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会計ソフトへの入力方法は多様化していますが、最適な方法は環境により異なります。最適な方法を見つけるための考え方を整理してみました。

クラウド会計の登場で大きく変わった「入力方法」

会計ソフトへの入力というと、従来は伝票や領収書を見ながら1件ずつ入力するしかありませんでした。

もちろんCSVファイルでのインポートといった方法もありましたが、パソコンが苦手な方にとっては敷居が高かったのも事実です。

そうした状況下で、数年前にクラウド会計が登場して、

「ネットバンキングのデータをそのまま取り込んで仕訳にできます」

となったことから、会計ソフトの「入力方法」を取り巻く環境が大きく変わってきました。

いわゆるデスクトップ型の会計ソフトについても、銀行データの取り込みなどに少しずつ対応するようになってきたわけです。

さらに、STREAMEDなどの紙資料をデータ化するサービスも登場し、現状では「入力方法」の選択肢がかなり増えました。

最適な入力方法は環境により異なるからこそ、現状の把握が大事

とはいえ、従来のように何も考えずに会計ソフトに手入力していれば良かった時代とは異なり、「入力方法」の選択肢の増加により、

「どの方法を使えば良いのか」

という今までとは違った悩みが生じることになります。

この場合、大事なのはまず現状を正確に把握して、その上でどの方法が最も効果的か考えることです。

例として、「現金」に関する入力を考えてみましょう。

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1.手書きの出納帳が準備されている場合

まず最初に、手書きの出納帳がすでに作成されているケースを考えてみましょう。

手書きの出納帳があれば、

  1. 出納帳を見ながら手入力する
  2. データ化サービスを使ってデータ化する(ただし精度の問題あり)
  3. Excelにデータを入力してから、CSVファイルインポートなどを使う

といった方法が挙げられます。

ここで、「3.Excelにデータを入力してから、CSVファイルインポートなどを使う」をみて、なぜ会計ソフトではなく、わざわざExcelに入力する必要があるのかと思われるかもしれません。

しかし、「使っている会計ソフトが入力しづらい」とか「Excelは使えるけど、会計ソフトを使うのは苦手」といったケースは十分に考えられます。

こうしたケースでは、無理に会計ソフトに直接入力するのではなく、Excelなどに必要なデータを入力してからインポートした方が、作業時間が短くならないか検討する必要があるということです。

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2.Excelなどで出納帳が準備されている場合

Excelなどで出納帳が準備されている場合には、

  1. CSVファイルインポートを使う
  2. Excelファイルのまま取り込む(ソフトが対応している場合)
  3. 印刷した出納帳を見ながら入力する

といった方法が考えられます。

ここでも、「3.印刷した出納帳を見ながら入力する」という選択肢をあえて挙げています。

データのまま会計ソフトに取り込んだ方が、当然のことながら効率的であり、早く作業が終わります。

しかし、もしCSVファイルインポートに不慣れで、何回もエラーが発生して作業を繰り返すようであれば、直接入力した方が早く終わるケースも考えられるということです。

最終的な目的は、「会計ソフトへの入力作業をいかに早く終わらせるか」です。

将来的には、できる方からアドバイスを受けたりして、データのまま取り込むことをオススメしますが、すぐにトラブルが解決できないような状況であれば、一旦は印刷したものをみながら入力すべきかと。

3.出納帳が準備されていない場合

出納帳がまったく準備されていない場合には、

  1. 領収書等をみながら、会計ソフトに直接入力する
  2. データ化サービスを使って領収書等をデータ化する
  3. 出納帳を作成することを検討する

といった方法があるでしょう。

1や2については説明不要かと思いますが、なぜ「3.出納帳を作成することを検討する」という選択肢があるのか?

ポイントしては、

  • 出納帳を作成した方が、入力作業を早く終えることができるかどうか
  • 入力した結果が正しいか、ダブルチェックすることに重きを置くかどうか

といったものがあります。

領収書を見ながら入力したり、データをスキャンしてデータ化サービスに依頼する手間と比較して、Excelで出納帳を作成した方が早く終わらせられるかどうかというのが最初のポイントです。

2つ目のポイントについては、入力作業という観点からは少し外れますが、出納帳を作成せずに入力作業を行った場合、最終的に合わせるべき現金残高がわかりません。

「間違いを防ぐ」、「不正を見抜く」などの内部牽制という視点になりますが、組織の規模によっては、まず出納帳を作成するところから検討が必要となるケースもありえます。


このように現金勘定の入力であっても、状況により検討すべき項目やポイントが変わってきます。

まず現状を正しく把握し、その上でどの方法が最も効率的かという視点で検討することが、最適な「入力方法」を見つけるための近道です。

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選択肢が増えたからこそ、入力方法の状況整理を忘れずに

「入力方法」については、選択肢が増えたことにより、どの方法が最適かという悩みとともに、

「どの方法を選択したのかわからなくなってしまう」

という問題も生じます。

これは企業よりも、会計事務所の方で起こりえる問題かもしれませんが、顧客ごとに最適な方法を模索していくと、顧客ごとの「入力方法」が異なるという状況が起こりえます。

複数の顧客を担当していると、

「あれ、この場合は現金の処理するのに、どの方法使うんだっけ?」

となり、時間をロスする可能性があるわけです。

だからこそ、

  • どの顧客の
  • どの勘定について
  • どの方法で入力しているか

という点について、きちんと文書化して整理しておく必要があります。

この点、私も少しおろそかになっていましたので、反省しつつ整理しているところです。


会計ソフトへの入力方法について、「何も考えずに普通に手入力していた」とか「インポートとか使っているけどラクになった気がしない」など感じている場合には、まず現状整理から始めて、最適な「入力方法」になっているか検証されてみてはいかがでしょうか。

投稿者

加藤 博己
加藤 博己加藤博己税理士事務所 所長
大学卒業後、大手上場企業に入社し約19年間経理業務および経営管理業務を幅広く担当。
31歳のとき英国子会社に出向。その後チェコ・日本国内での勤務を経て、38歳のときスロバキア子会社に取締役として出向。30代のうち7年間を欧州で勤務。

40歳のときに会社を退職。その後3年で税理士資格を取得。

中小企業の経営者と数多く接する中で、業務効率化の支援だけではなく、経営者を総合的にサポートするコンサルティング能力の必要性を痛感し、「コンサル型税理士」(経営支援責任者)のスキルを習得。

現在はこのスキルを活かして、売上アップ支援から個人的な悩みの相談まで、幅広く経営者のお困りごとの解決に尽力中。

さらに、商工会議所での講師やWeb媒体を中心とした執筆活動など、税理士業務以外でも幅広く活動を行っている。
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