クラウド会計を使っていると、いつの間にか仕様が変更されていた、ということがよくあります。

今回は、freeeにおいて取引作成時に適用される「取引相手勘定科目」が変更できるようになっていた点についてまとめます。

取引相手勘定科目とは?

freeeの基本は「取引登録」

freeeは「仕訳」を直接入力するのではなく、「取引」を登録すれば(半自動的に)仕訳が作成されるという考え方になっています(この点が従来の会計ソフトに慣れた方に取っては苦労する点の一つですが)。

銀行口座からの自動連携ではない支出取引を自分で登録するケースですと、下記の取引登録画面(「取引」-「取引を登録」)で、必要事項(赤枠で囲った部分、必須以外の項目も一部囲っています)を入力して登録すると、その下の「仕訳形式プレビュー」に表示される仕訳が自動的に作成されるという流れです。

ちなみに、こうした「仕訳」を意識させない設計が、簿記に苦手意識を持つ方に受けているのだと思います。

この仕訳形式プレビューをよく見てみると、入力していないのに自動的に設定されている項目があります。貸方勘定科目の「未払費用」がそれなのですが、この科目を決定するための設定が「取引相手勘定科目」で、勘定科目の設定の中にあります。

なお、もし取引登録の際に決済の欄で「未決済」ではなく、「完了」を選択した場合には、支払口座(現金もしくは銀行口座など)を選択する画面が表示されるため、この「取引相手勘定科目」の設定は使用されません。

支出の際の債務科目は未払費用?

freeeにおいては、支出の際によく使われる科目(一般的に販売管理費といわれるもの)の取引相手勘定科目はデフォルトで「未払費用」となっています。

私の感覚では、こうした場合「未払金」を使うことが一般的だと理解していましたので、少し違和感を感じました。

運用開始後に相手科目が「未払費用」となっていることに気づき、修正しようとしたのですがfreeeが変更を受け付けないため、サポートに問い合わせたところ、「該当する科目の仕訳を過去年度含めてすべて削除しないと変更できない」との回答がありました。

そのとき既に、前年比較のための前年データをインポート済みだったため、そこまで直す気にもなれずやむを得ずそのまま使用していました。

変更できないことで、生じる問題は何?

この点が何に影響するかというと、法人税の申告書には「勘定科目内訳書」という勘定科目ごとの内訳を添付しなければならないのですが、この資料をある程度自動的に作成できるかどうかという点に影響します。

ご存じの方も多いと思いますが、freeeには「補助科目」という考え方がなく、「タグ」というデータを「補助科目」の代用としています。

freeeから税務ソフトであるJDLにデータをインポートする場合、「未払金」については取引先タグという取引先情報を補助科目としてエクスポートすることができますが、「未払費用」については取引先タグを補助科目としてエクスポートすることができません。

この点については下記リンク先の、「参考:補助科目として出力される内容について」に詳細が記載されています。

仕訳帳を出力してJDL社の会計ソフトに取り込む

このため、「未払費用」については勘定科目内訳書を作成する際に、相手先ごとの名称・金額を一つずつ入力しなければならない状況でした。

今回法人税の申告書を作成するにあたり、『デフォルトで「未払費用」をセットしているのに、エクスポートデータを作成する際に取引先が補助科目として設定できないのはおかしいのでは?』と問い合わせたところ、「取引相手勘定科目は変更可能です」との回答が・・・。

freeeのサイトでも確認したところ、下記ページに確かに書いてありました(下線は筆者による)。

編集することで、すでに登録済みの取引の相手勘定科目も一括で変更されます。かつては使用済みの勘定科目については変更できませんでしたが、現在は使用済み(仕訳が存在している)勘定科目についても変更が可能です。

勘定科目の設定・追加を行う

「いつのまに変更されたの??」というのが正直な印象です。メール等で案内があったのかもしれませんが、完全に見落としていました。

取引相手勘定科目の修正方法

というわけで、早速取引相手勘定科目を修正することにしました。

freeeの画面で「設定」ー「勘定科目の設定」を選択すると、下記の画面が表示されます(少し見にくくて申し訳ありません)。

ここで、支出の科目であれば「支出取引相手勘定科目」を「未払費用」から「未払金」に変更します。

あまりないとは思いますが、もし支出の科目を収入計上時の相手科目として使用される場合には「収入取引相手勘定科目」も変更しておいてください。

年度締め後や振替伝票から作成された仕訳の科目は変更されない旨のメッセージが表示されますので、確認して「保存」をクリックすれば変更完了です。

仕訳帳や総勘定元帳で該当する仕訳を確認すると、「未払費用」が「未払金」に変更されていることが確認できます。

以上、freeeの取引相手勘定科目がいつの間にか修正可能になっていた!についてでした。

投稿者

加藤 博己
加藤 博己加藤博己税理士事務所 所長
大学卒業後、大手上場企業に入社し約19年間経理業務および経営管理業務を幅広く担当。
31歳のとき英国子会社に出向。その後チェコ・日本国内での勤務を経て、38歳のときスロバキア子会社に取締役として出向。30代のうち、7年間を欧州で勤務。

40歳のときに会社を退職。その後3年で税理士資格を取得。

中小企業の経営者と数多く接する中で、業務効率化の支援だけではなく、経営者を総合的にサポートするコンサルティング能力の必要性を痛感し、「コンサル型税理士」(経営支援責任者)のスキルを習得。

現在はこのスキルを活かして、売上アップ支援から個人的な悩みの相談まで、幅広く経営者のお困りごとの解決に尽力中。