条第一項その他の法律又は条約の規定により消費税が免除されるもの以外のものに限る。)をいう。
この条文でポイントとなるのが、括弧書きの中の「他の者が事業として当該資産を譲り渡し、若しくは貸し付け、又は当該役務の提供をしたとした場合に課税資産の譲渡等に該当することとなるもの」という部分です。
物を買った相手が消費税を納めていない人であっても、もし仮にその人が「事業者として」その物を売ったとした場合に消費税の対象となるのであれば消費税の控除の対象になりますよ、という意味です。
この条文により消費税を納めていない消費者からの仕入についても仕入れた事業者は消費税を控除することができます。
中古車の下取りは消費税の対象?
1.下取り業者と交渉可能か?
この消費者からの仕入の例としてよく取りあげられるのが、「自動車の下取り」です。
サラリーマンが自動車を下取り業者に引き取ってもらう取引も、消費税の「控除」の対象となります。
ですから、車を売る際に「中古車の下取りは消費税の控除対象取引だから、消費税分を上乗せしてよ」と交渉することは間違いではありませんが、恐らく「提示価格は税込価格となっております」と言われてそこで話は終わると思います・・・
仕入側も商売でされていますから、少しでも安く仕入れるためにそんな消費税の話に関わっていられないということでしょう。
2.インボイス導入後は消費税の控除はできなくなる
ただし、この消費者からの仕入について消費税を控除できる制度も、インボイスが導入された後は順次無くなっていきます。
順次というのは、インボイス導入後も当面は消費者(免税事業者)からの仕入についても一部消費税の控除が認められるのですが、最終的には消費税を納めている事業者からの仕入についてのみ消費税の控除が認められるという形に変わっていきます。
なお、消費税率10%への引上げが平成31年10月に2年半延期されることに伴い、インボイス制度の導入は平成35年10月となる予定です。
ちなみに自動車を下取りに出したサラリーマンが消費税を税務署に納める必要があるかといいますと、これはその下取りの2年前の消費税の対象売上が1千万円以上かどうかなど、さまざまな判定を行わなければなりません。
が、副業をされていないサラリーマンであれば、通常は消費税の納税義務者にはなりませんのでご安心を。
自動車にまつわるその他の税金
自動車の話をしましたので、消費税以外の自動車にまつわる税金についても少し。
会社で自動車を購入した時の諸税の取扱いについて費用処理するか本体の取得価額として固定資産に計上するかという問題があります。
これについては、法人税法基本通達7-3-3の2には次のように書かれています。
7-3-3の2 次に掲げるような費用の額は、たとえ固定資産の取得に関連して支出するものであっても、これを固定資産の取得価額に算入しないことができる。
(1) 次に掲げるような租税公課等の額
イ 不動産取得税又は自動車取得税
(以下略)
この通達により法人税法上は自動車の取得に伴い支出する自動車取得税については取得価額に含めずに、費用として処理することができます。
また、自動車重量税や自動車税、自賠責保険料といった費用は自動車の取得に関連して支払うものでは無いため、帳簿上費用処理することを条件に取得価額に算入しないことが認められます。
自動車一つとっても、本当にいろいろな税金がかかってくるものです。
自動車の購入は通常の会社であればそんなに頻繁に処理するものでもありませんので、経理処理の際にはちょっと立ち止まって落ち着いて処理しないといけませんね。
なお、この文章は説明を分かりやすくするため、一部専門用語を置換えたり省略して書いている部分があります。
また、記載時点での法律や今後の改正予定を踏まえて書いておりますので、実際の法律の適用にあたっては、専門家にご相談・ご確認されますようお願いいたします。
投稿者
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大学卒業後、大手上場企業に入社し約19年間経理業務および経営管理業務を幅広く担当。
31歳のとき英国子会社に出向。その後チェコ・日本国内での勤務を経て、38歳のときスロバキア子会社に取締役として出向。30代のうち7年間を欧州で勤務。
40歳のときに会社を退職。その後3年で税理士資格を取得。
中小企業の経営者と数多く接する中で、業務効率化の支援だけではなく、経営者を総合的にサポートするコンサルティング能力の必要性を痛感し、「コンサル型税理士」(経営支援責任者)のスキルを習得。
現在はこのスキルを活かして、売上アップ支援から個人的な悩みの相談まで、幅広く経営者のお困りごとの解決に尽力中。
さらに、商工会議所での講師やWeb媒体を中心とした執筆活動など、税理士業務以外でも幅広く活動を行っている。
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