前回の記事で、クラウド会計の自動仕訳ルールでの「部分一致」活用について書きました。しかしながら、せっかく「部分一致」へとルールを変更しても、うまく機能しないケースがあります。今回はそうしたことが起きる原因と対処法についてまとめてみました。

「あれ、登録したはずの自動仕訳ルールが適用されない・・・」

クラウド会計を導入して、自動仕訳ルールも見直して「部分一致」に変更した。

それなのに、時々

「あれ、登録したはずの自動仕訳ルールが適用されない。なんで?」

という経験をされた方はいらっしゃいませんでしょうか?

そして、

「よくわかんないから、とりあえず手入力で登録してしまえ!」

とその場しのぎの対応をされていませんでしょうか?

こうしたときに、自動仕訳ルールの見直しがきちんとできるかどうか、これもクラウド会計を活用する上で大事なポイントです。

こうしたケースで考えられる3つの理由を、このあと確認していきます。

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自動仕訳ルールが適用されない3つの理由

理由1:通帳の摘要がいつの間にか変わっている


企業側の理由か、金融機関側の理由かはわかりませんが、 通帳の摘要、つまりクラウド会計に取り込むデータの明細が、知らない間に変わっているケースがあります。

私が経験した例を挙げますと、関西電力からの電気料の引落しの明細が

「デンキ07ガツブン」 → 「カンサイデンリョク07」

と変更されていたことがありました。

これでは、「部分一致」で「デンキ」に対して適用するルールを作成していたとしても、自動仕訳ルールは適用されません

こうした場合の対処法は、以下のどちらかになります。

  1. 仕訳を登録する前に、自動仕訳ルールを修正する(「デンキ」を「カンサイデンリョク」に修正など)。
  2. 勘定科目等を入力してから仕訳登録。同時に自動仕訳ルールを自動登録し、その後自動仕訳ルールを「部分一致」に修正する。

2の場合、仕訳登録後に自動仕訳ルールを見直すことを忘れないでください。これを忘れると、翌月また「自動仕訳ルールが適用されない!」となってしまいますので。

理由2:支払先がいつの間にか変わっている

企業が請求・回収業務を外部に委託することが、ここ数年で増えてきました。

例えば、数年前の話になりますが、NTT関連の料金の請求が、NTTファイナンスというグループ会社からの請求に変更されたことがありました。

回収業務の委託により、通帳に記帳される摘要が必ずしも変わるわけではありませんが、摘要の最初に収納会社の名称が追加されたり、摘要が全く変わってしまったり、といった変化が起きることがあります

特に会社名が変わってしまったりすると、自動仕訳ルールは適用されなくなってしまいますので、理由1のところで挙げたものと同じ対処が必要となります。

理由3:手入力した内容が微妙に異なる

これは、通帳に記載される摘要ではなく、前々回お伝えした取引明細をExcelで作成してインポートする際に、起きうる問題です。

通帳をそのままExcelに転記入力するのであれば、打ち間違いを除いて問題は起きませんが、金銭出納帳などをExcelで作成してインポートする場合に、注意が必要です。

例えば、郵便局でハガキを買って、Excelに入力する際に

「ハガキ」「はがき」「葉書」

のどれで入力するかルールを決めておかないと、自動仕訳ルールにおいては、これらはすべて別の内容として扱われてしまいます。

「先月もハガキ買ったはずなのに、なんで自動仕訳ルールが適用されないんだ」

といったときは、こうした点も確認してみてください。

この場合の対処法としては、以下のものがあります。

  1. Excelに入力する内容は、できるだけ以前のものをコピペする
  2. よく使う摘要は、テンプレートとしてExcelの別シートに準備しておき、コピペして使う

どちらにせよ、できるだけ都度手入力せず、コピペで貼付けるようにするのがポイントです。

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AIによる推測よりも、自分用にカスタマイズしたルールの方が絶対強い

クラウド会計の自動仕訳ルールは、一旦設定したら終わりではありません。

必要に応じて見直しが必要ですが、今回のように「あれっ」と思ったときに見直すのがよいタイミングだと思います。

「クラウド会計は使いものにならない」という方は、こうした自動仕訳ルールの見直しをしていないことが原因のひとつではないかと。

クラウド会計の自動仕訳ルールは、少しずつ鍛えていくものです。そして鍛えれば鍛えるほど強くなり、経理業務の効率が上がっていきます。

今後は、クラウド会計の中で、AIによる勘定科目などの推測も強化されていくでしょうが、こうしたAIによる推測は、学習データに基づくものであり、そうした学習データは世間一般の様々な企業のデータを集めたものです。

そうした世間一般の企業から集めたデータが、自分の会社にうまく当てはまるとは、必ずしもいえません。

「このときは、この内容を適用する」という、自社に合わせてカスタマイズしたルールの方が、登録・メンテナンスの手間はあるにしても、結局は効率が上がります

自動仕訳ルールを登録したはずなのに、適用されないというときは、ぜひ自動仕訳ルールを見直してみて下さい。

投稿者

加藤 博己
加藤 博己加藤博己税理士事務所 所長
大学卒業後、大手上場企業に入社し約19年間経理業務および経営管理業務を幅広く担当。
31歳のとき英国子会社に出向。その後チェコ・日本国内での勤務を経て、38歳のときスロバキア子会社に取締役として出向。30代のうち7年間を欧州で勤務。

40歳のときに会社を退職。その後3年で税理士資格を取得。

中小企業の経営者と数多く接する中で、業務効率化の支援だけではなく、経営者を総合的にサポートするコンサルティング能力の必要性を痛感し、「コンサル型税理士」(経営支援責任者)のスキルを習得。

現在はこのスキルを活かして、売上アップ支援から個人的な悩みの相談まで、幅広く経営者のお困りごとの解決に尽力中。

さらに、商工会議所での講師やWeb媒体を中心とした執筆活動など、税理士業務以外でも幅広く活動を行っている。
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