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12月1日に国税庁が「仮想通貨に関する所得の計算方法等について」という文章を公表しました。

国税庁「仮想通貨に関する所得の計算方法等について」

仮想通貨に関する税金について不明であった点などについて解説されているため、ネット上でも色々な方が取り上げていますので、私も個人的な気づきを少し整理しておきたいと思います。

仮想通貨は「使う」と税金がかかる

まず初めに、仮想通貨はどのような時に税金がかかるかという点ですが、この点についてはすでに公表されているタックスアンサー(No.1524「ビットコインを使用することにより利益が生じた場合の課税関係」)の中で、

ビットコインは、物品の購入等に使用できるものですが、このビットコインを使用することで生じた利益は、所得税の課税対象となります。

という国税庁の考え方が明らかにされています(なお、ここでは「ビットコイン」と書かれていますが、基本的に仮想通貨全てにこの考え方が適用されることになります)。

ここで注意いただきたいのは、「売却することで生じた利益」ではなく、「使用することで生じた利益」と書かれている点です。

株式投資などの場合は、購入した株式で支払いをすることは通常ありませんので、個人の方が株式を使用することで生じた利益を意識することはまずありませんが、仮想通貨は代金の支払いに使用できるケースがあるため、支払い手段として使った時点で買った商品やサービスの価格で売却したものとして税金がかかります。

(厳密に言えば、株式であっても貸すことにより貸株料を得るというケースなどがあるため、使用により税金がかかるケースは個人でもありますが、この点は一旦無視します。)

ちなみに、仮想通貨で他の仮想通貨を購入した場合も、同じように税金がかかりますが、これは外国通貨間の交換により生じた為替差損益は所得として認識する必要があるとされています(下記リンク先参照)ので、使ったら税金がかかるということよりは(辛うじて)理解できます。

国税庁:質疑応答事例「保有する外国通貨を他の外国通貨に交換した場合の為替差損益の取扱い」

税金を計算するための取得原価の計算方法は株式と同じ

では、実際に売却または使用した場合に、収入金額から引くことができる取得原価の計算方法ですが、これは原則としては株式を売却した際の取得原価の計算方法と同じく、売却のつど取得原価を計算することになります。

ただし、継続適用を条件として1年間の平均として取得原価を計算する総平均法を適用することも認める旨が、12月1日に発表された資料に下記のように明記されています(太線は筆者による)。

同一の仮想通貨を2回以上にわたって取得した場合の当該仮想通貨の取得価額の算定方法としては、移動平均法を用いるのが相当です(ただし、継続して適用することを要件に、総平均法を用いても差し支えありません。)。

売買の回数が多い方については、売却のつど取得原価を計算するのは大変ですから、総平均法を適用することも検討が必要となるでしょう。

なお、私も勉強のためBitflyerという会社で今年口座を開設してみましたが、記事執筆時点で税金を計算するための計算書を発行するというアナウンスはありません。

(こうした新しいものはやってみないと実感として理解できないため、いざお客様から相談を受けても対応に苦慮することがよくありますので、知識のアップデートは欠かせません・・・)

取引明細はCSVファイルでダウンロードできるため、Excelで取得原価を計算することは可能ですが、証券会社のように年間取引報告書のような形で出してくれないかなと期待しています。来年3月の確定申告に間に合うかどうか・・・。

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仮想通貨の分裂により新たな仮想通貨を取得したらどうなる?

仮想通貨は、運営主体が国ではありませんので、運営主体が分かれるなどの理由により分裂という形で、新しい仮想通貨が生まれるケースがあります。

これについては税金の扱いはどうなるんだろうかと考えていましたが、今回の資料にその取り扱いが記載されています。

ご質問の仮想通貨の分裂(分岐)に伴い取得した新たな仮想通貨については、分裂(分岐)時点において取引相場が存しておらず、同時点においては価値を有していなかったと考えられます。
したがって、その取得時点では所得が生じず、その新たな仮想通貨を売却又は使用した時点において所得が生じることとなります。
なお、その場合の取得価額は0円となります。

結論としては、受け取った時点では税金はかからないということです。ただ注意しておかないといけないのは、この受け取った新しい仮想通貨を売却した時は、取得原価は0円となりますので、売却金額全額に対して税金がかかることになります。

分裂した仮想通貨についてはタダでものをもらったことになり、経済的利益を受けたとしてもらった時に税金がかかるのどうか不明でしたが、今回の発表資料ではっきりしました。

 

今回取り上げた内容以外にも、サラリーマンだと仮想通貨から生じた利益が20万円以下だったら申告しなくて良いケースがあるとか、損が出ても他の所得と合算できないとか、消費税は非課税だとか、税金に関する論点はたくさんありますが、長くなりますので今回はこのくらいにしておきたいと思います。

なお、この文章は説明をわかりやすくするため、簡略化若しくは省略して記載している部分がありかつ筆者の私見も含まれておりますので、実際の申告等にあたっては専門家にご相談・ご確認されますようお願いいたします。

投稿者

加藤 博己
加藤 博己加藤博己税理士事務所 所長
大学卒業後、大手上場企業に入社し約19年間経理業務および経営管理業務を幅広く担当。
31歳のとき英国子会社に出向。その後チェコ・日本国内での勤務を経て、38歳のときスロバキア子会社に取締役として出向。30代のうち7年間を欧州で勤務。

40歳のときに会社を退職。その後3年で税理士資格を取得。

中小企業の経営者と数多く接する中で、業務効率化の支援だけではなく、経営者を総合的にサポートするコンサルティング能力の必要性を痛感し、「コンサル型税理士」(経営支援責任者)のスキルを習得。

現在はこのスキルを活かして、売上アップ支援から個人的な悩みの相談まで、幅広く経営者のお困りごとの解決に尽力中。

さらに、商工会議所での講師やWeb媒体を中心とした執筆活動など、税理士業務以外でも幅広く活動を行っている。
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